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62年前に日本に密航、億万長者になった男

マルハン・韓昌祐会長インタビュー(1/6)

■「パチンコ」で財を築いた韓国人 

 世界的な経済誌「フォーブス」日本版の7月号は「日本の億万長者」というカバーストーリーで、日本の大富豪を紹介している。1位は日本のインターネット革命をリードしている韓国系の孫正義ソフトバンク社長(50)。昨年9位だった孫社長は今年、6960億円で見事1位になった。

 フォーブスが取り上げた日本の億万長者の中には、もう1つ「韓国の名前」がある。1320億円で22位に入った韓昌祐(ハン・チャンウ)マルハン会長(77)だ。「パチンコ皇帝」と呼ばれる韓会長は、孫正義社長と共に日本の億万長者ベスト30に3年連続でランクインしている。

 韓会長はいったいどのようにしてパチンコにおいて日本屈指のグループ企業を築き上げたのだろうか。記者はインターネットでマルハンのサイトを見つけ、代表電話の番号を調べ、オペレーターを介し韓会長に取り次いでもらうよう頼んだ。だが、韓会長の日本人秘書は「海外出張中」と答えた。数日後、韓国にいる韓会長の知人を通じ、「韓国にしばらくいる予定だから会いましょう」と連絡が来た。

 ソウル市江南のホテルで会った億万長者は、きちんとスーツを着込んだ老紳士だった。80歳近いお年寄りではあるが、ぴんと張った背筋にしっかりとした足取りは、還暦と言われても分からないくらいだ。ちょっとした中小企業の会長なら最近は必ずといっていいほど付いて来る秘書やボディーガードもいなかった。

 「孫正義さんと私とでは比較になりません。ただ一生懸命働いていたら、たまたま選ばれただけです。ここで満足することもありません。初心と言えばいいでしょうか。今も会社はチャレンジ精神とハングリー精神で動いています」

 韓会長は謙虚にこう語った。しかし、彼の言葉はすぐに自信に満ちた口調に変わった。

 「実は、フォーブスは昨年の資料からデータを取っているんです。昨年は260億円の経常利益がありましたが、今年の実績は322億円です。今年の実績だったら、(ランキングが)もっと上だったのに…」

 韓会長が築き、育て上げたマルハンはパチンコ会社だ。1年間の売上は1兆8600億円。日本全域に220店舗、パチンコ台13万台、従業員は1万人に達する。この他に上場した建設会社の株式買収による経営権確保をはじめ、外食事業・ボーリング場・ゴルフ場・海外開発といった事業を幅広く展開している。韓会長は「今、東南アジア開発に注目している。世界的なエンターテインメント・グループに育て上げるのが将来の夢」と語った。会長はまた、「日本で生まれ、世界に広がったのは“カップラーメン”と“カラオケ”だが、将来はパチンコもそうなる」とも語った。

 会社名「マルハン」は会長の作った合成語だ。「丸い玉」という意味の「マル」と、会長の姓「韓(ハン)」を合わせたものだという。「パチンコ玉もボーリングの球もゴルフボールもすべて丸いし、地球も丸い…。また円満という言葉にも“丸い”という意味が入っていますよね。それに私の姓を付けたんです」

 05年6月22日、韓会長は日本を仰天させた。東京に近い千葉県幕張にある大型コンベンション・センター「幕張メッセ」で約9000人が出席し、マルハン売上1兆円突破を記念するイベントを開いたのだ。テーブル650台を置くため、大宴会場3つをつなぎ、食事を運ぶスタッフだけで1500人が動員された。会場では東京フィルハーモニー交響楽団の演奏と、フルコースのフランス料理が提供された。イベントの費用だけで15億円かかったという。日本の各メディアはこれを「マルハン・パワー」と伝えた。

 「店舗は日本全国に散らばっているので、従業員は会社のパワーをよく知りません。だからそれを示したかったのです。自負する気持ちを持ってほしかったということです」

 この時のイベントは、会社の売上1兆円突破を記念するものだったが、と同時に別の意味も込められていた。05年は韓会長が日本に密航して来てからちょうど60年になる年だったのだ。

趙正薫(チョ・ジョンフン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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