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2008-09-30 22:24:40

例えばどんな?

テーマ:サークルGLOWの活動
そう、例えば。
現代物のファンタジーを書こうという話になったとする。

まずはメールで大まかな話しをする。

「どんな話が良い?」
「登場人物は?」
「敵がいたりする?」

それからチャットやメッセで集まって詰める。

「オープニングはこんな文章でどうだろう?」
「中盤からのプロットは……」

それらをそれぞれ持ち帰り、まとめて後日照らし合わせる。
そして執筆者が執筆。
分割するのならどこからどこまでを担当するのかをまた話し合う。

こんな風にして話しをしていくのが良いかなぁと思ってます。
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2008-09-30 10:17:45

基礎から学ぶ小説の描き方10~12

テーマ:小説論
○第十回・作品を作る3

 さて、今回は作品の解説を通してプロットや起承転結、そして物語の書き方につなげていきましょう。
 それはともかくとして、自作を解説するのは結構恥ずかしかったりします。

 作品:ガレージを印刷されていると今回の話が分かりやすくなります。
 では参りましょう。
 作品を作る1では、どういう風にして作品を考え付き、物語にしていくかを書いていきました。

 では、物語を考え付いたあとにどういう風にプロットとして起こしていくかなんですが、これは人により千差万別なんですね。
 きちんとした決まりなんてないんです。

 ですからこれは私の方法だと限定してお伝えします。
 この通りにやっても、おそらく上手く書けはしないでしょう。
 自分にあったやり方を見つけてください。

 プロットの最初として、まず物語の流れを決めます。

起・・・作りかけのフィギュアを暗がりで彼女が見る。それを死体だと勘違いする。
承・・・逃げる彼女。追いかける彼。回想で彼との思い出がよみがえる。
転・・・彼を信じ、問いただそうとする彼女。
結・・・実は彼は彼女のフィギュアを作っていた。

 これが1でやったことです。
 ではこれを作品にするために何が必要か。
 細かい設定を決めます。
 まず、彼氏の設定。
 普段ならいろいろと考えますが、掌編なので

・中学生くらい
・隠れオタク
・やさしい
・彼女のことが大好き

 くらいにしておきます。
 もしも短編や長編で、さらに細かい設定が必要な場合は決めますが、それも作品の内容によりけりです。
 不必要な分まで作るのは作品にとってあまり良いことだとは、私は考えません。

 次に彼女の設定。

・中学生くらい
・彼のことが好き
・強気

 基本的にキャラクターの設定は二人ならばそれが相対するように作っておくと物語に起伏が生まれます。
 この場合、彼が優しいという設定なので、彼女は強気とします。
 また、彼が彼女を大好きなので、彼女は彼を「好き」でとどめておきます。
 ただし、彼女は彼のことを信じている。

 次に、起承転結のつながりを深めていきます。
 この話では、まず一つに彼女が彼を信じていることを読者に知らせなければなりません。
 それと、いかに彼女が怖い思いをしているかを表現しなくてはなりません。
 その二つがまず重要です。

 指輪が約束とつながっていると1で書きましたが、その部分が最初の項にあたります。
 ここでは、彼が彼女に指輪を渡します。それで将来まで君を守ると(陳腐ですが)約束させます。
 もう一つ考えるべきなのはリアリティです。
 ここで銀細工の指輪なんか出してはオタクっぽくもないし中学生っぽくもありません。
 だからビーズ細工の指輪にしました。

 また、指輪と彼がつながっているため、最後の場面で彼を信じるか疑うかを決断するとき、指輪に触らせることで物理的に彼女の決心を促します。

 もう一つの、彼女がいかに怖い思いをしているか、ですが、これはB級ホラーのお約束を使います。
 彼女が隠れると、または何か行動しようとすると後ろから「ばぁっ」と出てくる。
 何しろ枚数がないので、ここは予定調和に任せ、読者の想像力で補ってもらう必要があります。


 では次に決めた設定を細かくしていく作業に入ります。
 が、次回へと続きます。


○第十一回・作品を作る4

 では、いよいよプロットの詰めです。
 ここまで、起承転結を考え、細かい設定を決めてきました。
 設定ではキーアイテムや作品の核になる出来事を詳しく決めていきます。

 その後、それらのアイテムや表現をどんな方向性で組み合わせていくかを考えます。

 また起承転結を出します。
 私の作品作りは、全て物語の構成が中心になります。
 まず物語の流れがあり、それに沿ったキャラクターや必要なアイテムが出てくる。
 やはり中にはキャラクター中心の方もあるでしょうから、その辺りは作り方が変わってきますね。

起・・・作りかけのフィギュアを暗がりで彼女が見る。それを死体だと勘違いする。
承・・・逃げる彼女。追いかける彼。回想で彼との思い出がよみがえる。
転・・・彼を信じ、問いただそうとする彼女。
結・・・実は彼は彼女のフィギュアを作っていた。

 まず人称と視点を考えます。
 これは「作品を作る」が終わった後に紹介しますが、この場合一人称か三人称彼女視点のどちらかしか選べません。
 そうでないと物語が成立しません。
 私は三人称を選びました。
 一人称だと恐怖感を感情として伝えやすいんですが、その分、表現が単調になりやすいし、なにより枚数が少ない中では語数が制限され、十分に表現できないと考えたからです。

 次に起承転結の起を考えます。
 物語の始まりです。印象的な第一行が期待されます。
 私はそこに「ほんの悪戯のつもりだった。」と入れました。
 私の場合、いつも最初の一行を決めます。これで物語の方向が全て決定されると考えています。
 そして、この場面での話の流れを詳細に決定します。
 まず、彼女が彼氏の家に着く。そこでびっくりさせようとガレージを覗く。
 しかしそこは暗く、彼氏の顔も上手く見えない。
 よくよく覗いてみると、血のついたバラバラ死体が。
 ここで重要なのは、あえて「血」だとか「死体」という言葉を使わないことですね。
 それにより、含みを持たせておきます。

