このコラムでは、私たちの身近にある、さまざまな話題を経済という視点から取り上げ、将来の方向性をみなさんと一緒に議論していきたいと思います。
最初は「マイカーを持つべきか」です。まず、マイカー保有のコストと効用を比べてみます。
コストとして、マイカー保有にはまず、買った時に自動車取得税と重量税、自賠責保険料がかかります。さらに維持費として自動車税が年間7200~11万1000円かかり、車検、駐車場代とガソリン代もかかります。車の減価償却代と合わせると、年間20万円以上が必要です。
効用は、行動の自由度が広がることです。自分の空間がもてる、知らない世界に行ける、デートの時に自分の魅力が高まるなど、趣味的、精神的な効用もあります。また、製造、販売、運送などを含めた自動車関連産業が国内で500万人以上の雇用を生んでいます。
内閣府が発表した08年3月末での自家用車の世帯普及率は85%で、普及率は04年3月末の86%をピークに、横ばいから下落傾向となっています。背景には、ネットの普及とエコ志向の高まりがあります。ネットで買い物でき、簡単にレンタカーやタクシー送迎を申し込めるようになりました。趣味的効用はネットの方が安価です。加えて環境への配慮から、同じ移動なら、はるかに二酸化炭素(CO2)排出量の少ない公共交通、自転車、徒歩などを選ぶ人が増えています。
私は、公共交通のあまりない地方や、高齢者・子どもなどの社会的弱者がいる家庭を除き、保有について慎重に考えるべきだと思います。レンタカーや自転車などの併用で、車にかかるコストを減らし、家計の圧迫を防ぎます。一方、車が必要な家庭への、重い税負担は緩和すべきでしょう。
※勝間さんの提言いかがでしょう? 賛成・反対問わず、自由なご意見をお寄せください。皆さんの投稿のうち10月13日(月)までに掲載した中から、勝間さんが「ベストアンサー」を選びます。
10月から毎日新聞と毎日jpで始まる「勝間和代のクロストーク」。 勝間さんに連載の狙いや、読者の皆さんへのメッセージなどを語ってもらった。 【聞き手・塚田健太、まとめ・嶋野雅明】
●「私の意見」が大事●
--連載の狙いを。
例えば年金問題なら、今の制度を継続できないのは明らか。継続したらこういう状況になる、しないとしたらこういう選択肢がある。どれを選ぶかという議論をしたいです。あと公教育の問題もある。日本の公教育の対GDP比率は先進国で最低水準に近い。家庭の負担がすごく重くなり、少子化や、格差社会の固定化を招く。だったら税金が上がっても公教育につぎこむという選択をするのか、あるいはどこの部分を削って教育を強化するか、あるいはこのままでいいのか 。
新聞だけでは、ディスカッションはできませんが、ウェブを使うことで、問題提起したあとで意見を募り、次の回までの2週間の間に、たまった投稿を眺めて皆でもう一度話を持ち帰る--といった循環ができればいい。それを通じて、ふだん新聞しか見ない人はもっとウェブを見てほしいし、逆にウェブしか見ない人はもっと新聞を見てほしい。新聞とウェブの「クロス」も狙いたいと思っています。
--議論を通じて新たな解決のフレームワーク(枠組み)を見つけていくということですね。どんな意見を期待するのでしょう。
◆実際に読者としてなぜその考えを持つのか、根拠を持つのか、「素人マーケター」と私は呼んでいるのですが、第三者がそう思うからでなく自分自身の意見を聞きたい。「私は、こういう家族構成で、こういう仕事で、こういう地域だとこのように必要だ」と。政策というものは一人一人の個人のためでなければいけないが、どんなに統計を見てもわからない。草の根の人たちが何を考えて何を望んでいるかという集約の場にしたいです。
--そうした発想はブログを運営されて生まれてきたのでしょうか?
◆私は男女共同参画問題を中心に、11年間「ムギ畑」というコミュニティ(ワーキングマザーとその予備軍のための無料会員制サイト)を主宰していて、そこでの知見を政府の審議会や専門委員会で発言したり、意見書も提出してきました。その意味で男女共同参画に関しては、ここ10年でずいぶん進んできた。その「力」の一部を私たちが担えていたのかなと思っています。同じように意見を集約して「声を上げる」結果を、実際に「資源配分」する官僚や政治家に届けるというのが大事だと思っています。
--個人個人で思っているだけでは政策決定者に届かない。議論の場を設けて積み上げるのが必要ですね。
◆そうです。その際には「私はこう思う」だけでなく、フレームワークを設定したり、費用対効果に落としこむ作業が必要だと思います。一通り議論が終わったときには私もまとめのコメントを入れたい。問題提起した翌週の金曜日に「毎日jp」で掲載するほか、新聞本紙でも状況を説明したい。