通貨オプション、ヤミ金より恐ろしい「KIKO」(下)
中途解約も複雑で「事実上の奴隷契約」
◆抜け出したくても抜け出せない「奴隷契約」
さらに深刻な問題は、被害が今も進んでいるという点だ。この企業のケースでは、為替が大きくウォン安に振れている最近、被害額は1日に数億ウォン(1億ウォン=約770万円)単位で積み上がっている。それでもこれといった対策もなく、KIKOに加入している企業は1日も早くウォン高に振れることを祈るばかりだ。この企業は1ドル=1300ウォンになれば88億8000万ウォン(約6億8000万円)、1400ウォンなら112億8000万ウォン(約86億5000万円)、1500ウォンになると136億8000万ウォン(約10億5000万円)へと損失が大きく膨らんでしまう。最大で3億ウォン(約2300万円)の収益を期待したのが、1ドル=1500ウォンになるとその45倍以上の損失を出す結果となったのだ。
しかし途中解約も簡単ではない。満期(通常は1年から2年)到来前に中途解約すれば、残りの期間の損失を現在のレートを基準として一括して処理しなければならない。ホテルを10泊予約しておいて2日で出て行く場合、10泊分の宿泊費に隣の部屋の料金までプラスして支払わなければならないような構造となっている。業界としては、今後ウォン高に振れる可能性もあるのに、現在の安いレートで計算して罰金を支払うのも大きな負担となる。銀行は「複雑なKIKOのリスクをあらかじめ別の投資先に分散しているため、中途解約をして現状に戻すのははっきり言って不可能だ」と説明する。今月2日に中小企業中央会会議室で開かれた被害企業対策会議である参加者は、「1度引っかかると抜け出せないワナにはまった気分だ」と嘆いた。中小企業中央会は、為替が1ドル当たり10ウォン安くなれば被害は1000億ウォン(約77億円)ずつ増えると推定している。
◆再契約の誘惑
一度加入すると解約が難しいことから、結局中小企業が取る対策としては、別の条件のKIKO類似商品に加入するか、あるいは加入額を高める代わりに行使レートも高めるという再調整を行うしかない。KIKOにより多額の損失を出したある経営者は、「行使レートを920ウォンとして500万ドル(約5億円)で加入し、為替が960ウォンよりも安くなって実際に被害が発生すれば、銀行は100万ドル(約1億円)で新たにもう一度加入して行使レートを950ウォンとするよう提案してくる。すでに多額の損失を出している側からすれば、“もしかすると”という誘惑に駆られてしまう」と告白した。
李仁烈(イ・インヨル)記者
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