中堅生命保険の大和(やまと)生命保険が更生特例法の適用を東京地裁に申請した。米国発の金融危機に伴い株価が暴落するなど急激な資産価格の下落によって多額の損失が生じたのが原因だ。08年9月中間決算で債務超過に陥ることが避けられなくなり、自力再建を断念せざるを得なくなった。
大和生命は年間保険料収入は300億円強、契約者は約17万人で、国内生保業界で33位と順位も低い。
また、経営規模が小さく営業職員の人件費などがかさんで高コストなため、高収益が見込める金融商品に積極的に投資してきたという。それが裏目に出たわけで、特異な事例とみることもできる。
このため大和生命の破綻(はたん)が直接、日本経済全体に大きな影響を与えるというわけではなさそうだ。しかし、米国発の金融危機が原因で日本の金融機関が破綻したのは初めてのことだ。
金融市場が凍り付き大混乱している米欧と違い、日本は比較的安定しているため、今回の金融危機を対岸の火事とみる雰囲気が日本にはある。しかし、そうした見方はやめるべきだ。
株価の下落が続くと、大手生保も含め、多くの企業が株式の含み損を抱えることになる。また、米国や欧州の経済が後退し、実体経済の冷え込みが深刻化するのはこれからだ。
日本では不動産、建設分野で企業の破綻が相次いでいるが、それが上場不動産投資信託(Jリート)にも広がってきた。ニューシティ・レジデンス投資法人が民事再生手続きの開始を申し立てた。
優良な賃貸物件を多く持ち、債務超過に陥っているわけでもないのに、資金繰りがつかず、民事再生を申請するに至った。
不動産市場は、外資が資金を引き揚げたことをきっかけに、急速に冷え込んでいる。さらに、新しい銀行の自己資本ルールが、これに拍車をかけていると指摘されている。
銀行は融資対象をリスクによって格付けし、格付けが下がった場合、銀行は、それに見合うだけ自己資本を積み増すか、融資を減らしてリスクが拡大しないようにするか、対応策をとらざるを得ない。
その結果、景気が悪く、業績が思わしくなくなると、銀行は貸し渋りに走ることになるというわけだ。
また、保有資産を時価で評価し、損失が出れば、その都度処理する時価会計も、この傾向を後押ししている。
銀行の新しい自己資本ルールも時価会計も、一般企業や銀行の財務の健全性を維持することが目的だった。しかし、市場が混乱し、リスク判定がしにくい状況下では、逆に、経済の混乱に拍車をかける要因となってしまう。
経済の状況に応じて、ルールを柔軟に見直すことも重要だ。
毎日新聞 2008年10月11日 東京朝刊