米国発の世界的な金融危機は、さらに深刻の度を増している。地球を一周する形で株安が進行し、ニューヨーク市場のダウ工業株30種平均が1万ドルを割り込んだ。東京市場でも7日には日経平均が一時、1万円を切ってしまった。
信用不安に加え、実体経済の悪化が急速に進んでいることが、世界同時株安の背景にある。
米国の金融安定化法はどうにか成立した。70兆円を超す不良債権の買い取り枠を設け、金融機関から不良債権を切り離し、財務内容の劣化を食い止めることが狙いだ。
しかし、不良債権の買い取り価格がどうなるのかや、証券化によって権利関係が複雑になっている金融商品の処理といった問題もあって、その実効性には疑問が付きまとう。
金融機関の破綻(はたん)は欧州でも拡大し、銀行の国有化や救済合併、預金の全額保護などの措置が相次いでいる。英仏独伊の4カ国は緊急首脳会談を開いたものの、銀行の救済基金については合意できなかった。
欧州は共通通貨のユーロを導入し、金融面での統合が行われた。にもかかわらず、財政は別で、個別の金融機関に生じた問題は各国が独自に対策をとる仕組みになっている。
こうした枠組みのままで、この危機を乗り切ることができるのか。そんな疑問も膨らみ、不安心理が増幅している。
危機の連鎖によって引き起こされている信用収縮を食い止めるには、銀行などの金融機関に公的資金を注入し、十分な自己資本を保持できるようにすべきだ。また、需要の減少にも歯止めをかける必要がある。
日本でもバブル崩壊後、金融危機が起こった。その際、米欧から、できる施策はなんでも行うよう求められ、大規模な財政出動のほか、日銀による株式買い取りや金融の量的緩和などの措置までとった。今度は、米欧諸国がとりうる限りの施策を実施する番だ。
株安は世界経済の縮小に対する警告でもあり、日本経済への影響の拡大が懸念される。
同時に円高が進んでいるが、株式市場ではマイナスの材料と受け止められている。しかし、世界的に活動している企業は、為替の変動が実質的な影響を及ぼさないように工夫している。
また、急騰していた原油など資源価格が下落しているうえ、円高となれば国内からの所得流出が減り、内需に向かう分が増える。物価の上昇圧力を抑える効果もある。日本の経済に対するプラスの面も大きく、過度に悲観すべきではない。
週末には先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が開かれる。金融や経済が危機に見舞われた際に活動すべき組織や機関は、その役割をきちんと果たすべきで、それができるのか、注目したい。
毎日新聞 2008年10月8日 東京朝刊