2008年10月08日

緒形拳さん

緒形拳さんの訃報を聞いて、驚いた。

『咬みつきたい』以来、仕事はしていないが、津川さんからも良く噂を聞いていたし、『あずみ2』の時に京都松竹でお会いしたのは『隠し剣鬼の爪』の撮影だったのだろう、衣装を付けてセットの表で立っていて……僕も時代劇で来てるんですよ、と、言ったら、いつものようにニヤッとして、またやろうな、と言ってくれたんだが……

緒形さんと言えば、僕らの世代では、NHK大河『太閤記』の印象が強く、高橋幸治の信長が佐藤慶の光秀に討たれた一報を高松城攻めの陣地内で聞いて大泣きに泣く秀吉の姿を、先ず最初に思い出してしまう。

もちろん、映画でも代表作は多いんだが、何故か『砂の器』で加藤剛がオーケストラの指揮を執っている最中に回想の画面が浮かび、「首に、首に縄くくってでも引っ張って連れてっちゃる!」というセリフを言う短いワンシーンが思い出されてしまう。

『咬みつきたい』は、「緒形拳が絶対やらないだろうというような役をやりたい」というところから始まって、「例えばドラキュラなんかさ」という発想になったのである。
純日本人的なイメージを持つ緒形さんが、西洋の伝説の妖怪をやったら面白いんじゃないか、という御本人のアイデアだった。
だったら、チャウシェスクがオリンピックでルーマニアが全種目で金メダルを取るためドラキュラの血を研究していてたが革命のどさくさでその血が日本に渡って来てそれが日本のサラリーマンに輸血されてしまったら……というアイデアを提案した。

こちらの言う事を、かみしめるように聞いてくれる人だった。

あの撮影は、とても楽しい日々だった。

ドラキュラの血が入って蘇って家に帰って来た緒形さんは、先ず風呂に入ろうとして、素っ裸で石田ひかりの娘の前に立つんだが、このリハーサルの時、前ばりを付けていた緒形さんは、本番で予告無く外してしまう。しかし、石田ひかりは臆する事無く演じ、「ありゃ度胸のある子だね」と緒形さんに言わしめた。

メインタイトルの文字も緒形さんの手によるものであった……

もう一度の機会無く、残念……悲しいです……
ご冥福をお祈り致します……

kaneko_power009 at 12:15 │Comments(0)

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