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企業が競争力強化のために進めた正社員の絞り込みとパート・派遣など非正規雇用の拡大が、かえって生産性の上昇を停滞させている――。厚生労働省が22日発表した08年版「労働経済の分析」(労働経済白書)はこう指摘した。その上で、日本型の長期雇用に戻って人材育成に力を入れ、1人の生み出す付加価値を高めることが、人口減少社会で経済発展を持続させるカギと提言した。
今年の白書は、労働力がどれだけ付加価値を生み出したかを示す労働生産性の推移と、就業者数や非正規労働者の割合との関係に着目した。
もともと生産性が低いサービス業での非正規雇用急増と、生産性が高い製造業での正社員削減の結果、「低生産性部門は温存され、全体の労働生産性にマイナスの影響を及ぼしている」と分析した。実際、全体の労働生産性の伸び(年率換算)は70年代の4%、80年代の3.4%に比べて、90年代は1%、00年代も1.7%と低迷している。
サービス業では90年代から00年代にかけて就業者数が年率換算で2.6%増え、就業者に占める非正規労働者の割合は24.6%(92年)から39.4%(07年)に拡大した。この間、生産性上昇率は年1.9%から0.5%に低下。白書は「(非正規雇用の増加は)コスト削減には有効でも、労働者の職業能力の向上を通じた生産性向上にはつながりにくい」と指摘した。
一方、製造業は90年代から00年代にかけて、総生産の増加率が年0.5%から2.9%へと加速。生産性上昇率も2.3%から4.5%に伸びた。だが、正社員の絞り込みで就業者数は年1.2%減から1.9%減へと減少が加速した(非正規労働者の割合は17.7%から22.9%に拡大)。白書は「生産性の伸びは就業者の削減により実現した」と分析したが、この手法には限界があり「持続性を持った生産性の向上としては評価しがたい」と苦言を呈した。
また、「高い生産力を担う労働者は、企業の中で豊富な職務経験を積み重ねながら育成される」として、企業に長期的な視点に立った人材育成を求めている。(生田大介)