幼児がこんにゃくゼリーを食べて窒息死した事故で、国民生活センターは30日、死亡したのは兵庫県の男児(1歳10カ月)と発表した。こんにゃくゼリーによる死亡は17人目で、昨年10月に業界団体が表示を改善して以降、初の死亡事故。再び死者が出たことでこんにゃくゼリーの安全性を問う声が高まるのは必至。行政や業界の対応の不十分さを指摘する声も上がっている。【板垣博之、小林多美子】
同センターによると男児は7月29日、祖母宅でおやつに凍らせたこんにゃくゼリーを食べた。直後にのどに詰まらせ、病院に運ばれたが脳死状態になり、9月20日に多臓器不全で死亡した。
食べたこんにゃくゼリーはマンナンライフ(本社・群馬県)の「蒟蒻(こんにゃく)畑マンゴー味」。ハート形ミニカップに入っていた。同社のこんにゃくゼリーは96年と05年に死亡例がある。
こんにゃくゼリーをめぐっては、同センターが昨年7月、死亡事故が相次いでいることから販売規制の検討を関係省庁に求めた。これに対し、厚労省や農水省などは業者に再発防止の指導を行う一方、消費者にも注意喚起をしていたが、規制についてはいずれの省庁も「法律の対象外」としていた。
一方、業界団体の全国菓子協会など3団体は昨年10月以降、子供と高齢者が食べないように警告する統一マークを商品に表示することを決めた。こんにゃくゼリー自体の形や硬さには「基準を決めるのは困難」として改善策は見送られていた。
米国や欧州連合(EU)、韓国では回収や販売規制などの措置が取られている。国民生活センターの島野康理事は「政府で何らかの規制、対策を考えるべきだ」と話している。
マンナンライフによると、男児の父親から8月12日に事故の連絡があったが、対策は取っていなかった。同社品質保証室の茂木克己室長は「事故を真摯(しんし)に受け止め、より分かりやすい表示に改良したい」と話している。
三重県伊勢市の学童保育所で昨年、「エースベーカリー」(本社・愛知県小牧市)製のこんにゃくゼリーを食べた男児(当時7歳)が窒息死した事故では、遺族は同社などを提訴した。現在製造しているタイプで事故が起きた場合には製造中止することを条件に和解が成立している。
エースベーカリーの坂本研二総務部長は「新たに事故があったタイプは、昨年6月に製造販売を中止している。現在製造しているものは改良を加えているので、今後も製造販売を続けていく」と話している。【式守克史】
毎日新聞 2008年9月30日 中部夕刊