2008年08月31日(日)

退職願①

テーマ:Pプレス

2008年6月27日(金)、長い会議の翌日。


僕は会社に行くのが、とても憂鬱でした。


昨日は社員みんなの前で(Pプレス社長)を大々的に批判してしまったので、覚悟の上の行動とは言え、はたして今日から、どんな反撃が待っているのか、非常に気になります。


9時30分に出勤すると、はまだ会社に来ていません。


幾分ホッとしましたが、何だか蛇の生殺しのような気持ちです。


Y課長も、おそらく同じような感覚だったでしょう。


そんな落ち着かない気分のまま、小一時間ほどデスクワークをこなしていると、がやって来ました。


おはようございまーす!


予想外に明るい第一声に驚かされました。


そのうえ、異常にブリブリとした振る舞い。


こういう時のは、おおむね何かを企んでいるのです。


やがてはウキウキと作り笑顔で、我々の方に近付いて来ました。


Yさん、○○っていうマンガを読んだことはありますか?


え? ああ、ありますよ。


アレって、いいですよね、前向きで。ああ、前向きに頑張るっていいなあ!


この芝居がかった態度で他愛もない世間話を繰り広げることで、どうやら昨日の一件をなかったことにしようとしているようです。


じゃあ、オレは8月の新刊の件で取次に行って来ます。


行ってらっしゃ~い!


僕は、こんなウソ臭いやり取りを見るに耐えず、いぶかしい表情をしていました。


政権交代さんは、今日はどんなご予定ですか?」


僕も出かけますけど。


ぶっきらぼうに応えると、は少しとまどいを見せました。


え? ああ、あの書店さんに営業に出かけるということですよね。


そうです。では。


居心地の悪い場所から逃れるように、僕は会社を後にしました。


それから、Y課長の携帯に電話をしました。


もしもし、政権交代ですけど。さっきのTの様子を見て、どう思います?


気持ち悪いな。


昨日の話し合いも、なかったことにされそうな感じですよね。


そうだな。向こうのペースに巻き込まれないように気を付けないと。


我々の読みは、どうやら当たっていたようです。


後から判明したことですが、は、T役員(A出版元社長)の携帯にガンガン電話をして吠えまくっていたそうです。


あの二人はいったい何なんですか! どうにかして下さいよ! どうして私が、あんなに言われなきゃいけないんですか! Nさん(経理)だって、実際にミスを犯したのは事実なんですよ! まるで私が一方的に悪いみたいじゃないですか!


結局、人の性格なんて変えようがないということですね。


夕方、会社に戻ると、が僕に話しかけてきました。


昨日の話ですけど、結論から言うと、これからもお二人と一緒にやって行きたいということですよ。


何という手前勝手な理屈でしょう。


様々な問題を投げかけたのは、こちらの方です。


それに対しては、「私なりに整理して考え、今後の方向性を提案します」と言いました。


それなのに、なぜ「結論」をあなたが先に出しているのでしょうか。


僕はがく然としました。


わかりました。今日は、ちょっと用事があるので、話なら今度、Y課長と一緒の時に聞きます。


とりあえず、その場を切り抜けて会社を出た後、僕は高田馬場の喫茶店「」でY課長と落ち合いました。


あれだけオレやT役員や政権交代が言ったのに、今日のTはケロッとした顔をしていたな。


Y課長がアイス・ティーをすすりながら切り出しました。


このままだと、何もかもウヤムヤにされてしまいますね。


あれじゃあ、甘かったということか。


僕は今までいた会社で、社長にあれほど言いたいことを言ったことは、もちろんありません。普通の会社でも、あそこまで言っちゃったら、もう辞めるしかないですよ。まして、相手はTですから。


少しは反省するかとも思ったけどな。


とりあえず、今は僕とY課長にいっぺんに辞められると困るし、他の社員の手前もあるから、何とかして騒ぎを収めようとしてるんだと思いますけど、もう僕らはTに敵対してしまったわけですし、このまま会社に残っても、イバラの道なのは間違いないですよね。」


Tが社長を辞めるなら話は別だけど、それは絶対に無理そうだしなあ。


Tが社長に居座っている限り、やりたい放題ですよね。気に入らない社員は切り捨てるし。僕らも、Pプレスのシステム完成のためだけに利用されて、後は直ちにポイ捨てですよ。


そうだな。こうなったら、もはや退職願を出すしかないか…。


Y課長が宙を見つめながら、つぶやきました。


Y課長が辞めるんなら、僕ひとりが会社に残っても仕方がないですから、僕も退職願を出しますよ。


万が一、引き留められたら、もう一度、Tに反省を促す。


二度と自分の好き勝手で社員を辞めさせるなと…でも、難しいでしょうけどね。


普通は引き留めると思うけどな。


どのみち、社員をこれだけ粗末に扱う会社に未来はないでしょう。僕は辞めても全然、後悔はないですね。こんな会社のために一生懸命、働くのもバカらしいし。


わかった。じゃあ、そうしよう。いつにする?


