【マニラ矢野純一】フィリピン大統領府直轄の密輸取締隊が、硬貨17トンを韓国に不正に輸出しようとした業者を摘発した。押収された硬貨の大半は銅とニッケルを含む1ペソ(約2・3円)硬貨で、溶かして再利用するのが目的とみられる。硬貨の密輸は氷山の一角とみられ、国内では1ペソ硬貨の不足も懸念されている。
フィリピンでは一定額以上の国内通貨の持ち出しが禁じられている。取締隊によると、今年8月にマニラ港の倉庫で押収した硬貨は総額約330万ペソ(約760万円)分。韓国・釜山の金属再処理業者に密輸される直前だった。硬貨はブローカーが、少額硬貨を賭け金に使う庶民相手の違法賭博業者などから集めたものだという。
ニッケルの国際価格は1トン当たり約2万ドル、銅が約7000ドルで、ここ数年価格が高騰しており、1ペソ硬貨の価値は額面の倍以上の約6円になる。今年2月にも中国へ硬貨を密輸しようとした業者が摘発されており、取締隊のダニー・マギラ次官補は「大量の硬貨が密輸出されていると思うが、四方が海で抜け道が多く、わいろが横行しており摘発が追いつかない」と話す。
通貨を発行するフィリピン中央銀行は「流通している1ペソ硬貨が不足しており、密輸の増加も原因の一つ」と話し、貯金箱などに眠っている1ペソ硬貨を積極的に使うよう国民に呼びかけている。
毎日新聞 2008年10月6日 19時52分(最終更新 10月6日 19時58分)