話題

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

ノーベル賞:物理学賞に日本人3氏 南部陽一郎氏と小林誠・益川敏英氏

 ◇素粒子で先駆理論

 スウェーデン王立科学アカデミーは7日、08年のノーベル物理学賞を、米シカゴ大の南部陽一郎名誉教授(87)=米国籍▽高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)の小林誠名誉教授(64)▽京都産業大理学部の益川敏英教授(68)の日本人3人に授与すると発表した。素粒子の理論で先駆的な役割を果たしたことが評価された。日本人のノーベル賞受賞は、02年の小柴昌俊・東京大特別栄誉教授(物理学賞)、田中耕一・島津製作所フェロー(化学賞)以来6年ぶりで、3氏を含め受賞者は計15人。日本人が同じ分野の賞を共同受賞するのは初めて。

 南部氏の受賞理由は、物質の最小単位である素粒子の「自発的対称性の破れの発見」。小林、益川両氏は「CP対称性の破れの起源発見」。素粒子の世界に存在する「破れ」と呼ばれる非対称性の理論化に取り組んだ3氏の業績は、理論物理学の発展に大きく貢献、初めての日本人3人同時受賞につながった。

 左右対称の図形は、左右を入れ替えても形が同じ。物理法則でも、一つの状態をほかの状態に変えても不変であるとされる。しかし、超電導現象などでは、対称性が失われることがある。

 南部氏は60年代にこの「対称性の破れ」を初めて素粒子の世界に導入した。これにより、物質の質量の存在が合理的に説明できるようになり、素粒子の基本理論となっている「標準理論」の基礎となった。

 一方、粒子と反粒子(質量が粒子と同じで電荷が反対)の数が全く同じだと、この世界は光だけになる。そこで、小林、益川両氏は粒子と反粒子の性質にあるわずかな違いを示す「CP対称性の破れ」を理論的に説明するため、当時3種類しか存在が確認されていなかった素粒子クォークが3世代6種類以上あることが必要だとする「6元クォーク模型」を考案。両氏の名字をアルファベット順に並べて「小林・益川理論」と呼ばれた。

 小林・益川理論は当時の理論物理学の常識を覆す理論だったが、その予言通り、77年までに4、5番目のクォークの存在が実証され、95年には6番目のトップクォークの存在が確定、理論の正しさが証明された。

 南部氏は戦後まもなく渡米した頭脳流出組で、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹、朝永振一郎の両氏(いずれも故人)に続く日本の素粒子論研究者の第2世代。益川、小林両氏は名古屋大理学部の先輩、後輩で、湯川博士の協力研究者だった故坂田昌一博士門下で素粒子論を学んだ。

 授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれ、賞金1000万スウェーデン・クローナ(約1億4000万円)は南部氏に半分、残りの半分を小林、益川両氏に贈る。

==============

 ■人物略歴

 ◇南部陽一郎氏(なんぶ・よういちろう)

 1921年東京出身。42年に東京帝国大(現東京大)理学部物理学科を卒業。52年、朝永振一郎氏(故人、65年ノーベル物理学賞)の推薦で米プリンストン高等研究所に留学。58年にシカゴ大教授、70年に米国籍を取得した。91年からシカゴ大名誉教授。大阪市立大名誉教授でもある。78年に文化勲章を受章。

==============

 ■人物略歴

 ◇小林誠氏(こばやし・まこと)

 1944年、名古屋市出身。名古屋大大学院理学研究科博士課程修了。72年京大助手となり、79年に文部省高エネルギー物理学研究所(現高エネルギー加速器研究機構)助教授、85年教授。現在同機構名誉教授。茨城県つくば市在住。

==============

 ■人物略歴

 ◇益川敏英氏(ますかわ・としひで)

 1940年、名古屋市出身。名古屋大理学部卒業、名古屋大大学院修了。70年京大理学部助手。80年、京大基礎物理学研究所教授に就任し、97年同所長。03年4月から京都産業大理学部教授。京大名誉教授。京都市在住。

毎日新聞 2008年10月8日 東京朝刊

検索:

話題 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報