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2008年10月11日

 金沢市の泉鏡花文学賞を横尾忠則さんが受賞したと聞いて、おやっと思った。初の作品が受賞作。横尾さんが小説を書いているとは知らなかった

独特の美の世界を表現するイラストレーターとして、一時代を築いた人で、近年は画家としての活躍も知られている。豊かな才能の人である。その人に「鏡花は一番か二番に尊敬する人物」と言われるのは、誇らしい

白山市の島清(しませ)恋愛文学賞の受賞が決まった阿川佐和子さんも、多才な人である。小説だけでなく、軽妙な良質のエッセーが人気を集め、テレビでも活躍する。座談の名手でもある。本紙の新春座談会に足を運んでもらったことがある。おしゃべりよりも難しいとされる、聞き上手。「だっちゃかん」という当地の言葉を聞いて、「それなら私は、だちゃかん娘?」と受けて話を弾ませる。聡明(そうめい)さがきらきら光った

ご当地文学賞は全国に数あるが、多才な人の新たな受賞で、2つの賞はまた価値が高まった。新しい酒を盛らないと、器の値打ちは古びていく

横尾さんは、当地に「縁を感じる」とも語った。心強い応援団が、また増えた。


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