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タスポ 煙たがられる? たばこ店閉店続々

2008年10月08日

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街角のたばこ店では、自販機を避けて窓口で買う愛煙家が増えている=宇都宮市馬場通り4丁目

 たばこ自動販売機で成人を識別するICカード「taspo(タスポ)」の県内での導入から3カ月が過ぎた。だが、普及率は約3割と低迷する一方、自販機の売り上げは激減。街のたばこ店の閉店が相次ぎ、飲料の自販機の売り上げが落ちる思わぬ副作用まで出ている。導入の狙いだった未成年者の喫煙防止にはっきりした効果があったとも言えない。広がる余波に「煙たいのはタスポ自体?」との声も聞こえてくる。(吉永岳央)

 「自販機の売り上げが7割も落ちた」。宇都宮市馬場通り4丁目でたばこ店を営む日賀野照男さん(66)はタスポ導入の7月1日以来、頭を抱えている。窓口での手売りは1・5倍増というものの、「全体の売り上げは1〜2割減。コンビニで購入する人が増えたようだ」と話す。「休日でも店を閉めづらくなった。開店からの60年間で最大の痛手だ」とも。

 日本たばこ協会によると、県内の推定喫煙者数40万9604人に対し、タスポ発行枚数は12万2082枚(9月27日現在)で、普及率は約29・8%という。普及率が依然伸び悩んでいることについて同会は「タスポの認知度自体は高いはず。じっくりと(発行枚数を)増やしていきたい」としている。

 自販機の売り上げに頼ってきた街のたばこ店では、売り上げ低迷による廃業が急増している。宇都宮財務事務所によると、タスポ導入時期と前後する6〜8月の廃業件数は76件。昨年同時期と比べ35件増といい、財務課の有須田郷平さんは「タスポ導入が件数を押し上げたのは、ほぼ間違いない」と見る。

 「たばこを吸う人は皆タスポを作ると思っていたが……」と漏らすのは、県たばこ販売協同組合連合会の川島一男事務局長だ。「(普及率の伸び悩みは)発行手続きが面倒なのが原因では」と話す。

 タスポ導入の余波に、思わぬ巻き添えをくらった業界もある。たばこ自販機の隣に設置された飲料の自販機の売り上げまで落ちてしまっているという。

 ジャパンビバレッジ宇都宮支店は「売り上げが落ちた自販機があるのは事実。たばこを買ったお釣りで飲み物も買うという『ついで買い』が減った結果。まさかこんな影響があるとは……」。ダイドードリンコ関東支店の担当者も「ある程度予想はしていたが、ここまでとは思わなかった」と話す。売り上げ低迷で「電気代がもったいないから」と自販機撤去の要請がきたケースもあるという。

 波紋を広げるタスポだが、導入の主目的だった未成年者の喫煙防止に即効性があったというわけでもなさそうだ。

 県警少年課によると、タスポが導入された7月の未成年者喫煙補導件数は641件で、前年よりも175件増えたという。8月は前年比45件減の540件だったというが、同課は「未成年者がたばこを買いづらくなったのは事実」とした上で、「自販機以外からたばこを手に入れる者もおり、補導件数が極端に減るとは思えない」としている。

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