俗に「馬(ば)上、枕(ちん)上、厠(し)上」という。昔の中国で、文章を練るのに格好な場所としてあげられた例え(広辞苑など)だが、いいアイデアが浮かぶ場として現代にも通用する 「馬上」で揺られて頭の中までゆったりしてくるのは、今で言えば散歩の効用か。寝ながら考えが浮かぶ「枕上」、トイレの中でヒントが出る「厠(かわや)」の例えは説明するまでもなかろう。合わせて「三上(さんじょう)」と呼ばれる 物理学の3人に続いて化学賞で下村教授のノーベル賞受賞が決まった。物理学の益川教授は風呂の中で発見のヒントがひらめいたという。「三上」に加えて「浴中」も知られることになろう。お湯の中での大発見はいかにも日本人らしい が、せっかくのアイデアもすぐ忘れてしまうので困る。枕元にペンを置いてメモをするのだが、苦心して書いたラブレターのようなもので、一夜明けて読むと自分でガッカリすることが少なくない 一瞬のひらめきは「寝かす」こと、時間をかけて発酵させることも大事だろう。ノーベル賞も論文発表から30年以上たって受賞の知らせが届く。凡人は「落馬」しない程度にのんびりいきたい。
|