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NIKKEI NET

社説2 グルジア和平後に残る火種(10/10)

 ロシアがグルジア領内に展開していたロシア軍部隊を撤収させた。ロシアとグルジアの軍事衝突から約2カ月。ロシアが和平合意を順守したことは、グルジア情勢の和平定着に向けた一歩となる。

 8月にグルジアに軍事侵攻したロシアは、紛争後も「緩衝地帯」と称してグルジア領内に軍部隊を駐留させ続けた。米欧諸国はロシアの対応を激しく非難していた。

 停戦合意を仲介した欧州連合(EU)議長国のサルコジ仏大統領が再調停し、9月に追加的な和平合意を取り付けた。合意ではEU主体の国際監視団がグルジアに展開し、ロシア軍は今月10日までにグルジア領から完全撤退することになっていた。

 サルコジ大統領はロシアの合意履行の動きを歓迎するとともに「今後はいかなる挑発も避けなければならない」とクギをさした。

 紛争の火種は残っている。ロシア軍が撤退したといってもグルジア領の南オセチア自治州とアブハジア自治共和国という2つの紛争地域は対象外だからだ。両地域にはロシア系住民が多数居住している。そもそもロシアがグルジアに軍事侵攻したのも「南オセチアのロシア系住民の安全を守る」という理屈だった。

 ロシアは紛争後に両地域を独立国家として承認し、今後も平和維持のために各4000人規模のロシア軍部隊を駐留させる意向だ。EUの国際監視団の駐留も拒んでいる。

 南オセチアとアブハジアの問題は15日にもジュネーブで開く国際会議で議論することになっている。ロシアは両地域の問題で譲歩するつもりはないようだが、ロシア以外で正式に国家承認したのはニカラグアだけだ。ロシアは国際社会の認識も素直に受け止めるべきである。

 なにより両地域が再び紛争の発火点とならないような枠組みづくりが先決である。ロシアとグルジア、EUは協力を優先して議論を重ね、打開策を見いだしてほしい。

 世界は今、米国発の金融危機の影響で金融不安に襲われている。ロシアも例外ではない。株式市場では主要指数のRTSが一時、年初来高値から約7割も下落した。あらゆる分野で国際協調が試される時代にあることも自覚すべきだろう。

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