久々の朗報に元気をもらった。ノーベル物理学賞を三人の日本人研究者が独占して受賞するという快挙である。
栄誉に輝いたのは、南部陽一郎、小林誠、益川敏英の三氏。日本が世界をリードする素粒子研究で、宇宙の成り立ちや物質の根源に迫る理論物理学の分野で貢献した。
南部氏は五十年以上前に渡米し、素粒子理論の土台を築いた。「学びて思わざれば即(すなわ)ちくらし、思いて学ばざれば即ちあやうし」が座右の銘。これまでの研究活動を「謎を解くようなもの。一生の趣味ですから」と語り、学究への衰えない意欲をみせる。
小林、益川両氏が受賞対象となった理論を編み出したのは三十六年前。京大の研究室で熱い議論を重ねた。地味な秀才タイプの小林氏に対し、益川氏は型破りで感情豊か。対照的な個性の持ち主ながら、絶妙コンビの共同研究者だった。
日本の理論物理学は湯川秀樹、朝永振一郎両氏から脈々と続く、いわば「お家芸」でもある。トリプル受賞で卓越した日本の頭脳が世界に示された。
ノーベル化学賞でも日本人の受賞が決まった。生命科学の研究に不可欠な“道具”となっている緑色蛍光タンパク質を発見した米国在住の下村脩氏だ。連日の快挙に日本人研究者の底力を感じた人は多かろう。若者たちの科学への夢も膨らむに違いない。