 次に承ですが、彼女は逃げ出します。
 しかし、わけの分からないままに逃げているので、いったん振り返ります。
 そこに彼氏がいる。彼女はびっくりします。そしてまた逃げ出す。一瞬だけ見た彼氏の顔は、思い込みをしている彼女にとっては恐怖の対象でしかありません。
 そこで回想へと導かれるわけです。
 彼氏との幸せな日々。その中でももっとも嬉しかったことがよみがえります。
 彼が指輪をプレゼントし、彼女に約束をします。
 どんな約束をするかで迷いましたが、ここは陳腐に「君を守るから」で十分でしょう。ようは彼氏が彼女のことをどんなに大切に思っているかが伝わればいいんです。

 転に移ります。
 彼氏との思い出がよみがえったことで、彼女はもう一度確かめようとします。
 指先に触れる指輪がその決意を呼び起こしてくれます。
 ガレージの前に立つ彼女、そこでもう一度彼氏が登場し、彼女に問います。
 見たのか、と。

 結です。
 彼女は見たといいます。彼は不安になり、自分のことをどう思っているのか問いかけます。
 この時点まで、フィギュアのことを悟らせてはいけません。
 あくまで殺人、そして恐怖の対象でないといけないのです。
 引っ張るだけ引っ張っておいて、彼女の一言があります。
 「アキバ系」
 キーワードにもなっていますが、これをここに出すことで、読者をびっくりさせ、またホッとさせます。
 なぜなら、読者は「指輪」「アキバ系」がキーワードになっていることを知っているからです。
 いつでるかいつでるかと思わせておいて、ここで出す。
 キーワードの使い方は重要です。
 そして大団円。彼女は彼を許し、誤解も解けます。
 しかし、ここでもう一捻りして、「フィギュアは壊しておくが」と争いの種を残すことで、余韻を引き立て、物語をもう一段広がらせることができます。

 ここまでがプロットです。
 これを基にして、どういった言葉を使うか、どういった表現で読者を引っ張っていくかを実際に書きながら考えていきます。
 掌編は実際には2000字しかありませんが、それを書くためにはその何倍ものことを考えなくてはなりません。
 小説とは偶然の産物ではなく、あくまで計算された言葉のパズルなのです。

 これで、作品を作る、と題したプロット作成から物語を各段階までの説明を終えます。


○第十二回・人称と視点の違い

 今回は、人称と視点について書いていこうと思います。

 意外と勘違いしている方が多いみたいですけど、「人称」と「視点」は別物です。

 まずは人称から

1人称・・・登場人物、もしくは語り部の独白によって地の文が語られる。地の文とは小説において会話文や引用による説明以外の部分のこと。

2人称・・・行動している人物以外の第三者が、行動している人物について地の文を語る形式。極めて特殊なので、普通は使用されない。使用する場合はなんらかの隠し球が用意されていると勘ぐられる。

3人称・・・独白でない文章で地の文が語られる。語り部は登場人物内の誰でもないため「神の視点」とも言われる。



 つまり、小説の地の文の書き方には三通りしかないということです。

 変わって、視点とはどういうことでしょう。

視点・・・物語が登場人物の誰かを中心にして表現されること。

 例えば1人称だと、語り部の視点で話が進んでいく。2人称だと語り部が見ている誰かの視点で物語が進んでいきます。

 上記二つの視点はなんらかの叙述トリックが使われない限り、この視点で決まりです。

 ただし、3人称は神の視点と言われるだけあって、視点が固定されないことが少なくありません。
 主要登場人物が5人いたら、それぞれの視点が行ったり来たりするのが普通です。そのため起伏に富んだ表現が可能であり、初心者が3人称を進められるのはそのためです。

 そう、初心者は3人称を使ってください。2人称などもってのほか。1人称も自信がない限り使わないほうが無難です。
 なぜなら、1人称は表現が単純になりやすい。キャラクターにこだわるあまり、単純な言葉を使いがちです。また、3人称のように語り部がなんでも知っているわけではないので、小説内の出来事について語れる部分と語れない部分ができてしまう。

 3人称にはそれがありません。
 神の視点であるため、語り部はどんな情報でも表現することができます。主人公が知らないことでも、地の文では語ることができるのです。

 陳腐な表現ですが「しかし、そのことが後にあんな出来事を引き起こすとは、まだ誰も気づいていなかった」なんて表現は、3人称でしかできません。(昔語り式の一人称を除く)

 制限が少ない分、3人称は書きやすい。それに、小説の書き方を修行しようというのなら、より表現の幅が広いものを選ぶべきです。


 話が長くなりましたが、次に人称と視点の組み合わせについて話しましょう。
 基本形は最初に言った通りです。

1人称多視点・・・一人称を登場人物ごとに書き分けることで、同じ場面についても違った解釈があるように読者に知らせることができます。感情表現としても一人称は効果的なので、使う場面は多々あるように思えます。

2人称多視点・・・表現としてあるにはあるんですが、作例を私は知りません。というよりも、わざわざそんなややこしいことをする必要性が私には感じられません。読者を混乱させるだけです。

 3人称については多視点で書かれることが普通です。特殊な例はほとんどないはずです。もしあったとしても、その作品固有のもので、応用は利かないと思われます。

 いろいろと話してきましたが、人称は作品内で一つだとは限りません。3人称と1人称が交互に描かれる作品もあります。
 しかし、始めからそんな特殊な作品は作らないほうが無難だと、私は思います。

 次回は批評について書こうと思います。

2008-09-29 22:35:27

基礎から学ぶ小説の描き方7〜9

テーマ:小説論
○第七回・起承転結は物語の基礎

 ストーリーというのは、単純であればあるほど書きやすく、複雑なほど書きにくいものです。
 当たり前?
 では、あなたはどんな話を書いていますか?

