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【主張】日米株大台割れ G7で抜本策を打ち出せ
米国サブプライム問題に端を発する金融危機の影響で世界の同時株安が加速している。前日の米ニューヨーク市場のダウ工業株30種平均が終値で1万ドルを割ったのに続き日経平均株価も一時1万円の大台を下回った。
これは資本市場が危険水域に入ったことを意味する。市場からの企業の資金調達を難しくし、家計も資産が減って消費を減らす「逆資産効果」を強める。それが景気を一段と悪化させ、さらに株は下落しよう。このままでは金融システム不安と相まって恐慌の懸念が一気に高まろう。そうした事態を避けるには、震源地である米国が金融システム安定に向けた断固とした対策を示す必要がある。市場が納得する抜本策を早急に打ち出してほしい。
株下落の背景には、公的資金で金融機関から不良資産を買い取る米金融安定化法の効果を疑問視する見方が市場に根強いことがある。市場は公的資金による資本注入とセットでないと効果が薄いとみている。
米政府は買い取り価格の算定ルールなど早急に制度を具体化し、それを実行に移すとともに、金融機関へ直接、公的資金による資本注入に踏み切るべきだ。
日欧米の中央銀行による政策協調も一段と進める必要がある。すでに各国は金融機関同士の資金の流れを円滑にするため、協調して大量のドル資金を市場に供給している。これに加えて、米国と欧州の協調利下げも検討すべきだ。
原油や穀物などの資源価格が下落してインフレ懸念が緩和されているから、その環境は整ってきたといえよう。
株価下落は日本経済の先行き不透明感も強めている。すでに輸出の鈍化で生産が弱まって、設備投資が縮小傾向にある。9月の企業短期経済観測調査(短観)の業況判断も悪化した。現実に、銀行は不動産向け融資を絞っており、上場している中堅不動産業者なども相次いで倒産している。
補正予算案に信用保証枠の拡充が盛り込まれているが、金融機関の貸し出しに対する行政の過剰な介入も指摘されている。これを緩めると同時に市場対策の準備も怠ってはならない。
10日の先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で金融危機拡大に歯止めをかける有効策が示されなければ、市場の失望感が募ることを覚悟せねばならない。