訪問者別インデックス
領 域 : メディア造形専攻 3年
派遣元 : ロッテルダム芸術アカデミー
期 間 : 2005.01.25 〜 2004.04.10
国際化という様々なネットワークの進歩により、容易に世界というものが感じられるように思いがちですが、 今日、アートの背景が世界規模である以上表面的な世界を感じるのではなく、世界の人の考え方を作品のプロセス等から感じたいと思いました。 その為に、自分はロッテルダムで1つのプロジェクトと2つの授業を受ける事にしました。 同時に交流や旅行、美術館、ギャラリーへと足をはこびました。 自分の作品、これまでの経緯から先生にメディアアートを進められ、授業はメディアになりました。 自分の関心がアートに向いている事、大学でメディアアートを専攻している事から歓迎できる事でした。 授業の進め方も日本と違い興味深いです。
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到着。建築美術館NAI、ボイマンス美術館、クンストハル美術館等ロッテルダムの美術館、ギャラリーをまわる。
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学校のオープンデー 学校と地域の結びつきが強く、色々な実際の広告があった。実践的に社会で活動でき、完成度は高いように感じた。
2/ 3 - 6
ベルリン、トランスメディアーレに四方先生の誘いで見学にいく。新ナショナルギャラリー、ユダヤ人博物館等見学。
2/8 学校で留学生によるプレゼンテーション 学校スタート
2/14 - 20 プロジェクトウィーク
2/21 メディアアーティスト、松村さんの学校と作品を紹介してもらう。
2/22 デンハーグ、エッシャー美術館に
2/25 マガジン原稿完成
2/26 ミュージアムナイトに行く。
3/13 ユトレヒト、セントラルミュージアムに行く
3/20 アムステルダム、市立美術館別館、apful美術館に行く
3/26 マーストリヒト、ボネファンテン美術館に行く。
3/27 アントワープ、現代美術館に行く。
3/31 学校終了
4/1 - 5 ドイツ、ベルリンに再び行く。バウハウス美術館、ハンブルク駅現代美術館等へ行く。
4/6 - 10 ストックホルム、現代美術館へ行く。同時に様々なプロジェクトを製作しました。
研究成果:
"Planet Labo"
Macintosh用サポートアプリケーションです。Adobe Illustratorから目的のアートボードを素早く出す為に開発しました。 中にはA系B系のサイズ、キャンバスサイズ等様々なアートボードをサポートしています。 Xcodeを用いてビルド、コンパイルしました。配布用に英語バージョンにしています。
言語はAppleScript。アプリケーションのシステム環境はMacintosh OSX以上を必要とします。
"Dot5*5"
25個のドットを使って絵を書くものです。発展的にはネットワークと繋げ、世界のユーザーとコミュニケーションがとれるようになります。
言語はAPI。Proce55ing68を使って作られました。
"Max/Msp class"
素材のビデオからビデオの変化した部分をmax/mspで抽出し、そこからインタラクティブなアートに発展させる計画です。 いくつか素材のビデオを撮影しました。
Max/Mspは使ったことがなく基礎から勉強しました。 結果的には作品はつくれなかったものの、現代メディアアートにおける主流アプリケーションからアートワークを作る流れを経験できて良かったです。
"ant-firm"
「暗闇はアリの群れだった」
プロジェクターで暗室に映しだすことで、自分のいる現実の暗闇とバーチャルの仕切りがなくなる事で、存在する概念ととりはらうプロジェクトです。 言語はAPI。Proce55ing68を使って作られました。
"Max/Msp class project For Rotterdam Archtecture Festival"
ロッテルダム、建築フェスティバルでV2オーガナイゼーションでの展示に向けたグループワークです。 階段に一つずつ、人体センサーを取り付け、人の階段への動きに対して色々なサウンドがインタラクティブに帰ってくるといったものです。 コンストラクションチームに所属し、パーツの準備、IC基盤製作、サウンド製作等行いました。期間の関係から、完成前にプロジェクトを抜ける事になりました。
"Torture Project"
オランダ、デンハーグで拷問博物館に行った時、拷問の部屋が大きい台所の様に思えました。 人間が人間を物として扱うという関係に関心を持ちました。キッチン用品で拷問器具を作ろうとした訳です。 しかし、コンセプトを立てるにあたって、拷問器具という歴史から安易に考えてはいけないのでこのプロジェクトは調査をして実行することになりました。 現時点では、台所、拷問という関係はむしろジェンダー問題に繋がってくるので、モチーフのアイデアを変えなければいけないかもしれません。 幸運な事に、自分の作品の一つが展示のキュリエーションをしている友達の目にとまり、5月にロッテルダムのギャラリーで展示が出来る事になりました。 続けて彼ともやりとりし、何かのきっかけになればと思います。
"Under 9 Palace Construction"