 昨今のメディアでは、複雑な話がもてはやされます。
 何重にも謎を内包し、キャラクターにも謎を持たせ、ストーリーが二転三転し、さらにはストーリーの箱の中にもう一つ二つサブストーリーを用意する。
 確かに、複雑な話の方が読んでいてドキドキしますし、面白いのも分かります。

 ですが、それはそれ。

 まだ小説を書き始めて間もないのに、いきなり複雑な話を書いても消化しきれず、物語が破綻するのは目に見えています。
 連載のときの話と一緒です。

 反論がある方は、こう考えてください。
 囲碁を始めた人間が、ルールも知らずにプロに挑戦することができると思いますか?
 サッカー始めたばかりで、いきなり試合に出ることができますか?
 小説は一見書きやすそうですが、実際は単純なストーリーでも複雑に文章が絡み合うため、頭を悩ませます。

 ちょっと話がそれますが、ご勘弁を。
 第六回までに話した内容は、初心者の方、もしくは書き始めて間もない方にとって厳しいことばかりでした。
 特にライトノベルを書かれている方にとっては、反発されるようなことばかり書いています。
 ですが、それはライトノベルを嫌っているからではありません。
 私も数年前まではライトノベルの賞に応募をしていたことがあります。
 ですが、ライトノベルというのは最も読者に近い媒体だと思います。
 つまり、私でも書けると思いやすい。
 これがもし純文学や歴史小説だったら、敷居が高いと感じるでしょう。
 その理由はライトノベルが漫画的で、若年層の知識の範囲内で描かれているからです。
 だからと言って、誰でも書けるとは限らない。
 趣味に走り易い媒体だからこそ、自分を律し、きちんと基礎を抑えた作品作りを心がけないといけないのです。
 例えば千人が応募する新人賞で、一次予選を通るのは五十人程度です。
 残りの九百五十人が一次予選落ち……つまり基礎がなっていないと判断されているのです。
 その理由の大半は、今まで私が言ってきたような作品が多いのでしょう。
 舞台設定にばかり凝り、自分勝手なキャラクターの一人称で、変にかっこつけて複雑すぎる話を書く。
 その結果、伏線も回収できない、舞台ばかりが大きくて実際に動く場所は狭い、妙にうるさいキャラクターが自分勝手に活躍する作品が出来上がります。
 それでは作品とは呼べません。
 厳しいことばかり書いているのは、それだけ基礎がおろそかになっている作品が多いということです。
 もし本当に上達したいと思っているのなら、もしくはプロになりたいと思っているのならば、まずは基礎を大事にしましょう。
 興味を維持するのも大事です。
 ですが、それにかまけてばかりでは、同じところを行ったり来たりしているだけです。
 自分を見直し、より洗練された作品を書けるように心がける。
 それが読者に対する礼儀でもあり、自分に対する責任でもあります。
 だからこそ、この記事は「基礎から学ぶ小説の書き方」なのです。


 では、ストーリーの基礎とは何か。
 ここでは起承転結がそれに当たると答えます。

起・・・物語の始まり、導入部。問題はここで提起されることが多い
承・・・起を受けて物語が発展する部分。全行程内でこの部分が最も文章量が多くなる
転・・・承までで培われたものが転じる、もしくは発展して物語のクライマックスとなる
結・・・物語の結部。この時点で物語が過不足なく消化されなければならない。

 と、こんな風に書いても分かりにくいと思います。
 そこで、ミステリに換算してみましょう。

起・・・殺人事件が起こる
承・・・探偵が捜査を始め、犯人の目星をつけていく
転・・・犯人と思っていた人物が殺され、意外な犯人が浮かび上がっていく
結・・・探偵が犯人のトリックを暴く

 また、恋愛ものにしてみると、

起・・・男が女の子と出会う
承・・・反発しあいながらも二人は惹かれていく
転・・・彼の浮気が発覚? しかしそれは誤解だった
結・・・二人が付き合うことになる

 ベタ過ぎる点はご勘弁ください。
 分かりやすさで選んでいますので。

 実に単純そうに見えますよね。
 でも、実際にこの条件で書くとなると意外に大変です。
 これは省略に省略を重ねた結果のストーリーなので、書き始めるとこれに様々なエピソードが加わります。
 小説はエピソードとエピソードのつながりでできていますから。

 ではどうやるのかというと、これはストーリーごとで変わってくるのですね。
 小説とは実にマニュアル的に説明するのが難しい媒体です。
 でも、練習法などを説明することはできます。
 ストーリーについては、まず単純なものから選んでいき、できる限り枚数が少なく、自分が理解しやすいように書き上げましょう。
 まず、起承転結の因果関係を理解するのです。
 どう書いたらどことつながるのか、それが理解できれば、自然に話は破綻無く進んでいきます。

 では次からは実際に一つのストーリーを書き上げるまでを考えていきましょう。


○第八回・作品を作る1

 プロットだの起承転結だの言われても、いまいちピンと来ないと思います。
 そこで、今回からはテーマが与えられ、それに沿ってプロットを作成し、起承転結で物語を考えるところまでをやっていこうと思います。
 つまり、実際に私がテーマから物語を考えたところを書くわけです。

 皆さんは電撃掌編王という掌編賞をご存知ですか?
 先だって、私は友人から勧められてこの賞に応募しました。
 テーマは「約束」、キーワードとして「指輪」「アキバ系」の文字を文章内に入れなければならない。
 文字数制限は2000字でした。

 さて、皆さんならこのテーマ、キーワードからどんな作品が思いつきます?
 単純に考えると、アキバ系の彼氏と彼女の指輪を使った約束による物語が考えられます。

起・・・彼が彼女に告白する
承・・・アキバ系キモイと罵られる
転・・・彼女が危ないところを彼が一生懸命に助けようとする
結・・・いつまでも君を守るからと指輪を渡し、約束する

 ここでは、おそらく彼の健気な態度をいかに書くかが問題になってくるでしょう。
 でも、単純に考えて、キモイと罵っていた彼女がそんなに簡単に彼を好きになるでしょうか。
 あえて悲劇としてもいいでしょうけど、ここではハッピーエンドの方が掌編としては読後感が良く、分かりやすいと思います。

 私はこの考えを捨てました。
 あまりに単純すぎるし、その割りに無理がある。
 2000字で収めるにはどうしても表現を単純化せざるを得ない。
 そうなると、どうしても読者の共感は得られそうにありませんでした。

 さて、そこで私は考えを一変させます。
 約束という言葉を逆に考えてみたんです。
 約束の反対側には「裏切り」という言葉が浮かびます。

 じゃあ、物語の振り幅を大きくして、一旦裏切られたと思ったけど実は裏切られていなかった、という物語を考えてみました。
 最初の考えと同じで、指輪が約束のキーアイテムになっているのは変わりません。
 その他に思いつかなかったのです。
 で、裏切りとアキバ系をくっつけようと思いました。
 ということは、アキバ系であることが裏切りである状態が考えられます。
 それでは、彼がアキバ形であることを隠していたとして、それがバレたら裏切りにならないでしょうか。

