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空気,読んでます。

NINA / 2008.10.09 23:30 / 推薦数 : 0
おかげさまで,今日こそは診察室でたくさんの時間を過ごすことができました。
感謝!
やっぱり私には会議よりも外来診療のほうが性に合うみたいです(笑)。

外来診療と言えば,先日あるアスペルガー症候群の患者さんが初診されて,そのとき少しゆっくり時間をとってお話しすることができました。

私の外来に来られる以前に他県の精神科医のもとで告知も受け,すでに診断を受容しておられる成人のかた。

そういうケースは珍しい(とにかく未診断のことが多いですから…)ので,私自身も前の主治医のところでどんな診療を受けてこられていたのかなど,興味深くじっくり聞かせていただきました。
…やっぱり私の住む地域はいろいろと遅れてますね。ちょっと悲しくなりながら,でも目の前の患者さんがきちんとした診察を受けておられたことは嬉しくてホッとしたり。

そんな診察のなかで,最近の対人関係の難しさなどについてお聞きしたところ,こんなお返事が返ってきました。

「私は空気が読めるんです。以前,派遣社員として務めたことがあって。派遣社員の立場って結構微妙だから,周りの社員のことをしっかり観察して,周囲から浮かないでとけ込む方法をそのとき身につけたんです」

…なるほど。
派遣社員として,次々新しい環境のなかに適応していく仕事は自閉症スペクトラム特性を持つ彼女にとってはすごく大変だっただろうと想像するのですが,そんななかで(おそらく小さな失敗もありながら)どうすれば無難に働いていけるかという社会的スキルを学習して習得したということですよね。

定型発達のひとたちにとって,空気って自然に読めてしまうもの。
だけど彼女は,努力して空気を読み取って過ごしている。

空気を読むために神経をはりめぐらせているとすごく疲れるだろうけど,定型発達者が多数を占める世界に上手に自分を合わせて生活することができている…それは本当にすごいことだと改めて思いました。

これからは彼女の人生に私も関わらせていただくわけですが,少しでも苦痛を和らげられるよう,この世界で生きていくことの負担を少しでも軽くできるよう,お手伝いできたらいいなぁ…。

彼女の努力に敬意を表しながら,今後の診療を続けていこうと思います。


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