世界の富豪列伝 - 富豪のマネー哲学に学べ!

歴史に名を残した世界の富豪たちは皆、独自の人生観とマネー哲学を持っていました。時代を超えて通用する彼らの叡智に学びましょう。

第8回 リチャード・ブランソン
「仕事の快楽」という哲学で築いたブランド力

2008年10月8日
リチャード・ブランソン

若者たちをひきつける破天荒な発想

リチャード・ブランソンは、通信、放送、出版、航空旅行、金融、コーラ飲料など、360社以上を擁する英国の新興コングロマリット、ヴァージン・グループの会長です。ヴァージン・グループは株式を公開していないため、詳細は明らかにされていませんが、年間総売上高は200億ドル、ブランソン自身の個人資産も28億ドルと言われています。ブランソンが多くの事業家のなかで際立っているのは、大手が支配する保守的な業界への挑戦や、個人的な冒険旅行の逸話を通じた若者たちからの支持・信頼を原動力にしてきたことと言えるでしょう。94年には、英国の若者へのアンケートで「最もマネをしたい人物」にも選ばれています。

ブランソンは、1950年、ロンドン郊外のシャムリー・グリーンで生まれました。聖職者、法律家、金融ビジネスマンを輩出していた由緒ある裕福な家系で伸び伸びと育ったブランソンでしたが、幼い頃から、文字を普通に読んで理解することが困難な難読症という障がいに苦しんできました。全寮制の名門パブリックスクールに入学したものの、勉学についてゆけず、中学レベルを修了した17歳で中途退学を決断します。在学中から学校の規則に異議を唱えたり、学内に上級生用のバーを作ることを提案したりと、勉強以外の活動に精力的だった彼が中退するとき、校長は「君は監獄に行くか億万長者になるかどっちかだと思うね」という言葉で送り出しました。

巨大な敵と戦い続けることで顧客の信頼を得る

学校を中退したブランソンはジャーナリストを目指して、友人と共に「スチューデント」という雑誌を創刊します。時は1967年、英国でもヒッピーカルチャーやスチューデント・パワーが盛り上がっており、雑誌はマスコミの注目を集めましたが、採算が取れるようなビジネスにはなりませんでした。そこで赤字解消のため、誌上で中古レコードの通信販売を開始しますが、郵便配達のストライキで頓挫。今度はショップを立ち上げて対応します。このレコードショップがヴァージン・レコードの出発点になりました。すでに大手が君臨し、既得権益が幅をきかせるレコード業界で、若者の支持を受けるアーティストとの契約を続け、とりわけ、大手がもて余したパンク・ロックの雄、セックス・ピストルズとの劇的な契約で確固たる存在感と若者の共感を獲得します。

84年にはヴァージン・アトランティック航空を立ち上げます。航空業界という国家戦略と絡んだ巨大で保守的な産業に食い込むため、ブランソンは正攻法ではなく、レコード会社で名をはせたブランド力を存分に利用しました。当時の独占企業、英国航空(BA)は法的にも政府からも優遇されており、ヴァージンの挑戦は簡単ではありませんでした。法にすら味方されないと知ったブランソンは、ヴァージンの参入を妨害するBAの「汚いトリック」を訴え、マスコミ取材によってそれが裏付けられたことで、対BAの訴訟にも勝利しました。このほかにも、コカ・コーラとペプシの寡占だったコーラ飲料や、慣習的に高い手数料をとっていた金融サービス分野への改革的挑戦など、いくつもの強大な相手にチャレンジし続ける彼の姿は、ヴァージンのシンボル=ブランド力の源泉となりました。業界の馴れ合いや既得権と戦うことで、「ヴァージンのやることなら正義だろう」という信頼のイメージを打ち立てることになったのです。

従業員の企業家精神を引き出すリーダーシップ

自身がお金に執着の薄いブランソンは、雑誌時代から従業員への給料も低く抑えてきました。ヴァージンの企業群はどれも人員を抑えた比較的小規模なものになっています。これらはブランソンの仕事観、人間観と強く結びついているのです。ブランソンのリーダーシップは、具体的業務は従業員に任せ、自身は彼らの熱意を引き出す役回りに徹することだと言われています。少数の従業員たちはそれぞれが企業家精神を持ち、自分の存在意義を自覚できるようになるのです。ブランソンは、富豪ぶりを見せつけるような買い物にもコレクションにも興味がなく、まるでゲームを楽しむように事業と人生を楽しんできました。そして、「普通に採用していたらアジア人と黒人の比率が高くなった」というようにブランソンは、従業員の権利が守られるように気を配ることでも知られています。BAから支払われた賠償金を社員全員で分配したり、いったん公開した株式を、「社員たちを守るには良い方法ではない」と買い戻したりしています。

社会貢献についてもブランソンらしさは発揮されます。80年代にエイズが社会問題となったとき、性の解放が訴えられた60年代のヒッピー世代として立ち上がります。コンドーム会社を買収し、大幅に価格を下げて、自らコンドームの有用性を啓蒙するキャンペーンに身を投じたのです。「人はセックスをやめることはできない」といった彼の発言は当時の英国社会を当惑させ、会社の幹部も「社の名を汚す」と猛反対しましたが、コンドームの売り上げがこのキャンペーンの成果として現れました。2000年代になると、航空会社として、環境へ害の少ない燃料の開発に力を入れ、2008年には、ヴァージンの所有するカリブ海のネッケル島にブレア元首相や世界の指導者、有名人を招き、環境問題に関する会議を主催するなどの活動をしています。2009年夏には、世界で初めての民間による宇宙旅行を計画するなど、ブランソンの異端児ぶりはなおも健在です。

キャッシング、カードローンも着実な返済がカギ

どんな挑戦にも計画は必要です。とりわけ資金計画は綿密に行わなければなりません。キャッシング、カードローンは目的を明確にして返済計画をきちんと立てるように習慣づけましょう。楽観的な見通しで大きく借りるよりも、できるだけ確実に返済できる額の範囲で、借り入れを済ませることが上手なローン活用の鉄則なのです。

[参考文献]
リチャード・ブランソン『ヴァージン 僕は世界を変えてゆく』(TBSブリタニカ)
ミック・ブラウン『20世紀最後の風雲児 ブランソン』(集英社)
デス・ディアラブ『リチャード・ブランソン 勝者の法則』(PHP)

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