 なるほど、これでアキバ系と裏テーマの「裏切り」がくっつきました。
 表テーマの「約束」と指輪がくっつきました。
 では、これが相反する状況になればいいのです。

 今までの話でいくと、まず彼女が彼の趣向を発見するところから始める必要があります。
 何しろ2000字しかありませんから、展開は早くしなければなりません。
 私はアキバ系からフィギュアを連想しました。
 そうだ、彼がフィギュアをこっそり作っていて、それを彼女が見るというのはどうだろう。
 どうせなら、フルスケールの等身大フィギュアにして……とそこでその等身大フィギュアを彼女の人形とすることを思いつきました。
 これで裏切りの後の「実は裏切られていない」がくっつきそうな気がします。

 等身大の実物をモデルにしたフィギュア。
 作りかけ……まるでバラバラ死体だな。
 そう思ったとき、私の中で全ての物語がつながりました。
 小説の製作には往々にして連想や偶然の考えがつき物です。

起・・・作りかけのフィギュアを暗がりで彼女が見る。それを死体だと勘違いする。
承・・・逃げる彼女。追いかける彼。回想で彼との思い出がよみがえる。
転・・・彼を信じ、問いただそうとする彼女。
結・・・実は彼は彼女のフィギュアを作っていた。

 2000字の少なさでもジェットコースター的に物語が展開でき、回想をはさむことでメリハリもつく。
 一方的に彼女だけでなく、回想を書くことで彼の人物にも触れることができる。

 こうして考えた作品を、次回に掲載します。


○第九回・作品を作る2

作品タイトル:ガレージ

 ほんの悪戯のつもりだった。
 誠が家のガレージに入るのに気づいて、こっそり追いかけた。彼は洋子に気づくことなく、奥に消えていった。
 しばらく様子を見る。誠は五分経っても出てこなかった。中で工具をいじる音がする。おかしい。彼に工具を扱う趣味などあっただろうか。
「何を作ってるんだろう?」
 ガレージに近づく。シャッターは半分以上が下ろされていて、這うようにしないと中を見ることはできなかった。
 音を立てないように、ゆっくりと膝をつく。中を窺うが、裸電球では姿を探すのも一苦労だ。
「いた」
 小さく呟く。盗み見る彼の顔はいつになく鋭かった。何をやっているんだろう、と洋子は見る角度を変えた。
 と、今度は洋子の顔が強張る。
 誠の手には赤い液体がついていた。加えて、彼の視線の先、その暗がりには切り離された腕が一本、真っ赤に染まって転がっている。
「いやっ」
 小さく声がでた。急いで口を塞ぎ、その場から立ち去ろうとする。だが、足がすくんで動けなかった。
「誰かいるのかっ」
 温厚な彼の大声に、洋子は二度驚き、そのおかげで足が動き出す。何度もつまずき、倒れるようになりながらも、洋子は家の角を曲がった。
  聞き耳を立てると、ガラガラと音がする。誠が出てきたのだろうか。そこまでは確認できなかった。角から顔を出そうとするが、その度に腰の辺りが浮いたよう に感じる。目は血走り、歯は上手く噛み合わない。吐きそうになるのをやっとで抑えて、決意を込めてガレージの方を見た。
「洋子、見たのか」
 角に誠が立っていた。
 今にもつかみかかりそうに手を伸ばしている。
「ぎゃあああ」
 目を綴じ合わせ、声の限りに叫んだ。
「おい、ちょ……」
 誠が何かを言う前に、つかまる前に。洋子は背を向けて走り出す。どこをどう曲がったのか、どこまで走ったのか。とにかく一刻も早く逃げたかった。
 誠が、誠が……。洋子はその言葉ばかりを考えている。
 そうあれは三日前のことだ。洋子は彼に呼び出され、校舎裏にいた。


 洋子は壁を背にし、体を揺すっていた。デートの約束かな、それとも何か大事な告白があるのかな、呼び出しの内容を推理していた。
「お待たせ」
 気がつくと、誠が正面にいた。
「あ、うん。いや、待ってないよ。えへへ」
 心の中を覗かれたような気がして、恥ずかしかった。
「それで、用事ってなに?」
 誠を促す。彼は真っ赤になって俯き、小さな箱を差し出した。
「これ?」
「開けてみて」
 中にはビーズ細工の指輪が入っていた。赤い花を模した、小さなかわいい指輪だった。
「くれるの?」
 何度も首を縦に振る。
「本物の指輪は買えなかったけど」
 誠は俯いたままで話を続ける。
「絶対に洋子のこと守って、いつか本物をあげるからっ」
 しばらく、洋子は言葉の意味が良く分からず、呆然としていた。誠があまりの恥ずかしさに走って行った後、ようやくその意味に気づいた。
 本物=婚約指輪。誠はそのつもりで言ったのだろう。嬉しくて、洋子は何度も指輪を眺めた。
 その、誠が。ガレージで血塗れになっていた。何があったのだろう。洋子はもう訳も分からずに、ただ走るためだけに走り、思考が費えてしまうまで、走りぬいた。


 気がつくと、誠の家の前にいた。先ほどの光景を思い出し、貧血で倒れそうだった。
 が、思い直して洋子はガレージに向かう。
「誠が殺人なんて、ありえない」
 今、洋子の目には彼を信じるという信念が溢れていた。限界まで体力を使ったので、頭が冷えたのだ。
「絶対に、ありえない」
 決意が固くなるにつれ、足運びが速くなる。
 ガレージには、誰もいなかった。だが、シャッターは開いていた。
 そして、洋子は見たのだ。
「洋子、見たね」
 いつの間にか誠が後ろにいた。
「うん」
 洋子は淡々と応える。
「仕方なかったんだ」
「言い訳は聞きたくない」
「衝動が抑え切れなかったんだ」
「嘘よ、計画的に決まってる」
「だけど、いつでも洋子の側にいたかったから」
「……」
 洋子は指輪に触れた。ビーズの固い感触が洋子に冷静さを取り戻してくれた。
 誠が洋子に触れる。手の平が冷や汗で濡れていた。意を決して彼が問いかける。
「僕のこと、どう思ってるの」
 相反する二つの答えが浮かんだ。だが、最終的に洋子の心に残ったのは、優しい誠の笑顔だった。指輪が、そう気づかせてくれた。
「アキバ系……」
 視線の先には、フルスケールで作成された洋子のフィギュアが安置されていた。服を塗る段階で失敗したのだろう、はめ込まれた腕の部分にはまだ赤いペンキが残っていた。
 誠が心配そうに見ている。だが洋子に別れるつもりはなかった。まだ約束は生きているのだ。
 とりあえずフィギュアは壊しておくが。


==============================================
次回はこの作品を詳細に説明します。


2008-09-29 15:42:13

基礎から学ぶ小説の描き方4~6

テーマ:小説論
○第四回・プロットを作る(前半)

 いつになったら小説の書き方を教えてくれるんだ。
 そんな声が聞こえてきそうです。
 一ヶ月が経ちました。
 さて皆さん、その間に一本以上の作品を仕上げたでしょうか?
 仕上げていると信じています。

 さて、いよいよ小説の書き方の基礎です。

 ですが、いったい何を書くというんです?

