敷金ゼロ、礼金ゼロ、仲介料ゼロをうたい文句にした「ゼロゼロ物件」のアパート入居者ら5人が8日、無断で鍵を交換されるなど生活の平穏を著しく侵害されたとして、不動産会社「スマイルサービス」(東京都新宿区)を相手取り、計約1190万円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。
訴えによると、5人は06~08年に都内の物件に入居したが、同社は利用料の支払いがわずかでも遅れると無断で鍵を交換したり、2万円を超える違約金と施設再利用料を徴収した。部屋に無断侵入し、荷物を撤去したケースもあったという。
ゼロゼロ物件は低所得者が契約するケースが多く、「貧困ビジネス」の一つと呼ばれる。同社は、借主が保護される借地借家法に基づかず、「施設付鍵利用契約」と称する特殊な契約を結び、支払いが確認できない場合は施設を利用できないとする承諾書を取っていた。
こうした契約について宇都宮健児弁護団長は「実態は借家であり、認められない。生活困窮や法的無知につけ込んで違法な利益を上げる悪質商法だ」と主張。鍵を14回交換された土田政彦さん(29)は「蓄えがなくアパートを出るに出られなかった。勝手に入られて家に住んでいる気がせず、今でも精神的なショックの後遺症が残っている」と話している。【銭場裕司】
▽スマイルサービスの話 係争中のためコメントは控えたい。
毎日新聞 2008年10月8日 13時05分(最終更新 10月8日 17時38分)