〔兜町ウォッチャー〕株の換金売りピーク近づく、中長期的には明るい材料も

2008年 10月 8日 16:58 JST
 
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 株式市場は換金売りが加速し、下げ止まりの兆しが見えない。市場関係者は「あす反発するという保証はどこにもない。投資家は手を出せない」(国内投信)と総見送りムードだ。短期的には投信などのバイサイドも様子見姿勢となっている半面、中長期的な視点ではバリュエーション面から日本株は買い場との見方も出ている。

 8日の東京株式市場では、日経平均が大幅続落。年初来安値を更新し、2003年6月以来の安値で引けた。金融市場の混乱で海外勢を中心とする売りが止まらない状態となっている。「投げ売り。この急落では手が出せない」(国内証券)という。市場のセンチメントは悪いが、中長期的には日本株は買い場とみる国内機関投資家も少なくない。市場の声をまとめると、明るい材料がいくつか見えてくる。

 ひとつは、換金売りのピークが過ぎるという見方。立花証券執行役員の平野憲一氏によると、米国を中心にヘッジファンドの11月決算の多くが20日に集中している。「決算を控えた解約の45日ルールを適用すると、今が換金売りのタイミング。足元で欧米ヘッジファンドの換金売りが加速しているものの、せいぜい10月いっぱいで収まる」(平野氏)という。大和投信投資顧問上席参事の小川耕一氏は、今回の金融問題でヘッジファンドや投資銀行などプライム・ブローカレッジビジネスの縮小は避けられないと指摘するが、一方で「投資家は、これら換金売りやポジション圧縮の売りの収束を見計らった買いのタイミングを見極めている。この先1─2カ月の間に買い場がやってくる公算も大きい」(小川氏)と述べている。

 もうひとつは、バリュエーションでみた割安感。日経平均採用銘柄の株価収益率(PER)が13倍を割り込む一方、配当利回りは上昇するなど、株価指標では国内株の割安感の高まりが確認できる。市場では、バリュエーションを無視した投げ売り相場と化しており、投信などのバイサイドでも解約対応の換金売りを余儀なくされている。だが、ここが買いの好機との指摘も出ている。

 DIAMアセットマネジメント・シニア・ポートフォリオマネジャーの宮田康弘氏は「この状況ではバリュエーションは効かないとの声が台頭しているが、株価純資産倍率(PBR)が株価の下限であると考えられている1倍にまで低下している銘柄が数多くあるのに投資検討をしない運用担当者は、顧客に対する説明責任を問われかねないのではないか」と厳しい見方をしている。

 ソシエテジェネラルアセットマネジメント・チーフエコノミストの吉野晶雄氏は、現在の株式市場は極度の資金ひっ迫が多くの投資家を換金売りに走らせているが、長期運用資金にとっては買い時であると指摘。「PER、配当利回りなどバリュエーションは歴史的な割安水準にある。長期運用資金にとっては買い時」(吉野氏)という。

 

 世界的な景気減速による外需減退や円高などを受けて、輸出企業を中心に国内企業の業績悪化が顕著になってきた。ロイターが関係者に取材したところによると、トヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)は2009年3月期業績の下方修正を検討していることが分かった。先進国の需要低迷に新興国での販売鈍化が加わったほか、為替が円高に振れているためだという。

 市場関係者は企業業績の下方修正は想定済みと冷静だ。世界的な金融不安がピークの今、市場が国内企業業績の下方修正を同時に織り込めば、11月─12月の決算発表時期には大きな混乱は起こらないとみるからだ。大和投信投資顧問の小川氏は「主要各国政府は危機感を持っており、利下げや景気対策などを打ってくるだろう。回復の道筋は着々と構築されている一方、原油など商品価格の下落で交易条件も改善してくる。企業業績の先行きは暗くない」とみている。

 (東京 8日 ロイター)

(ロイター日本語ニュース 石渡 亜紀子;ロイターメッセージング:akiko.ishiwata.reuters.com@reuters.net E-mail:akiko.ishiwata@reuters.com 03-6441-1784)

 
 

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