早い方がいいですね。週明け早々にでも。


月曜日か。わかった。


朝一番に出しましょう。休みの間に準備して。


あっさりと二人いっしょに辞める話になってしまいましたが、それだけ、Pプレスに対する失望の度合いが深かったということです。


このブログでも、さんざん語り尽くしたので、これ以上は書きませんが…。


週が明けて30日(月)、僕とY課長は胸ポケットに『退職願』をしのばせて会社に行きました。


この日、は朝9時30分には出社していました。


Y課長のそばへ行って言います。


あの、ちょっとお話したいことがあるのですが。


何でしょうか?


は少し怪訝そうな顔をしました。


二人が会議テーブルに着いたところで、すぐに僕も駆け寄ってY課長の隣に座りました。


Y課長が切り出します。


いろいろ考えたんですが…。一身上の都合で7月末日付で退職させて下さい。


僕も、一身上の都合で、7月末日付でお願いします。


二人で『退職願』をの前に差し出しました。


中を改めさせていただきます。


はプルプルと震える手で、『退職願』の封を開けました。


そうですか…。撤回はしませんか?


はい。


Y課長が返事をしました。


僕も10年以上サラリーマンをやっていて、会社を辞めたことも何回かありますし、退職願の意味もよくわかっているつもりです。家族にも相談した上で決めたことですので、今さら撤回はしません。


僕が断言したところで、はつぶやくように言いました。


わかりました。残念ですが…。では、引き継ぎ等に関しては、また改めて相談させて下さい。


(おっ、すんなりと受理されちゃったよ。)


僕とY課長は顔を見合わせました。


それから、我々は会社を出ました。


お世話になった方々に挨拶をするためです。


Y課長が、まずT役員に電話をし、今朝の出来事を説明しました。」


おいおい、お前たち、ちょっと待ってくれよ!


電話口でT役員が慌てているのが、隣の僕にも伝わって来ます。


取り急ぎ3人で話し合うことになり、1時間後、我々は神楽坂の喫茶店「」に集合しました。


何か、あっさり受理されましたよ。


Y課長が言いました。


いやいや、そういう問題じゃないよ。大体さあ、こういう場合、普通は受理しないもんだよ。保留とか預かりとか何とか言ってさあ。Tは全然わかってないんだよ、事の重大さを…。


T役員は頭を抱えています。


今まで社員を辞めさせてばかりだったから、引き留め方を知らないんじゃないですか。


僕が軽口を言っても、T役員は真面目な顔を崩しません。


笑い事じゃないよ、まったく。」


そのとき、Y課長の携帯が鳴りました。


もしもし…。


それはからの電話でした。


~つづく~


コメント

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■無題

T社長が居る限り、Pプレス社は倒産する運命かもしれませんね。

■無題

同族嫌悪にしか見えません
大人ならば「敵、味方」で区別せず見れないのでしょうか?
電話でコソコソ集団でギャアギャアやってることは一緒だと思います

■決断

社員を大切にしない会社に未来はありません。

長い目でみれば、政権交代さんの決断は正しいと思います。

■素晴らしいです

いよいよ佳境に入るスト―リーの緊迫感が現われた素晴らしいブログと思われます。皆様がおっしゃられる通り人材を大事にしない会社に未来はないと思われます。政権交代様のブログで描かれている会社も日々運営が難しくなっていくものと思われます。

■こんばんわ

コメントいただいて、初めてブログ拝見しました。
すいません・・・ちょっと病のため、字を読むのが困難なんですが大きい字なのでちゃんと読めました。
なんだか・・今まで何箇所かで勤務してましたが、こんなことが実際起ころうとは。
ただ、ただ、唖然としてしまいました・・・

■がんばってください

はじめまして、とある掲示板から誘導され、今ではすっかりコチラのファンとなりました。月と申します。

独裁者なんて言葉じゃ足りない社長さんですね。
仁義や礼儀のないトップでは、どんなに下が良い仕事をしても会社全体が見下されると思います。

政権交代さんの判断は正しいです。こんなところでストレスをためるより、もっと活躍できる場はあるはずです。どうぞ、体を大切に、がんばってください。

楽しみ?と言ってよいかと思いますが、続きを早く読みたいです。

■致し方なし。

どっちもどっち、という気はしますが、小さな会社で軋轢が生じたらお互いやりにくいので、お辞めになって正解でしょうね。

■いよいよ大詰めですね。

P社社長との攻防も最終段階のようですね。
社員が退職届を出す気持ちを推察できない経営者は大成しません。
いい会社とは、「人・物・金」、文字通り一番最初にくる「人」が充実している会社です。
人が物を作り、金が生まれる。
この基本をT社長に教える人がいなかったんではないでしょうか?
もっとも、言っても聞く耳持たないか・・・・・
再就職、頑張って下さい。

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