幕末から明治にかけ岡山県ゆかりの人物で、最初の幕府留学生として西洋に渡ったのは、津山藩出身の津田真道のようだ。
オランダ上陸時、大小の刀を帯び羽織はかまに威儀を正して歩き、数万の群衆が見物したという(石附実著「近代日本の海外留学史」)。西洋人に負けてなるかとの心意気だったのだろう。帰国後は法学や経済学の基礎を築いた。
明治時代にかけて留学とは国家、社会のために西洋の進んだ文化や技術を学んでくることだった。現地の大学などで学問を修めて帰国すれば、指導者の地位が約束されていた。
最近の留学は、誰でも海外旅行ができるようになり、国家を背負った深刻さはない。語学をマスターし、国際貢献などやりがいのある仕事や自分の夢を実現するため、私費で留学を目指す若者が増えた。
そんな青年たちが、先日の東京の留学仲介会社の破産で泣いている。映画翻訳の仕事を夢見てカナダへ語学留学を希望したOLは、払い込んだホームステイ代がふいになった。会社を辞めたばかりだ。
短大卒業後、ビジネス英語を学ぼうと渡米した女性は、働きながらためた学費が現地の学校に払われていなかった。留学中の滞在費が払えなくなった人もいる。若者たちの人生を狂わせ、夢を奪った会社のずさんな経営が許せない。