3カ月以上の延滞債権額と未返済額の推移
大学生の約3割に奨学金を貸している日本学生支援機構が、全国の銀行などでつくる信用情報機関に滞納者情報を通報する滞納防止策に乗り出す。滞納額増加に悩んだ末の強硬策で、年内に信用情報機関に加盟する見通し。通報されると対象者は、銀行ローンを組めなくなったり、クレジットカードを作りづらくなったりする可能性がある。
機構の奨学金には、無利子と有利子があり、07年度は約8250億円を貸し出している。大学の学部生でみると、同年度は約81万人、3.3人に1人が利用した。
奨学金は貸与終了後、期間内に返すのが原則で、返済分が新たな奨学金に充てられる。病気や失業などで返済できない場合、手続きをすれば返済が猶予される。
機構は長期滞納者に、法的措置に移るとの「予告」を積極的に行うなど対応を強めてきたが、奨学金を借りながら転居先不明などで、予告書が返送されるケースは3割(06年度)にのぼる。
こうした状況から、督促は思うように進まず、延滞額や未返済額の増加に歯止めがかかっていない。貸し倒れの危険がある「リスク管理債権」に当たる3カ月以上の延滞債権額は07年度末で2253億円と、05年度末より389億円増えた。また07年度に返済されるべき3175億円のうち、未返済は2割を超える660億円あった。
機構や文部科学省によると、新制度は、悪質な滞納者をなくすため、「一定期間滞納すると、信用情報機関に知らせる」ことを条件に貸していく。どの時点で通報するかは検討中だ。今のところ、10年度の新規貸与者から対象にする方針で、すでに利用している人にも適用できないか検討している。
通報先となる信用情報機関は、大手銀行や全国の地銀など約1400の金融機関が会員となっている。滞納情報が通報されると、対象者は加盟金融機関でローンが組めないなど、日常生活にも影響が出るとみられる。