 皆さん、この一ヶ月の間に仕上げた作品を思い出してください。
 どんな風にして書き始めましたか?

 最初に何を考えましたか?
 キャラクター? 世界観? 物語の結末? テーマ?
 様々なことを考えたと思います。
 そして、ある程度考えたところで書き始めたのでしょう。

 書き始めはどうしました?
 どんな言葉から書き始めるのか。
 人物評? 風景の描写? 会話文?
 いろいろと悩んだと思います。


 そして、悩みながら書いて、ふと読み返したとき、その内容が始めと終わりで一貫していないことはありませんか?



 それは、プロットができていないからです。
 プロットとは以下のような意味を持ちます。

「プロットは英単語の動詞 Plot のことであり、書く、描画する、点を打つ、などの意味を持つ。また、名詞では構想、脚本、描画などの意味を持ち、一定の意味や意図を書き出したものを plot と呼ぶなど、様々な意味で使用されている。」(ウィキペディア・PLOTの項より引用)

 ここでは名詞のプロットです。
 映画や漫画で言うコンテに該当します。
 なぜか、小説を書こうという人はプロットを構想せずにいきなり書き始める人が多いんです。
 理由ははっきりしませんが、以前にも言った「日本語を安易に考えている」結果なんでしょう。
 日本語は誰でも知っている。簡単に書けるから、道具も何も要らないから、まず書き始めてみよう。
 そういった理由が見え隠れします。

 そして、そういった作品ほど一貫性がなく、意味の分からないものに仕上がってしまいます。
 結果、面白くない、話が理解できない、といった感想につながるのです。
 分かっているのは本人だけ。
 それは小説を書く上で最悪の状況です。

 小説を書くことは、よく家を建てることに例えられます。
 家を建てるにはどんな手順を踏むのでしょうか。
 建築家でなくても、想像はつくでしょう。

1.まず、土地を購入します。
2.どんな風に家を作るのか、設計図を起こします。
3.設計図に従って、最初に土台を作ります。
4.土台の上に、家を建てます。

 かなり省略していますが、以上のようになるはずです。
 土地がなければ家は建ちません。
 設計図がなければ、しっかりとした家はできません。
 土台が泣ければ、家は倒れてしまいます。
 そうしてようやく、家は建つのです。

 これを小説に変換するとこうなります。

1.まずその作品が自分のものであるかを確認します。
2.プロットを作成し、どんな作品にするのかを考えます。
3.プロットを基にして、必要な資料調べや取材を行います。
4.作品を書き始めます。

 1.は盗作でないかを確認するということです。
 知らず知らずの内に、誰かの作品からアイデアや文章を剽窃していないか、それを確認します。
 盗作については枚挙に暇がありませんので、後日お話しすることにします。

 2.が今回の主題ですが、この説明は後に回します。

 3.のように、資料が必要なものであれば面倒くさがらずに調べましょう。
 その際、ネットの情報は出典が定かではないのでできるだけ使わない方が無難です。
 辞書か百科事典、もしくは専門書を使用します。
 取材に関しては後日、詳しく話しますが、基本的に相手のあることなので失礼のない様にしましょう。
 足場のしっかりしていない作品は、いかにも作り物臭く見えるばかりか、下手をすると誰かに迷惑をかけてしまうものになりかねません。

 4.こうしてようやく作品を書き始めることができます。
 実に長い道のりに思えますが、実際に長い道のりです。
 よく構想十年、執筆三年、などというコピーを見かけますが、構想というのはここでいう1.から3.に該当します。執筆だけで三年もかかるのでしたら、プロットや取材にそれだけの時間がかかるのもうなずけますね。

 プロットの作り方については後半に譲ります。

○第五回・プロットを作る(後編)

 プロットとは何かというと、別に決まった形式があるわけではありません。
 ようは、作品が最初から最後まで、一貫した思想と形式で、矛盾なく作成されれば良いわけですから、究極の話、文章として残さなくても問題はないのです。

 でも、それでは「基礎から学ぶ小説の書き方」になりませんから、最低限必要なことを書いておきましょう。

1.起承転結
2.人称と視点
3.文体
4.登場人物
5.舞台

 これくらいは決めておいた方がいいんじゃないでしょうか。
 番号は順不同です。

 1.はストーリーです。
 しかし、映画の予告編のようなあらすじを書いても意味がないので、きちんと物語の始まりから終わりまでを書きましょう。
 起承転結については後日、話すことになります。
 その際に必要なのは、あらすじの中で首尾一貫して話が流れているかということです。
 独りよがりになっていないか、物語に破綻はないか、謎は全て解けているか、伏線は回収できているか。
 チェックすることはたくさんあります。
 できればこの段階で誰かに見てもらうのも手です。

 あらすじだから、いい評価がもらえない。そう考える人がいます。

 それは違います。
 あらすじでさえ面白くなければ中身は読む価値がありません。
 つまり話の流れがすでに面白いと思えないからです。
 その時点でストーリーを検討する必要があります。
 本を読む人はその大半が裏表紙のあらすじ、もしくは冒頭の数行を読んで購入を決定します。
 それが面白くないということは、手にとってさえもらえないということです。


 2.人称と視点についてもいずれ一つの項を設けますが、簡単に言うと三人称で書くか、一人称で書くかを決めておく、ということです。
 なぜか初心者は一人称を書きたがります。
 理由としてはその方が登場人物に感情移入できるから、というものが多いようです。

