米欧の金融混乱を発端として世界的に株価が急落し、経済の冷え込みも現実のものとなってきた。政府・日本銀行はこの速い展開に適切に対応し、必要かつ実効性のある政策を遅滞なくとるべきである。
問題の根源が米欧の金融市場のまひにある以上、最も重要で効き目がある政策は米欧に協調して金融混乱を鎮めることだ。日本銀行は外資系金融機関などの資金調達を助けるため多額の流動性を供給しているが、8日の米欧の協調利下げには加わらなかった。日本の政策金利は年0.5%と非常に低いので金利を下げなかったのは理解できる。しかし金融・経済情勢が著しく悪化していくような場合には、一層の金融緩和策をためらうべきではない。
10日の7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では金融混乱の収拾策を話し合う。日本は信用システムの回復を含め可能な限りの協力を申し出るべきだ。それは日本自身のためでもある。同時に、各国が自国通貨レートの下落を放置し、形を変えた保護貿易主義に傾斜しないよう強くクギをさしてほしい。
国内の株安や内需の落ち込みは、9月中旬の米投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻の後に進んだか、あるいは進んでいる可能性がある。麻生太郎首相は審議中の補正予算案に盛り込んだ経済対策を決める際にはこの事態を想定していなかったとして、今月下旬に追加の経済対策をまとめるよう指示した。
素早い反応は良いが、情勢をよく見て効果のある政策を選ぶべきだ。バブル崩壊後、公共事業中心に事業規模で合計約140兆円の経済対策を実施したが、あまり効果はなく、結局、金融機関への資本注入による不良債権処理が決め手となった。
追加対策の内容については、今年度内実施が決まっている定額減税の具体化のほか、設備投資減税や中小企業の資金繰り支援、新たな証券優遇税制などが浮上している。
ここで大切なのは一時的な需要の喚起・負担軽減に役立つだけでなく、中長期的な経済体質の改善や生産性向上につながる対策をとることだ。例えば農業や漁業の効率化に資するような形での補助金とか、地球温暖化対策に役立つ省エネ機器、太陽電池関連機器への補助、優良な中小企業への手厚い資金繰り支援などはやり方しだいでは意味があろう。
半面、一時的な効果に限られる定額減税の規模は慎重に考えるべきだ。経済と財政の実情を考えるなら、効果の薄い政策に多額の資金をつぎ込むのは避けるべきである。