【記者手帳】不安をあおる韓国政府
金融市場の取引開始直前、姜万洙(カン・マンス)企画財政部長官、全光宇(チョン・グァンウ)金融委員長、金鍾昶(キム・ジョンチャン)金融監督院長は、ソウル明洞の銀行会館に市中銀行の銀行長(頭取)を集めた。この日の会合は「軍紀引き締め」に似たムードだったという。
そこで姜長官は「銀行は海外資産を売って、ドルを準備すべきだ」と述べ、モラルハザードが認められる銀行には「罰則金利を適用する」とまで語った。
同日の会合は金融市場の不安を解消し、金庫の中に隠れているドルを市場に吐き出させるのが狙いだった。しかし、実際には政府の意図に反し、逆効果を生んだ。ただでさえデリケートな状況の外国為替市場には悪材料となり、為替レートをさらに下落させ、「ブラックマンデー」にさらに追い討ちをかけた。
市中銀行の外国為替ディーラーは「市場ではドル資金難がそこまで深刻なのか、政府にはドルがないから銀行が自分で何とかしろという意味ではないか、という見方が広がった」と指摘し、会合の内容が為替相場をさらに混乱させたとみる市場のムードを伝えた。政府が注文を付ければ付けるほど、市場は不安に陥るとの見方だ。
1997年にアジア通貨危機を経験し、韓国の外国為替市場は小さな悪材料にも敏感に反応するようになり、為替相場が動揺する。危機に対処する方法は少なくとも11年前の通貨危機よりも慎重でましなものでなければならないが、同日の会合はそうではなかった。実態を隠し、官僚主導で乗り切ろうという11年前の習性そのものだった。
韓国政府が100億ドル(約1兆200億円)を放出し、外貨準備高が徐々に減る一方、官僚主導の金融システムだった過去のように政府が銀行を指図するのを見た瞬間、二度と見たくないホラー映画を見たような不安に包まれた。10年たっても何も変わっていない政府を信じ、頼ってもよいのかという思いがよぎった。
姜京希(カン・ギョンヒ)記者(経済部)
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