 ですが、その認識は間違いです。
 そういった作品は、大抵が主人公のくだらない冗談や破綻した文章で埋められ、小説というよりも日記のような印象を受けます。
 一人称だから、主人公の独白だから好きに書いていいのではありません。
 一人称では一言一言が主人公のキャラクター付けに関わります。それだけ主人公を理解されやすいのは確かです。
 ですが、その分、他のキャラクターの印象が薄くなります。
 さらに、一人称は主人公の知っている情報しか文章にし得ないので、情報が限定されます。
 主観的になりやすいということです。
 ということは、読者に話を理解してもらうために、三人称以上の苦労が必要になります。

 始めの内は三人称で書いてください。
 冷静に考えてみると、一人称で書かなければならないストーリーとは、意外に限られているものです。

 安易に一人称を使う前に、本当にその必要があるのか、効果が上がるのかを自問しましょう。

 3.文体ですが、始めの内は気にしないでください。
 無理に文体を変えようとすると、自分本来の作風が失われてしまいます。
 ぎこちない文体で書かれた作品は、読みにくくてしょうがありません。
 これについても、いずれ話すことがあるでしょう。

 4.登場人物は単純に一人の人間を知るようにして考えていく必要があります。
 その人物がどんな生い立ちで、どんな性格なのか。
 なぜこの物語に関わるようになったのか。
 その人物はこの物語に対してどのようなスタンスを取っているのか。

 誕生日や好物まで決めろとは言いません。むしろそういった裏設定などは考えない方がいいです。

 余計な情報まで決めると、どうしてもそれを文章中に出したくなります。
 その結果、無駄な文章が増えてしまう。
 必要と思われる情報を、必要な分だけ考える。
 それが小説を書くときの基本的なスタンスです。


 5.舞台を事細かに、もしくは不必要に大きく考える人がいます。
 特にライトノベル系のファンタジー作品を書く人にそういった傾向が強いようです。
 神々の系譜やその舞台の歴史を掘り下げ、魔法のシステムや種族の特徴を考える。
 はっきり言いましょう。
 無駄です。止めましょう。
 厳密にそういったものを決定しても、初心者の作品にはまったく役に立ちません。
 余計な世界観に費やす時間があれば、一つの作品をもっと突き詰めることをお勧めします。
 もし大きな世界観の中で物語を作りたいのなら、最初から事細かに考えるのではなく、大きな枠で話を考えましょう。
 つまり、物語に密接に関わる部分だけを決定し、残りは不明のままにしておくということです。
 作品に使わない設定を作っても、登場人物の裏設定と同じで、文章に迷いが出るだけです。
 それよりも、不明な部分を残しておくことで次回につなげてみてはいかがですか。
 この部分は、次回の話につながります。

 このようにプロットを決めることで、文章を書く際の迷いや、ストーリーの破綻から抜け出すことができます。
 何もきちんとした書類にしなくても、メモ書きやアウトラインプロセッサでの作成でも十分です。
 自分の物語の指針になるものをきちんと持っておきましょう。



○第六回・連載?

 初心者が自分のWEB上で連載を始めることの弊害は、いくつも考えられます。

1.作品を作る引き出しが増えない
2.一つの作品を長く書くため、変に文体が固定されてしまう。
3.小説の基礎的な練習に目が行かない
4.自分だけが楽しむものになりがちなため、成長が見られない
5.作品をコントロールできなくなる

 単純に五つの点を挙げてみました。
 1.の作品を作る引き出しが増えない、はすぐに思いつくはずです。様々な作品を書く機会がそれだけ失われているのですから、当然です。
 小説の上達は、いかに様々なことに挑戦したかにかかっています。
 一つの作品を連載として書くことで、確かにその作品は上達するでしょう。
 しかし、それ以外の作品が書けなくなるのです。
 上手い作家ほど、どんなテーマ、どんな条件を与えられてもそつなくこなします。
 一つの作品しか書けない人間は、表現力に乏しいのです。

 2.の感覚は少しつかみにくいかもしれません。
 文体とは、作品に固有の雰囲気と言ったらいいでしょうか。長く書いている人間ほど、作品に独特の雰囲気が表れてくるものです。
 しかし、その文体とは常に固定ではなく、作品によって微妙に変化し、物語を彩ります。
 文体によって、作品全体の成功が決められると言っても過言ではないでしょう。
 一つの作品ばかりを書いている人間は、その文体で固定されてしまいます。
 初心者ならば特にそうです。
 そうすると、1.の時と同じく、自分が成長する機会を失ってしまうことになります。

 3.先ほども言いましたが、小説の上達はいかに様々なことに挑戦したかにかかっています。
 短編や長編のみならず、ファンタジーから恋愛、SFなど、自分の引き出しを増やすためにもたくさんのことに挑戦しないといけません。
 一つの作品を書き続けることで、表現や文体が固定されてしまうばかりでなく、アイデアを出したり整理したりするなど、一つの作品を最初から最後まで作り上げる基礎的な練習ができなくなります。
 どんなことをすれば練習になるのかはまた後日話します。

 4.連載を書くのは楽しいです。しかし、独りよがりになりやすいのも確かです。
 なぜなら、連載とは読者の反応が良かった場合に、同様の設定を使用して作品を作り上げることを言います。
 おそらくWEB上で連載をしている方はそういった反応などはあまり気にしないでやっていることでしょう。
 もしおだてられているのをそのまま受け取ってやっているのでしたら、もう一度自分の作品を客観的に見直してください。
 初心者の作品がいきなりものすごく面白くて、しかも連載して欲しいというほど設定がしっかりしていて、毎回それなりの質のものを提供できるなんてことは、確実にありません。
 見直して全て問題なし、どの回も面白いし設定にも破綻がない。
 そんな風に結論付けられた方は、自分の作品を客観的に見られない証拠です。
 改めて読書をして、自分の作品と比べてみましょう。そういう時こそ、本の書き写しが有効です。
 自分の作品をしっかりと見つめなおしてください。

