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【主張】世界株安 米国は資本注入の決断を
世界同時株安の流れが止まらない。東京証券取引所の日経平均株価も続落した。
米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など米欧の6中央銀行が8日、協調利下げを実施したが、世界の株式市場の反応は冷淡だったといえる。
なぜなら、協調利下げは実体経済を下支えするが、金融危機という問題の根っこに対しては効果は薄いからである。米国はこうした市場の反応を真摯(しんし)に受け止め、迅速に行動すべきである。
利下げは、企業などが資金を借りやすくし、経済の血液であるマネーの量を拡大させる措置である。その意味で、進行中の信用収縮による個人消費や設備投資の縮小を防ぐ効果はある。
しかし、資金を仲介する銀行が資本不足から貸し渋りを行えば、いくら利下げしてもマネーは円滑に流れず、利下げの効果は期待できない。市場は、それを見透かしている。
だから、金融危機を根治するには、公的資金を投入しての金融機関の資本増強が必要なのだ。それは、日本が10年前に経験した教訓である。
日本も資本注入を躊躇(ちゅうちょ)して、利下げや景気対策などの対症療法で済まそうとしたため、信用収縮と景気悪化のスパイラルに陥ってしまった。そこから脱したのは、大手銀行への本格的な一斉資本注入を断行してからだ。
資本注入については、米国もようやく、必要との判断に傾きつつあるようだ。ポールソン財務長官は8日の記者会見で、経営が悪化した個別金融機関に資本注入する可能性を示唆した。
今月3日に成立した金融機関から不良資産を買い取る金融安定化法を活用すれば、金融機関の優先株などの購入が可能になるとの解釈のようだ。ならば、具体的枠組みを早急に示して、実行に移してほしい。
金融危機はすでに、米国から欧州に拡大している。欧州各国は、銀行を一時国有化するなどの対応に追われている。英国は大手銀行への一斉資本注入を決断した。それでも、市場が疑心暗鬼にかられているのは、米国の対応が後手に回っているからだ。
10日の先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では日本の教訓を生かした実効ある対策を打ち出すよう改めて求めたい。