天まで届く理想としてバベルの塔は建設された。 そしてタトリンは社会主義の為に第3インターナショナルを建設した。 戦後60年を迎えて、日本人の自分たちは向かうべき意思のモニュメントを建設させる。 それをコンセプトにCinra Magazineに掲載させるプロジェクトをネットワーク上のディスカッションでコンセプトを決め製作しました。 コラボレーションで激しい政治思想を持った人と製作し、直喩、隠喩、の言語的なコンセプチャルアートになりました。このマガジンは全国各地で配布されています。
"kampfen nachricht infomation"
「ありとあらゆる所に情報が存在し、それは同時進行する。それは時代を問わず変っていない。このプロジェクトの中では聴覚、視覚、文字言語が独立し進行する。 それは、過去の情報、現在進行しているものも含まれる。圧倒的にインプットの多い状況を作りだそうとした。 問題は全体を一つに捕らえるとともに乱立する情報の部分を切り取り縫い合わせる作業が必要になってくる。それを可能にできる自分たちはまだあまりにも人間的だ。」
kampfen はドイツ語の男性形の「情報」。nachricht はドイツ語の女性形の「情報」infomation は英語での「情報」です。 4月15日千駄ヶ谷LoopLineで開催のCinra Salonでパフォーマンスをしました。ヨーロッパで撮影した写真とサウンドを同時進行させる作品です。 オランダで知り合ったオーストリア出身のボルフガング・ビットナー君も映像作品で参加してくれました。
まとめとして、プロセスを学ぶ事が目的でしたが、考えの違いはプロセスにも表れていました。 考えの違いは友達とディスカッション、授業で答えを見つけようとしました。日本人はシステムを重要に考え、ヨーロッパの人はアイデンティティーを重要視するように思えます。 作品を作るにあたって、自分はシステムに向けた自分の顔とパーソナルな自分の顔とを使い分けています。ヨーロッパの人にはそれがありませんでした。 よく展示を見にいったのですが、よくパーティと展示が合体した状況がありました。自分は作品を見る上で、騒々しい環境は好ましくないと考えていたのですが。 友達に聞くと、コミュニケーションも重要な一部で、静かに美術館で作品を見るのが、作品における全ての方法ではないと説明してくれました。 自分は個人の生活と作品展示が一致する事はありませんでしたが、オランダでは作品を作る事も展示することも、コミュニケーションする事も、生活するという同一線上にある事を気づきました。 「知識、コミュニケーション、メンタリティ」を重要とする3要素だと思います。 言葉で言うにはあまりにも簡単ですが、経験をもって感じたこの要素は大きいものです。
Prof.レニーはFineArt,MediaArtの主任で専攻している留学生の個人的なプロジェクトを指導しています。 自分は、初め考えていたプロジェクトを伝え、何か出来るとそのアイデアを高めるというサイクルで進めていきました。 Prof.マティーロスから、メディアアート界で有名なアプリケーション、MAX/MSPについての講義を受けました。 素材として撮ったビデオから動きの部分を抽出し、それをMIDIでインタラクティブなものに持っていこうとする授業計画です。
Prof.グレイアムとProf.マティーロス共同の授業では、5月にあるArctecture FestivalにV2 Organizationという場所で出展する事になっているメディア作品のプロジェクトを進めました。 これはグループワークでコンストラクション(実準備、システム構築)ソフトウェア(作品のプログラム)ハードウェア(基盤作成)に別れ、作業しました。 学校全体で行う「プロジェクトウィーク」というものがあり1週間全授業が中止になり一つのプロジェクトを一週間行うというものです。専攻関係なく受講できます。 デンハーグの学校でも行われていました。学校がイベントの様なメリハリのあるものに見えました。 グループワークでは決定事項、問題点をなんでも紙に書き出し壁に貼付けて次の週でも見れるという方法をとっています。 集団という様々な考えがある中で、集団として考える方向性を確認でき、進められる事は計画的で良いと感じました。 積極的、消極的とは別と思えるほど、生徒からの質問に1を聞いて10を返すほどの説明がなされていました。 情報が本やネットで容易に手に入る時代で、人間が教える事は情報というよりも、どう考えていくか、という事のようでした。 Max/Mspは難しいアプリケーションですが、基本的技術についての説明はあまり授業では扱っていませんでした。それ故、自分は技術に対する予習が必要になりました。
コンデンサーやレジスタンスなどの専門的な素材はロッテルダムのパーツショップは秋葉原等のようにいかず、入手が不可能な事がありました。 日本の文献はほとんどないので、知識として欲しいと思っても難しいものがあります。 インターネットは一部の有益なサイトを除けば、美術という専門的な知識に関してあやふやなものがあります。 英語に関して微妙なニュアンスが伝えづらい、伝わりにくいというものは問題でした。 テクノロジーに関する技術的な面は数学的で明快なのですが、美術にかんする哲学的面ではしばしば言語に関する問題がおこりました。