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【主張】北の核検証 容認できぬテロ指定解除
北朝鮮の核申告検証問題で、米朝が重要な懸案を先送りして北のテロ支援国家指定解除に進む可能性が浮上している。厳正な検証が保証されず指定解除するのは核完全廃棄の原則にも反し、日本は容認すべきでない。
先に訪朝した6カ国協議のヒル米首席代表が行った協議の経過について8日、米特使が日本外務省に説明した。内容は公表されていないものの、核施設の立ち入り査察に北朝鮮の同意が条件とされたり、北が申告を拒んでいるウラン濃縮や核拡散行為が検証対象から除外されて事実上先送りされるなどの報道もある。
6カ国合意では北朝鮮が核活動の「完全かつ正確」な申告を行い、厳正な検証に委ねるという約束だった。しかし、6月に提出した核申告にはウラン濃縮などが含まれず、米国は包括的検証に応じるよう求めて、見返りのテロ支援国家指定解除を遅らせてきた。
北朝鮮はこれに反発して、核無能力化作業を停止させた。だが、核の完全廃棄を果たすには、既存の核施設の検証だけでは不十分である。ウラン濃縮や第三国への拡散活動の解明も不可欠だ。だからこそ米国はブッシュ大統領の判断で指定解除手続きを中断し、信頼性のある検証計画の合意と履行を北朝鮮に求めている。
北朝鮮の行動は都合が悪くなると強硬策で相手の譲歩を迫る常套(じょうとう)手段にほかならない。あいまいな検証で手を打ってしまっては、一度は踏みとどまった過ちを犯すことになりかねない。
原則なき妥協に基づいて指定解除すれば、日本の拉致問題にも重大な影響を及ぼすだろう。実際、北朝鮮は6月の日朝協議で拉致再調査を約束しながら、いまだに何の具体的行動もとっていない。
核問題も拉致問題も、日米は協調して原則に沿った解決を求める姿勢を繰り返し確認してきた。麻生太郎首相も2日、拉致被害者家族と面会した際、拉致は「現在進行形の話で極めて大きい」との認識を示している。
最大の懸念は、安直な指定解除が日米同盟の結束を揺るがせる恐れがあることだ。シーファー駐日米大使は9日、「大統領は何も決めていない」と語った。
麻生首相は米政府にこうした認識をきちんと伝えて、正しい判断を下すよう求めるべきだ。日米が連携を固めて、北朝鮮に約束を守らせてほしい。