 5.連載は続けていくほど、初期の設定が活かせなくなり、苦しくなってくるものです。
 プロはそれを物語の調整でかわしますが、初心者は設定を増やすことで片付けようとします。
 その結果、次第に作品がコントロールできなくなり、物語の破綻を生むことになりかねません。
 もともと連載というシステムはライトノベルに多いものです。プロのライトノベル作家の連載作品をよく読んでください。
 物語が重なっていくにつれて、謎が深まり、また解かれていきます。また、キャラクターが増えたり、設定が増えたように感じます。

 しかし、それは錯覚です。

 前後の巻を読んでいくと、すでに予定されたキャラクターであったり、謎が深まったり、解かれたりする事も当初から予定済みの場合が多いのです。設定が増えたと感じている点は解釈の視点を変えたり、キャラクターごとの主観が述べられていたりするのです。

 作品を上手く書けない人ほど、設定でそれをごまかそうとします。
 実はこうだった、なんてのは逃げの口上でしかありません。
 前回に触れた舞台設定もその一端を担っています。

 世界観を考えるのは楽しいです。それは分かります。
 ですが、そればかりに捉われて上手く設定を使いきれない上に、設定に引きずられて肝心の中身がおろそかなものがほとんどです。
 私もいろいろとWEB上の連載作品を読んできましたが、印象に残っている作品は数えるほどもありません。

 そして、WEB上の連載は完結しないことが多いのです。
 完結しない作品を読むことほど、苦痛はありません。
 それだけの責任が果たせなければ、やらなければいいのです。
 連載は魅力的なシステムですが、高度な技術を必要とし、なおかつモチベーションも高くなければなりません。

 短編や長編、それらが上手くコントロールでき、文章力も十分で設定をきちんと作成する構成力、取材力が備わった場合に、やればいいでしょう。
 一つの作品を完結できない人間に、連載はできません。
 自分の成長の機会を潰さないよう、初めの内は連載ものを作ることは控えた方が良いと思います。

2008-09-28 10:13:03

基礎から学ぶ小説の描き方1〜3

テーマ:小説論
○第一回・小説を書くために一番大事なこと

 この文章を読んでいる方は、今から小説を書き始める、もしくは小説を書き始めて間もない方が中心だと思います。

 これからどんな風にして小説を書いていったらいいのか見当もつかない。
 もっと上手く書くにはどうしたらいいんだろう。

 すでに小説賞に投稿している方の中には「一次予選にも通らないけどどうしてだろう」と悩んでいる方もいるでしょう。

 最初にはっきり言いますと、一次予選にも通らない人は以下のような所が悪いのです。



1.原稿用紙の使い方が間違っている(小説を書くルールに従っていない)
2.文章が下手である(日本語のルールに従っていない)
3.物語が理解不能(物語作成のルールに従っていない)
4.話が面白くない(アイデアの整理、見せ方が稚拙である)

 どんなことでも正直に答えてくれる友人に、自分の小説を見せましょう。
 一次予選に通らない方は上のどれかに該当しているはずです。
 もちろん、上の四つをクリアしていても、一次予選を通らないことはあります。

 なぜか。

 自分の作品より面白いものを書く人がいるからです。

 私がなぜ上のようなことを言ったかというと、一次予選を通るというラインこそが「小説の基礎」ができていると判断できるところだからです。
 ですから、私がこれから話すのも、その四つに従って話していくことになります。


 でも、慌てないでください。


 あなたは、絵を描きますか?
 描かない人に「描いて」というと、必ずこういった答えが返ってきます。

「下手だから描けないよ」

 なぜでしょう?
 それは「描きなれていない」からです。
 ぜひ聞いてみてください。まず間違いなくそうです。

 絵は、何枚も描いていればそれなりに上手くなります。
 それはコツをつかんでくるからです。
 絵の具の使い方、筆の使い方、紙の感触、画面の広さ、それらに慣れることで、下手なりにちゃんとした絵が描けるようになります。

 小説も同じです。
 自分の小説が下手だと思う人、もしくはそう言われた人は「書き慣れていない」のです。

 まずは書きましょう。

 ハウツー本を見るのは後からでもできます。
 小説という舞台に、文字の表現の面白さに、自分の想像力の広さに、他人に物語を読んでもらうことの快感に浸ってください。

 技法やアイデアの斬新さ、そんなものは後からでも付いてきます。
 小説を書く上でもっとも大事なのはこの二つです。


1.長文を書くことに慣れること
2.小説の楽しさを知ること


 1.から行きましょう。
 私たちは普段、長文を書き慣れていません。

 一般に短編といわれる小説でも原稿用紙30枚程度。
 文字数にして約12000字です。

 読書感想文やレポートでもそれほどの長文を、自分の言葉で書くことはありません。
 長文を書くには根気が要ります。
 一気に書き上げず、途中でやめ、また再開する。前に書いていた内容から逸脱しないで書き続ける。

 もし、まだ作品にできるアイデアを持たない人、それだけ長い作品に作り上げられない人は、ぜひ自分の好きな小説を書き写してください。
 文庫本だったら10ページくらいが原稿用紙30枚に相当するはずです。

 どうです? かなり辛いでしょう?
 写すだけでも辛いんですから、言葉を選び、考え、苦しみながら長文を書くのはさらに辛いんです。


 だからこそ、長文を書くことに慣れてください。

 それができなければ、小説の一本すら書き上げることはできません。


 2.ですが、1.につながっています。
 長文を書くことは辛い。
 苦しい作業はすぐに飽きてしまいます。
 上達し、技法を知ることでさらに辛さは増していきます。

 ですから、まずは小説を書く楽しさを知ってください。

 技術や、体裁なんて良いんです。
 文字を書くこと、文章を綴ること、物語を紡ぐこと、キャラクターたちが動き回ること、それらの楽しさを知ってください。

 私はこういう作品を書きたいんだ。
 みんなにこういうことを知ってもらいたい。
 私の考えた面白いことを広めたい。

 出発点は何でも構いません。
 楽しさを知り、その初心をしっかりと胸に刻み込んでください。
 辛いとき、苦しいとき、その想いがあなたを助けてくれます。
 そして、それでこそ、あなたの小説は輝くのです。

 ぜひ、この一ヶ月の間に、一本以上の小説を書き上げてください。


○第二回・小説は怖いんです

 読者の方の中には、漫画が描けないから小説を書こうと思った、という方がいませんか?
 それは大きな間違いです。
 絵を描かないから簡単だと思うのは、日本語をなめているか、会話文以外の小説の文章を単なる説明文だとしか思っていないからです。


