成績表:父母らに通知の大学増 国立・有名私大に広がる

 学生の成績表を父母らに送る大学が増えている。一部の私大では慣例化していたが、近年、早稲田大などの有名私大や国立大にも広がり、北海道大は今春入学の学生から通知を始めることにした。「成績を知ってもらうことで留年が防げる」「学資を出す人への説明責任がある」などが主な理由だが、大学内部には「学生を子ども扱いしていいのか」との懐疑的な意見もある。【山本紀子】

 「12学部でアンケートを取ったが、表立った反対はなかった。『もう大人なのに』との異論はごく一部だった」。今春、全学部生の成績表を送付することを決めた北海道大の脇田稔副学長はそう話す。

 北大の場合、狙いは「学生のメンタルヘルス対策」という。欠席や留年を経て心身に不調をきたす学生もいることから、履修状況や成績を父母らに伝え、危機意識の共有を図るのだという。

 国立大では、東北大が06年度から工学部など3学部で通知を始め、04年度から一部で導入した横浜国立大は現在、3学部で実施している。埼玉大と滋賀大も昨年度から全学部で始めた。一部学部で通知する神戸大は「国立大学法人になり、保護者へのサービス向上に努める必要がある」と説明している。

 一方、私立では、慶応大が50年以上前から通知しているが、明治大(97年)や法政大(99年)のように近年、通知を決めた大学も少なくない。

 「わが子の成績を教えてほしい、という保護者の要望が増えてきた。大学と保護者が連絡を密にすることで、きめ細かい学生指導ができる」。4年前から成績送付を始めた早稲田大文学部の担当者は必要性を強調する。

 ただ「自学自習」をモットーに学生の自立を重んじる学風だけに、一部の教授からは「早稲田らしくない」と反対の声も上がったという。早稲田大では政治経済学部や理工学部も全学生の成績を通知し、人間科学部や法学部は成績不振の学生の親に送っている。

 法政大の担当者は「以前は、卒業式に参列したらわが子が見当たらず、親が初めて留年を知るなんてこともあった。成績通知後はそんなことはない」と笑う。

 ある私立大職員は「親に言われないと勉強しない学生もいる。履修科目の相談など学生がすべき問い合わせを親がしてくるケースもある。学生も保護者も以前とは変わった」と漏らした。

■主な大学の成績通知状況

北海道大 ○

東北大  △

宇都宮大 ○

筑波大  ×

埼玉大  ○

東京大  ×

一橋大  ×

千葉大  △

横浜国立大△

名古屋大 ×

和歌山大 ○

京都大  ×

大阪大  ×

三重大  △

神戸大  △

九州大 検討中

早稲田大 △

慶応大  ○

法政大  ○

上智大  ○

(○は全学部、△は一部の学部で成績通知。×は実施していない大学)

毎日新聞 2008年10月7日 15時00分

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