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劣化ウラン弾:国連が初報告 ボスニア「がん死亡率4倍」

2001年1月にサラエボ近郊の兵器工場跡地で発見された劣化ウラン弾。95年のNATO軍によるボスニア空爆では劣化ウラン弾が使用された=AP
2001年1月にサラエボ近郊の兵器工場跡地で発見された劣化ウラン弾。95年のNATO軍によるボスニア空爆では劣化ウラン弾が使用された=AP

 【ニューヨーク小倉孝保】国連の潘基文(バンギムン)事務総長が、「人体への悪影響」も指摘される劣化ウラン弾について、「使用の影響」に関する初めての報告をまとめたことが2日、分かった。19カ国と国連機関の意見を列記する形で、国連本部として現状認識を初めてまとめた。近く国連総会に提出する。毎日新聞が入手した報告によると「がんの死亡率が通常の4倍になった」「使用は国際人道法違反」との厳しい意見があった。総会での規制議論のたたき台になるとみられる。

 報告は「劣化ウラン弾使用の影響」と題し、昨年末の国連総会で劣化ウラン弾の影響調査を求める決議が採択されたことを受け、国連軍縮局が作成した。国連の求めに応じ意見を提出したのは日本、ドイツ、イタリア、ボスニア・ヘルツェゴビナなどと、国際原子力機関(IAEA)、国連環境計画(UNEP)、世界保健機関(WHO)など。

 米国など安保理常任理事国やインド、パキスタンなどの核保有国、イラク、クウェートなど被害が疑われる国の意見はなかった。

 報告によると、ボスニアは、ボスニア紛争中の94年、米軍が劣化ウラン弾を使用した地域で住民を調査した結果、他の地域の住民に比べ「がんの死亡率が4倍になった」とし「調査が必要」と主張した。アルゼンチンは「使用一時中止を」、カタールは「禁止すべきだ」としたほか、セルビアは「使用は国際人道法違反」と批判した。

 一方、ドイツやスペインなど旧ユーゴスラビア連邦の平和維持に派兵した国は「帰還兵への調査の結果、健康への影響は認められない」と主張。日本は国際機関を通じた調査を注意深く見守るとの姿勢を示した。

 また、IAEAは、放置された劣化ウラン弾に住民が直接触れないよう規制すべきだと指摘。WHOは、報告件数が少なく結論が出せないとしたうえで、放置された劣化ウラン弾に子どもが触れて被ばくする危険に言及し、対策を求めている。

 【ことば】劣化ウラン弾

 原子炉や核兵器に使うため天然ウランを濃縮した後に残る核廃棄物「劣化ウラン」を弾頭に備えた弾丸。比重が大きく貫通する力が強いため、主に戦車や装甲車を攻撃する際に使われる。着弾時に微粒子が拡散し、がんや白血病などの健康被害が生じる▽燃焼時にも微粒子が飛散し、大気や土壌が汚染される--とも指摘される。非政府組織によると、少なくとも米英仏など20カ国が保有する。

毎日新聞 2008年10月3日 2時30分(最終更新 10月3日 2時30分)

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