 絵は直接的です。
 視覚という人間にとって最も大きな感覚に訴えかけるものです。
 それだけにごまかしも利かないし、労力もかかるのは分かります。


 しかし、小説は人間の五感のどれにも訴えかけません。
 目は文章を読むだけです。
 耳にはページをめくる音しか聞こえません。
 鼻には紙の香りがしますが、それは内容とは関係ありません。
 舌に味を感じるわけでもありません。
 当然、触れているのは紙の束です。

 文章を読んだだけでは、人間なにも感じません。
 小説を読んで、読者が感動を覚えるのは、人間に想像力があるからです。

 小説は五感のどれにも直接触れず、読まれた文章が頭の中でイメージされて、初めて意味をなします。
 その点が、漫画とは異なっています。

 漫画では綺麗な花を描けば誰もが綺麗だと思ってくれます。
 綺麗な花を描くことは大変難しいことですけどね。
 小説では、綺麗な花を描くためにはその花の特徴、何が綺麗なのかをまず自分が理解し、言葉に変換して表現しなければなりません。
 そして例え表現できたとしても、それによって読者がイメージする花は千差万別です。
 千人の読者がいれば、それだけの花が生まれてしまうのです。

 それだけの読者の、異なったイメージを、物語の終わりまで導いていかなければならないのです。

 こうした話をしても、まだ小説の方が簡単だと思いますか?

 日本語だったら誰でも使えるから簡単だ、と思うのは間違いです。
 会話だったら、話がずれても補足したり、修正しながら話せば通じます。
 日記や掲示板の文章だったら多少意味の取り違えがあっても大意に問題はありません。
 あったとしてもそんなに気にはされないでしょう。

 ですが、小説は提示されるものです。

 修正もできませんし、補足もできません。
 一度提出したら最後、どんな読まれ方をしようと文句は言えません。
 だからこそ、間違いのない文章、間違いのない表現が必要となるのです。

 読者全てに理解され、かつ面白いと思わせる文章。

 私たち小説家に求められているのはこれです。
 いくら話が良くても、文章が稚拙ではイメージが湧きません。
 物語が理解されません。
 面白さが伝わりません。

 あなたがイメージしている作品の全てを、文字に変換して読者に提示する。
 この難しさを知ってください。
 この怖さを知ってください。

 小説は楽しく、しかし怖いのです。
 文章を書いていて、背筋が寒くなったなら、あなたもその怖さを知った証拠です。


○第三回・書く分量の倍は読もう


 前回、あんなことを話したのには理由があります。
 日本が一億総小説家時代に入って久しくなります。
 今や読む人間よりも書く人間の方が多いといった逆転現象さえ起きています(多少大げさですが)。

 もちろん、実際にプロとして活躍できる人間は少数で、その大半はネット上で作品を発表しているようです。
 まあ、私もその例に漏れませんが。

 そのせいか、文章がメチャクチャなのが多い。
 ルールも何もあったもんじゃない。

 私がこの記事で使っている書き方。
 これがまさにその書き方なんです。

 ネット上で掲載することを前提としているからか、一文が短いし、改行も早い。
 改行後の一字下げは見栄えが悪くなるからしていないし、行間を異様に空けるのも厭わない。

 悪いとは言いません。
 ネットにはネットの文化があるんですから。
 ですが、私はひとこと言わせてもらいます。
「それは小説の体をなしていない」


 縦書きでないといけないとか、イラストを使うなとか、そういうことはどうでも良いんです。

 小説の書き方のルールは、意味があるからそうなっているんです。
 それを無視して書くことは、その意味を理解していないということになる。
 つまり、日本語の特色も、他人に対する読み易さなども無視していることになる。

 それでは、小説を人に読ませる資格はありません。




 少しきついことを言いました。
 ですが、この現象はけっこう目に余ります。
 なぜこの現象が起きているかというと、ネット上で読者は長文を読まないからです。

 ネットの文章は基本的に一コンテンツ一画面が基本です。
 読者はスクロールすることを嫌います。
 同時に、モニター上で読むことが基本であるため、長文は目に入りにくい。
 自然に一文が短く、分かりやすい文章になります。
 また、改行が多くなり、行間も広くなりがちです。
 一般的に、文字間は詰まっている方が、行間は広い方が読みやすいとされています。



 読む方も書く方もネット上でしか活動しないから、同じような文章形態になってしまう。
 紙の本を読んでも、改行のない作品はそれだけで読みにくいと判断してしまう。
 長文は読みにくい、悪い文章だと勘違いしてしまうんです。
 はっきり言います。
 長い文章でもきちんとした作法で書かれたものは読みやすく、頭に入りやすい。



 上達のコツは、小説を読むことです。

 プロの書いた作品は、この上ないお手本です。
 ただ読むだけではいけません。
 その小説がどういった筋で進んでいるか、どういったルールで書かれているか、小説を分解するように読んでいってください。

 よく言われることですが、作品を書き写すのも始めの内はよい練習になります。
 作文のルール、日本語のルールを覚えるためにも役に立つ練習です。


 前にも言った通り、書くことは非常に重要です。
 ですが、それ以上に読むことも重要です。
 他人の作品に触れなければ、独り善がりになりやすいし、新しい表現にも触れられません。

 以前、私は本を読まずに書いてばかりだった時期がありました。
 そのせいで作品はどんどんイビツになり、他人に理解されないようになりました。
 これではいけないと、さすがに感じました。
 再び本を読み始めたことで新しい表現に触れ、元の感覚を取り戻すことができました。
 リハビリにはだいぶ時間が必要でしたけど。

 読む本も、ライトノベルばかりではいけませんよ。
 小説を書こうという人間ならば、純文学も読んでおくべきです。
 日本語の表現者として最高峰にいる彼らの作品を読むことで、表現が豊かになっていきます。
 日本の作品ばかりでなく、海外の作品も読みましょう。
 海外の作品は発想が様々で、勉強になります。

 よほどの長編を仕上げるのでなければ、根を詰めて書いていくのは危険です。
 読書2:1執筆 の割合を最低でも維持しましょう。
 厳密じゃなくても、作品を一本仕上げたら小説を二冊は読む、で十分です。
 意識して本を読むことで、自分の中の小説感をリフレッシュしましょう。



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