富士山の夏山シーズン中に、富士吉田市が吉田口登山道8合目に開設した救護所の受診者数が502人(対前年比52人増)と過去最多を記録したことが分かった。頭痛や吐き気など高山病とみられる症状を訴えた人が6割超と最多で、軽装のために急に体調を崩したケースが多いのが特徴だった。同市は「軽い気持ちで登山する人が多かったのではないか」と分析している。
救護所は7月15日~8月25日、富士山8合目の山小屋「太子館」(標高約3100メートル)内に設置され、山梨大医学部と富士吉田市立病院の医師や看護師らがボランティアで対応した。02年から開設されている。
同市のまとめによると、救護所で手当てを受けた登山者の症状は、高山病(疑いを含む)324人(全体の64。5%)▽ねんざや打撲43人(同8・6%)▽外傷22人(同4・4%)--などとなっている。8月には自動体外式除細動器(AED)を使い、意識不明となった登山者を回復させた事例もあった。1日あたりの平均受診者数は12・87人(前年10・46人)だった。
同市などによると、標高3000メートルを超す富士山8合目まで、短パン、Tシャツ姿で登り、寒さに耐えられずに救護所へ駆け込む人が数十人いたという。また、雨にぬれた時や汗をかいた後の下着の着替えさえ持参せずに、寒さや体調不良を訴える登山者もかなりの数に上った。
近年、富士登山の人気は高まっており、今夏の富士山の山梨県側登山者数は24万7066人で、統計を取り始めた81年以来過去最多を記録した。同市は急増の原因として、世界遺産登録への取り組みによって注目されたこと▽山小屋が快適性確保に取り組んだこと▽団塊の世代がアウトドアに関心を持ち、その入り口として富士山に関心を持ったこと▽原油高によって首都圏近郊の観光地に関心が寄せられたこと--などを挙げている。
しかし、それに伴って、レジャー施設に出かけるような気軽な気持ちで登山する人が増えているとみられ、同市は「来年は旅行会社などを通じて、富士登山の厳しさを理解してもらうよう対策を検討したい」と話している。【田上昇】
毎日新聞 2008年10月8日 地方版