◎東証株価の大暴落 経済対策求める市場の悲鳴
東証株価が一日で9・4%も暴落した。下落率は過去三番目に高く、この五日間で実に
二一〇〇円も下げた。この大暴落は、実体経済の悪化というより、内外の機関投資家による猛烈な「換金売り」の結果だろう。金融機関からの資金調達が難しくなった企業や投資ファンドは、手持ちの株式を売って現金に換える。ニューヨーク市場に次ぐ規模の東証がアジア市場のなかで最も下げているのはそのせいでもある。
トヨタ自動車やソニー、新日鉄といった日本を代表する企業が、解散価値を下回る株価
水準まで売られた。本来ならここまで下がる前に買いが殺到し、株価は戻すはずだが、換金目的の売りは価格に構わず売ってくる。売り物が多いうえに株価下落のスピードが異常に早く、底値が見えないこともあって、買い方は手の出しようがない。一ドル=一〇〇円を一時割り込んだ円高もマイナスに働いた。
日本の金融機関はサブプライムローンによる損失をそれほど受けてはいないが、グロー
バル経済下では、逆風をまぬがれない。外需の縮小で輸出が伸び悩み、企業業績は悪化する。外国人投資家の売買シェアが半数近い東証の大暴落もそうした風圧の一つだろう。
それでも金融危機対策に躍起となっている欧米諸国に比べ、政府や日銀の危機感は今ひ
とつ鈍い。国会の論戦を聞いていても、世界的な大不況の入り口に立っているという切迫感に乏しい。大暴落は、日銀や政府に対策を督促するマーケットの悲鳴なのかもしれない。
麻生太郎首相は会見で、株価暴落について、「想像を絶する」と述べ、追加の経済対策
の必要性を改めて強調した。具体策を打ち出すなら早ければ早いほうが良い。法人税減税や住宅ローン減税などインパクトのある案を早急に提示すべきだ。
今、世界規模で異常な信用収縮が起きている。ドル資金の流動性が枯渇しかけている。
そのなかで日本は潤沢なドル資金を持つ数少ない国である。十日に米国で開かれるG7(先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議)で、日本は米欧を特に資金面でサポートする役回りを求められよう。
◎改革したい理科教育 受賞を喜ぶだけでなく
ノーベル物理学賞を三人の日本人が同時受賞したのに続き、化学賞にも日本人が一人選
ばれた。物理学賞の日本人トリプル受賞は初めてで、受賞者は今回で七氏となり、化学賞の受賞者は五氏になった。国民としてはうれしい限りだが、ただ喜ぶだけでなく、理科教育のあり方を考え直すきっかけにしたい。
この日本で、とりわけこの十年間に理科嫌い、理科離れが増えていると聞くからだ。い
ろいろな要因が指摘されているが、主なものを挙げると、第一に、小学校の理科教育が文系の教育学部出身の教師によって行われていることである。そもそも文系への進学者は、少数の例外があるにしてもおおむね理科が苦手の学生であり、そのような人が教壇に立って理科を教えても、理科の本当の面白さ、理科を学ぶ楽しさ、考える力、地味な努力に耐える力などを子どもたちに教えることができるだろうかと疑問視されている。
第二は、いわゆるセンター試験や大学の入試は基本的に知識の量を問う問題が多い傾向
だと指摘されており、暗記に強い者に有利なことである。第三は、大学院の博士課程へ進む学生が減ってきた等々である。
第一については、たとえばドイツの教育がある。小学校は四年までで、それから上は日
本の中学校と高等学校にあたるギムナジウムがあり、そこの理科教師は大学院の修士課程を出た研究者の卵が先生になって指導しているそうだ。日本の理科教育も小学校高学年の教師に大学院修了者を充てたい。
第二の問題については試験問題の出し方を変えるしかあるまい。第三の問題は企業など
の協力が要る。なぜなら、博士課程を終えると、三十歳近くになり、研究者に向かないと思い、人生の進路を切り替えたくても就職先が極めて少なく、博士課程への進学は「冒険」だからだ。
最近では北陸でも博士課程修了者を採用する企業も出てきたが、まだ少数であり、研究
者として生きることに人生を賭けてみる学生が減る一方なのである。解決したい問題である。