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北京五輪柔道男子100キロ超級金メダリストの石井慧(21)=国士大=が7日に会見し、「スポーツ報知」既報通りにプロ格闘家転向を発表する。5日に全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長(57)に格闘家転向の意向を伝えていたことも6日、判明。恩師で全日本男子の斉藤仁監督(47)にも約2週間前に希望を伝えた。吉村委員長は慰留はせず、2012年ロンドン五輪の強化構想から外す考えを示した。
石井の動向を巡り、都内の国士大柔道部寮には夕方から報道陣が殺到した。本人は姿は現さなかったが、夜になって、代わりに対応した斉藤監督が、石井が7日に会見することを明かした。異種競技挑戦を自分の口で伝えることになった。
若き金メダリストは股(こ)関節痛を理由に欠場した5日の世界団体選手権後、報道陣には格闘家転向を否定。しかし日本柔道の強化トップ、吉村委員長は会場の東京武道館で会談した際、「総合(格闘技)に行きたいです」と意思を伝えられたことを明かした。
21歳で五輪を制した若武者にとって、次なる目標がプロのリングだった。これまでも柔術に取り組むなど興味を持っていたが、五輪後は「世界一強い男になりたい。(格闘家の)ヒョードルとやりたい」などと発言。秘密裏にグラブを付けた打撃練習に取り組む一方、水面下で格闘技関係者と接触するなど準備を進めていた。さらに、斉藤監督には2週間前に転向の希望を伝えていた。
各所に筋を通した形だが、柔道界からは“三下り半”を突きつけられた。吉村委員長は「自分の人生だから好きにしたらいい。ここまで騒ぎになったら、いらん」とキッパリ。現役引退を意味する「強化指定辞退届」も近日中に提出させるとした。五輪後の奔放な言動も問題視。前日の大会も出場要請を拒否する“反乱”に遭い、「それならば柔道界にはいられない」とも言った。
全柔連の規定では、他の格闘系競技とプロ契約することを禁じている。罰則には会員登録の永久停止処分もあるが、期限付きの停止処分もあり、ロンドン五輪前に柔道界に復帰する道もある。だが吉村委員長は「そんなに甘いものじゃない。戻ってきても4年間鍛えたやつの方がよっぽどかわいい」と突き放した。現実的にも国際柔道連盟が来年1月から導入予定の世界ランキングで五輪出場枠が決まるため、選手はコンスタントな試合出場が求められる。それだけに「将来が見えないやつは意味がない。力が落ちても別のやつを使う」と、ロンドン五輪の“構想外”を宣告した。
退路を断たれた格好の石井だが、裏を返せば念願のプロ格闘家への障害が消えたともいえる。現役金メダリストが、新しい世界に飛び込む。
◇強化指定制度 全柔連が国際大会の派遣条件として定める選手を格付けするもの。トップ選手のAから中学生のEまでのカテゴリーに分かれている。石井ら五輪代表は全員が強化A。強化選手にはランクごとに100~300万円ほどの補助金が支給される。強化指定辞退届を全柔連に提出することが、事実上の現役引退を意味する。
◇ランキングシステム 国際柔道連盟(IJF)が来年から導入する方針の世界ランキング。ロンドン大会からの五輪出場権もそれを基にすることになる。世界選手権や各国で行われる国際大会などの順位に応じてポイントを与えるもので、五輪出場のためには4年間コンスタントに試合に出場する必要性が出てくる。
(2008年10月7日06時04分 スポーツ報知)
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