日雇い派遣の原則禁止を柱とする労働者派遣法の改正案が固まった。緩和が続いてきた派遣制度を規制強化に転換する内容だ。まだ不十分な点もある。国会でしっかりと審議してもらいたい。
「本来ならばこの臨時国会で改正案が成立するはずなのに…」−夏休み返上で労働者派遣法の見直し作業を進めてきた厚生労働省など関係者は困惑している。内閣を投げ出した福田康夫前首相の責任は重大だ。
労働政策審議会(厚労相の諮問機関)が先月下旬にまとめた建議は通訳や秘書、ソフトウエア開発など専門的な十八業務を除き、雇用期間が三十日以内の日雇い派遣を原則禁止する、と明記した。
また大企業を中心に行われているグループ内派遣はその割合を八割以下に制限する。違法派遣が行われ派遣先企業にも責任がある場合、派遣労働者へ直接雇用契約を申し込むよう行政が勧告する。
さらに派遣労働者の賃金や手数料(マージン)などの情報公開も義務付けるなど、批判の多い現行制度の不備を是正する内容となっていた。厚労省は法案作成と国会提出の準備に取り掛かった。
今回の改正の方向は評価できる。だが個々には課題が目立つ。
日雇い派遣の雇用期間は、悪用すれば三十一日の契約として引き続き派遣することが可能だ。もっと期間を延ばすべきだろう。
グループ内企業への派遣割合八割は、この水準まで認めるというお墨付きとなる。大企業は労働コストをしっかりと削るはずだ。
派遣労働者のうち、常用雇用型は派遣元が雇用するため身分は安定的だ。しかし約七割を占める登録型は派遣先の都合で雇い止めされるなど常に不安定である。問題が多い登録型派遣の禁止について議論を深めるべきではないか。
製造業派遣の禁止も検討すべきだ。二〇〇七年に労働災害に遭った派遣労働者は〇四年の約八倍、五千八百八十五人に達する。その七割が製造業での事故だった。
今回の改正は働く貧困層(ワーキングプア)の温床とされる日雇い派遣の削減と派遣労働者全体の待遇改善が目的だ。
ところが現状は中学生が違法派遣されていたとか、事業停止命令中にもかかわらず労働者派遣を繰り返していたフルキャストなど相変わらず違反行為が絶えない。
改正案の審議と成立までにはまだ時間がかかる見通しだ。厚労省は当分の間、派遣業界をしっかりと監督する責任がある。
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