事故調検討会再開「信じられない」―小松秀樹氏
「こんな時に開催するとは信じられない。今の政治状況でやること自体、むちゃだ」―。医療事故調査機関の設立に向けた厚生労働省の検討会再開について、臨床医の立場から医療崩壊の危機を訴えてきた小松秀樹氏(虎の門病院泌尿器科部長)が主張している。衆院解散・総選挙など政局の先行きが不透明な中、「検討会としてのゴールは決まっていない」や、厚労省案に反対する団体からヒアリングをして抑え込もうとしているとの指摘もある。これまでの会合のように、厚労省が敷いたレールに委員が乗ってしまうだけの “儀式”となってしまわないだろうか。(熊田梨恵)
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死因究明制度「内容に問題」―医療系学会の意見 厚労省は10月3日、医療事故調査機関の創設について検討する「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大学東京大学院教授)の第14回会合を9日の午後に省内で開催すると発表した。
同検討会の開催は3月以来、7か月ぶりとなる。この間、厚労省は4月に第三次試案を発表し、6月にはそれを基にした「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」を公表して、パブリックコメントを募集していた。厚労省案には医療界からの根強い反発があったものの、このまま大綱案が法案化されるものと誰もが思った。しかし、その一方で、同じ6月に民主党から医師法21条を削除するなどの内容を盛り込んだ、厚労省案の対案となる通称「患者支援法案」が発表された。
こうした中、超党派の議員立法によって臨時国会で法制化しようとする動きも見られたが、9月末の福田康夫首相(当時)の辞任以来、政局の先行きが不透明になっている。
「なぜこのタイミングで会合を開催するのか」―。衆院解散・総選挙など政局の見通しが立たない中、医療現場からはいぶかる声が上がっている。
厚労省によると、今回の会合では第三次試案や大綱案の概要説明が行われるほか、寄せられたパブリックコメントが提出される予定だ。 担当者は、「事務局としては政局などの動きは関係ない。パブリックコメントなど報告できていないことがあったので開催する。会議は1回の予定だが、今後委員から意見を聞き、どうしていくか検討したい」と話している。民主党案を議論のための資料として提示することはないという。
■「検討会のゴールはない」
一方、民主党案を中心になってまとめた足立信也参院議員は、「厚労省は与党などにも根回しをして案をまとめているのだから、それを覆すような動きは取れないだろう」と解説。
今回の会合開催については、「良い方向で解釈すれば、法案大綱案について『福島県立大野病院事件』の判決などとの整合性を持たせるための検討をするとも考えられる。しかし、委員もいて予算も付いているのだから『継続している』というポーズを取らざるを得ないとの見方もできる。特に検討会としてのゴールなどは決めていないだろう。また、厚労省は(医療事故被害者の)原告団に対し、予定通り進まなかったことについて『申し訳ない』という思いがあり、彼らの『早く医療事故安全調査委員会を創設してほしい』という意向に配慮して、会合開催の形を見せるという考えもあるかもしれない」と話す。
自らの今後の動きについては、現在は政局の先行きが不透明なために民主党案を立法化する動きは取れないとして、「民主党案やわたしの考えを伝えていくため、都道府県や郡市の医師会、学会などの講演会で発表していきたい」と話している。
■反対団体の抑え込みか
また、ある国会議員は「とりあえず検討会が止まっていないことを見せるための『アリバイ』づくりでは。検討会は11月末までに4回開催される予定で、もう日程も決まっている。病院団体や日本救急医学会、日本麻酔科学会など、厚労省案に反対している団体からのヒアリングが予定されているが、厚労省側は話を聞くだけ聞いて、厚労省案に『大筋賛成』の方向で取りまとめてしまおうとしているのではないか」と解説してみせた。
■「エネルギーの無駄遣い」
小松氏はキャリアブレインの取材に対し、「こんな時に開催するとは信じられない。コストやエネルギーの無駄遣い。政府・与党案と民主党案が出ていて、民主党案についての議論はなされていないし、どちらかというと民主党の方が勝ちそうという話も聞いている。今の政治状況でやること自体、むちゃだ。もう少し状況が落ち着いてから開催するか、民主党案も一緒に検討すべき」と話している。
更新:2008/10/07 19:48 キャリアブレイン
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