先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)がワシントンで十日、開催される。米国発の金融危機が世界に広まり、実体経済に悪影響を及ぼしつつある。金融恐慌を防ぐための安定化策をG7が打ち出せるか、市場に試されることになろう。
G7を前に、世界的な株安の連鎖が起きた。米ニューヨーク株式市場のダウ工業株三十種平均が一万ドルを割り、東京株式市場も日経平均株価が一万円の大台を割り込んだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など主要六カ国・地域の中央銀行は八日、協調利下げすると発表した。いずれも政策金利を0・5%引き下げた。
六中銀の一斉利下げは例がない。G7開催を前にして0・5%という大幅な利下げに踏み切ったのは、世界的な株安に見舞われたことで、市場が崩壊しかねないとの危機感を高めたからだろう。それだけ、追い詰められた厳しい状況といえよう。主要中銀は協調利下げの共同声明で「グローバルな金融環境をある程度緩和する」と期待する。
しかし、市場の反応は冷ややかだ。ニューヨーク株式市場には、協調利下げでも信用不安は続くとの警戒感が支配したままだ。東証も、拡大した金融危機を解決するには利下げでは不十分との見方が強い。
米サブプライム住宅ローン問題が深刻化した昨年夏から一年余りがたつが、金融市場の混乱に終息の兆しはみえない。米国や欧州の金融当局のこれまでの対応は鈍く、各国政府に対する市場の不信は増幅している。
米国は約七千億ドルの公的資金を不良資産の買い取りに活用することを柱とする緊急経済安定化法をやっとのことで成立させたが、市場の混乱は沈静化するどころか深まった。英国は公的資金による金融機関への資本注入を発表したが、小出しや個別の対応では世界的な金融市場の動揺は収まるまい。
国際通貨基金(IMF)は、八日の世界経済見通しで金融危機に対処するためには多国間の包括的な政策協力が最重要であると強調した。そのうえで各国に「断固たる行動」を公約するよう呼び掛けた。
G7は世界経済と金融市場をめぐる問題を協議し、声明を採択する予定だが、市場は発表される声明をかたずをのんで見守っていよう。各国政府が連携を強め、金融不安を解消する実効性の高い「断固たる行動」に踏みださなければ市場の失望は大きかろう。G7は、信頼回復への最後の機会だとの決意を示してもらいたい。
二〇〇七年度に、六十五歳以上の高齢者が家庭内で虐待を受けたケースは全国で一万三千二百七十三件と〇六年度に比べ約七百件増えたことが、厚生労働省がまとめた調査結果から明らかになった。
一件の虐待が複数の高齢者に及んだものもあるため、被害者数は一万三千七百二十七人に上る。その七割が要介護認定者だった。虐待の内訳(複数回答)を見ると、身体的虐待が約64%で最も多く、次いで暴言などの心理的虐待、介護などの放棄、財産を勝手に処分する経済的虐待の順で、二十七人が亡くなっている。
〇六年に高齢者虐待防止法が施行され、虐待の発見者には市町村への通報が義務付けられた。市町村による家庭や施設への立ち入り調査権限も付与された。把握した件数の増加は効果の表れとの見方もあるが、依然多くの高齢者が虐待にさらされている現状は深刻だ。まだまだ「氷山の一角」といえよう。
今後、高齢化が進むにつれて一段の深刻化が懸念される。いかに早く虐待の兆しを把握して悲劇を防げるかに掛かっている。家庭内での虐待の背景には、介護者の身体的・精神的な疲れや孤立による不安感などが要因となっていることも多い。被害者の救済はもちろんだが、介護に当たる家族の負担軽減が欠かせない。
厚労省が調査した〇七年度末時点の市町村における高齢者虐待防止のための体制整備では、対応の窓口の設置や、住民への周知はほとんどの市町村で実施済みという。だが、本当に利用しやすいか、あらためて確認してみる必要があろう。地域住民や福祉、医療、警察、ボランティア団体などによる連携を強め、悲劇を防ぐ支援ネットワークを築くことが求められる。
(2008年10月10日掲載)