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「自白」に浮かんだ謎〜愛知・豊川市男児誘拐殺人事件 (2008/7/26 放送)

幼児殺害 男はなぜ自白を?

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 拘置所から記者に宛てて、月に一度か二度、手紙が送られてくる。やっていないなら、なぜ自白したのか、理由をつづったものもある。

○(田辺被告からの手紙)
「私は丸2日間、夜11時頃まで取り調べられて…。」
「刑事さんは机を叩いたり椅子を蹴ったリしました。」
「身体に限界が来ました。」
「私自身が楽になりたかった為に、嘘の自白をしました。」

 二審の判決は、田辺被告が任意の取り調べで自白したことを重要視し、「重圧のない中での自白だから信用できる」とした。

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 本当に重圧はなかったのか?

 午前4時、車で寝ていたところを起こされ、任意同行を求められた田辺被告。豊川署での任意の取調べは、朝4時半から夜9時頃まで行われた。その後、田辺被告は"車に戻りたい"と訴えたが聞き入れられなかったという。捜査員2人と近くのホテルへ、監視の下での宿泊だった。

○ホテル支配人インタビュー
「(警察官)数人ですよ。(田辺被告は)ちょっと暗っぽい雰囲気でぽつんと座っていた記憶がありますけどね。」

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 翌日は朝8時から任意の取り調べだった。そして深夜に全面的な自白をしたという。

 この手法に疑問を投げかける専門家もいる。元東京高裁裁判長の木谷明氏もその一人だ。

○元東京高裁裁判長 木谷明氏インタビュー
「それはもう、いくら形の上で任意捜査だと言ったって抵抗できませんね。私も簡単に自白するでしょう、恐らく。」
 

幼児殺害 自白に浮かぶ謎

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 2008年4月、福井県美浜町。田辺被告の父、政夫さん(73)は山あいで農業を営んでいた。

○記者「雅樹さんを信じていますか?」
○父 田辺政夫さん「ああ信じています。毎月2回ぐらい手紙が来るわけですけど、あれだけの手紙で無罪を訴えるということは、いつかは本音が出てくるんじゃないかと思ったんですけど、最初から最後まで『僕はやっていない』の一点張りだけでしたので、それで勇気づけられました。」

 田辺被告は、父親の元にも無罪を訴える手紙を送っていた。

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○父 田辺政夫さんインタビュー
「(息子は)相手から何かを言われると"そうだ、そうだ"と迎合してしまう、というのは小さい頃からありました。だから今回の事件にしたって、取り調べの中では自分の意見をしっかりと言えなかったんじゃないかなと思います。」

 名古屋まで200kmの道のり。父、政夫さんは毎月、名古屋拘置所にいる息子に会いに行く。20分間の接見だ。

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 この日は、いらなくなった息子の冬物を手に拘置所を出てきた。

○父 田辺政夫さんインタビュー
「今の気持ち、どうだ?と問いかけたんですけど、それをうまく言葉で上手に伝えてくれなかったんですけどね。弁護士さんも一生懸命やって頂いているし、『必ず無罪を信じて頑張っている』と…。」
 

自白の謎…深夜の信号機

 弁護団は6人に増えた。田辺被告の自白の信用性を揺るがす新たな証拠を見つけた、と言う。

 田辺被告は、連れ去りの様子をこう供述していた。

「午前1時頃、翔ちゃんを自分の車に乗せ駐車場を出た。最初の信号が赤だったので止まり、助手席の翔ちゃんにシートベルトをした。そして信号が青に変わったので右折した。」(田辺被告の供述より)

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 この供述のどこがおかしいのか。

 この信号は午前0時以降、赤の点滅になるのだ。犯行時刻のこの信号は、青信号も赤信号もあり得ない。赤で止まり、青で発進したとする田辺被告の自白は明らかに不自然だ。
 

幼児殺害 自白に浮かぶ謎

 加えて弁護団は、二審の判決理由の一節が"法律に反している"と強く主張する。その一節とは…

○(二審の判決文の一節)
「被告人が犯人でないことを示す事情は見当たらない。」

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 刑事訴訟法では、被告側が無罪を立証するのではなく、検察側が有罪を立証しなければならない、と定めている(刑事訴訟法336条)。二審の判決はこれに反している、と弁護側は言う。

○堀龍之弁護士インタビュー
「被告人の側が『イヤ、私は犯人ではありません』という積極的な証拠が提出できない限りは有罪にしてよい、という考え方になってしまう。」

○後藤昌弘弁護士インタビュー
「これは非常に恐ろしい、一般市民にとっても非常にこれ以上怖い話はない。」

 実は当初、警察は翔ちゃんの父、村瀬純さんを疑っていた。アリバイがあり疑いは晴れたが、この誤った見込み捜査が証拠集めや目撃者探しの遅れを招いた面がある。

○翔ちゃんの父 村瀬純さんインタビュー
「捜査の遅れが生じたのは残念だと思いました。」
○記者
「翔ちゃんはどのように裁判を見ているでしょうか?」
○村瀬純さん
「(田辺被告が)本当の犯人だったら『本当の犯人だよ』って言ってくれていると思うんだけど、やっぱり100パーセント(確信があるわけでは)ではないので、不安な感じでいるのかなって思います。」

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 そして、拘置所にいる田辺被告。

○(田辺被告から7月15日に届いた手紙)
「厳しい暑い日を迎えることになりました。独居房の食器孔の下の扉が$"$$$F$$$^$9$N$G!"$o$:$+$G$9$,!"O-2<$+$iNC$7$$Iw$,F~$C$F$-$^$9$,!"$d$O$jCk4V$O=k$/$F>x$7IwO$$N$h$&$J>uBV$G$9!#!W

 事件から6年、田辺被告が2度目の収監を受けて丸1年だ。今、体重は50kgを切ったと言う。

○(田辺被告からの手紙 続き)
「逆転有罪を受けた心の傷は一生涯、残ります。逮捕されてからの5年間は無駄な人生になり、本当に悔しくてたまりません。最高裁での逆転無罪を確信しがんばって闘っていきます。」

 2005年度、2006年度の2年間で最高裁判所が裁いた4,316の事件のうち、逆転無罪となったのは1件しかない。

 田辺被告への判断は年内(2008年)にも示される。

《終》

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放送日時

  • 毎週土曜 午後5:30〜 TBS系列で放送
  • 毎週火曜 午後10:45〜 TBSニュースバードで再放送(注目・特集コーナー)

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