最近、胸に残る言葉をいくつも耳にした。金メダリスト北島康介選手の「なんも言えね」をはじめ、北京五輪で活躍した選手たちのそれや、今シーズン限りで引退するプロ野球の王貞治監督、清原和博選手らが語った言葉など。冗舌ではないが、それぞれの思いが凝縮していて心に響いた。その共通項は自分に謙虚で周りへの感謝の思いにあふれていることだ。
一方で、今注目の政治の世界はどうか。与野党が丁々発止の舌戦を展開しているが、どうも引き込まれない。お役所言葉の紋切り型のやり取りはいっときより減ったようだが、相手への批判がマニュアルがあるかのようにパターン化していたり、肝心の部分で論戦を避けたり。質疑がヒートアップする割に吸引力や説得力はいまひとつ。
無秩序なやじと怒号も言葉の浪費だ。中身にウイットやユーモアがあればまだしも、威嚇や妨害のための怒声の応酬は見苦しい。
政界では古くは、だみ声で聴衆をわしづかみにするような田中角栄元総理が記憶に残る。改革の是非はともかく、最近では「劇場」の主役を演じた小泉純一郎元総理の歯切れの良さが聞き手の心をつかんだ。
総選挙が近いとみられる。今月は岡山県知事選があり、来年には市町村合併をした自治体の首長選挙も相次ぐ。今、政治に対する有権者のあきらめ感がどんどん蓄積している気がするが、政治家が心に響く言葉を持てば政治は身近になるはず。選挙戦で候補者は、信念のこもった深い言葉を語ってほしい。
(津山支社・道広淳)