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未来を描く:’08光市長選/4止 市立病院/下 /山口

 ◇“百貨店”か“スーパー”か--身の丈にあった議論急務

 8日午後2時過ぎ、光市内の外科の開業医(52)が午後の診療を始めると、近所から次々に患者が集まってきた。軽いけがや腰痛、成人病などの治療が主だが、救急患者の診断をしたり、がんを早期に発見して市立病院につなぐのも重要な役割だ。

 10年前まで市立光総合病院で、消化器外科医として胃がんの手術などを手掛けた。同様に5年間で5人の医師が、光と大和総合の2市立病院から独立し、地域の初期診療に当たっている。開業医は言う。「総合病院というバックグラウンドがあるからこそ初期診療が生きる。地域医療を支えるには役割分担が大切だ」。大和地区には他に病院がないため、大和病院は初期診療との両方の役割を担っている。そこで生じた医師不足。命を守る仕組みに変革が迫られている。

 「すべての病院が何でもこなせる“百貨店”である必要はない。地域の医療にとって一番何が大切なのか」。山口大医学部付属病院の松崎益徳院長はそう問いかける。

 光市からは、東西に車で30分も走れば柳井市に周東総合病院(360床)、周南市に徳山中央病院(457床)など大型病院がある。実際、光市内からの患者も多く、大和で280、光で210ある市立病院の病床稼働率は60%台まで落ち込んでいる。それなのに、医師が足りなくて困っているのだ。

 研修医を確保すれば解決する問題でもなさそうだ。山口大卒後臨床研修センターの河又太作事務係長は「研修医が膨大な知識や技術を身につけて専門治療ができるまでには10年はかかる。これから教育を受ける新人医師は、診療の即戦力にはならない」と指摘する。

 市病院局は07年6月の市議会で、2病院を12年をめどに集約する方針を示した。集約拠点は光▽大和▽新病院の3案。残った病院は民間移譲も検討する。事業管理者でもある光病院の守田信義院長は「光、大和両病院の医師がチームを組めばほとんどの手術に対応できる。診療態勢も手厚くなり医師に余裕も生まれる」と再編の利点を説明する。車で15分の両病院が億単位のコンピューター断層装置(CT)や磁気共鳴映像化装置(MRI)を抱えることも一考の価値があるという。

 「大病院と対抗するのか、それとも感染症や腰痛など身近な疾患に対応する地域医療に特化するのか、決断の時が来ているのでは」。守田院長は問いかける。何でもそろった“百貨店”を維持する方法を考えるのか、身近な品ぞろえを充実させた“スーパー”に業態変更していくのか--。病院再編が市長選の争点になる中、どんな医療を提供するのか身の丈にあった議論が急がれている。=おわり

〔山口東版〕

毎日新聞 2008年10月10日 地方版

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