ホーム > きょうの社説


2008年10月10日

◎新幹線で県が新組織 「2014年」へ腰上がりそう

 北陸新幹線開業へ向け、石川県が来年度の組織改正で新設する意向を示した「新幹線・ 交通対策監」ポストと、それに連なる対策監室は、開業に備える「2014年」対策が県行政にとっての最重要課題であることを明確に打ち出し、そうした認識を県内全体に広げる意義がある。

 各界各層の代表者による「STEP21戦略会議」が今年度中に新幹線活用のアクショ ンプランを策定する予定だが、どんなに素晴らしいプランができても、それを統括する実行部隊がしっかり機能しなければ開業効果を最大限に引き出すことは難しいだろう。県は「すべての施策は新幹線に通じる」という意気込みで全庁一丸で取り組む体制を整えてほしい。

 県の新たな組織の構想は、金沢経済同友会との意見交換会で谷本正憲知事が明らかにし た。県はアクションプラン策定を受け、来年度に庁内推進本部を設置し、県民挙げての推進組織も発足させるが、新幹線・交通対策監室はこれらを調整する役割を担う。

 県が行政課題の重要度に応じて組織を見直すのは当然である。新幹線対策の専門組織を つくることは庁内でその方針を徹底させるとともに、県が腰を上げて取り組む姿勢を外へアピールし、県内全体の機運を盛り上げる効果もある。「2014年」対策に求められるのは何よりスピード感であり、部局横断の強力な布陣にしてもらいたい。

 東海北陸自動車道の全線開通では、石川県側も観光客が増加したが、富山県と比べれば 行政の取り組みが出遅れたことは否めず、開通効果を引き出す戦略がどこまで描かれていたのか心もとない面もある。観光誘客や企業誘致、ポートセールスなど各施策がばらばらに動いていては交通網充実の効果を十分に引き出せないばかりか、せっかくのチャンスを失うことにもなりかねない。

 首都圏との時間が縮まる北陸新幹線の開業は、これまで経験したことのない劇的な変化 を石川県にもたらすことが予想され、さまざまな変化を県の活力につなげるために綿密な対策を練っておく必要がある。その中枢を担うポストや組織の役割は極めて大事である。

◎ゲートウェイ破たん 人々の夢傷つけた罪深さ

 経営破たんした海外留学仲介大手の「ゲートウェイ21」の破産手続き開始が決定した 。多くの人々の夢を傷つけた点で「罪深い」ものだったが、一九九七年の設立後、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスなど海外三十一都市を対象に語学留学やホームステイなどの海外留学を仲介し、盛んなときには年間一万人を留学させたこともあるといわれる。破たんを避けてほしかった企業の一つだった。

 契約者は二十代と三十代の社会人が主で、東京で開かれた会社側の説明会には留学予定 者約千人が全国から詰めかけた。留学に備えて会社を辞めた人や、アルバイトの掛け持ちで稼いだ金をつぎ込んだといった人たちが多く、社側は土下座して謝ったが、「集めた金は会社の資金繰りに充てた。返金できない」と説明したため、怒りが渦巻いたという。

 負債総額は約十二億六千五百万円。現時点では留学予定者約千三百人が前払いした約九 億五千万円の返金の見通しは立たない。すでに渡航した約千人についても、留学先への学費が払われておらず、留学の停止の可能性もある。

 東京商工リサーチによると、国内の主要都市に支社を開設し、一部旅行代理業も手掛け るなど、短期間に事業を広げすぎて運営費が収益を圧迫し、今年の春ごろから現地業者に対する支払いも遅れるなど資金面で厳しい状況にあったといわれる。

 多くの人々の期待を裏切ったという点で「駅前留学」や「お茶の間留学」のキャッチコ ピーで一躍有名になったが、結局破たんした外国語の教育事業を行っていた企業「NOVA」の末路とダブって見える。会社が破たんすることが明確に分かっていながら、入金させていた事実が出れば、その時点で詐欺が成立する可能性がある。

 留学を「人生の転機」にしようと考え、旅立ちを心待ちにしていた人々や留学先で破た んを知らされた人々のことを思うと、やりきれない。せめて、こうした教育事業に携わる業者は破たんから教訓を引き出し、いっそう努力してもらいたい。


ホームへ