世界の株価が週明けから大幅に下落した。欧州では対応策をめぐって足並みの乱れが生じている。金融危機を乗り切るために、各国はアジアを含めて政策協調のたがを締め直す必要がありそうだ。
米国の緊急経済安定化法成立を受けて注目された株価は、まずニューヨーク市場で大幅続落になった。政府による金融機関の不良資産買い取りが順調に進むかどうか、疑問視されたうえ、雇用や消費が悪化し、景気後退が現実味を帯びてきたためだ。
東京市場では日経平均株価が一万五〇〇円台を割り込んで、年初来安値を更新した。アジアや豪州の株価も大幅に下落している。
世界的な株価下落は金融市場が「米国の安定化法では危機克服に不十分」とみている証左ともいえる。いずれ損失引き当てには自己資本の増強が不可欠だが、大統領選を控えた米国では当面、これ以上の公的資金投入が政治的に難しいという事情も背景にある。
欧州では英仏独伊の四カ国首脳が緊急会合を開き、欧州連合(EU)域内の金融機関を監督する組織創設などで合意したものの、サルコジ仏大統領が提案していたEU横断型の銀行救済基金創設は英独の反対で見送られた。
各国の政策協調が進んだEUでさえも、銀行救済となると異論が出てまとまらない理由の一つは、危機に対処する政府の役割について合意形成がないためだ。米国で噴出した「税金で銀行を救済するのか」という国民の反発とも基本的に共通している。
各国の足並みが乱れたままでは、信用不安が浮上した金融機関から資金が逃げる。弱い部分が市場に「狙い撃ち」されるのだ。実際、政府が預金を全額保証したアイルランドの銀行には英国の銀行から逃避資金が殺到している。
日米欧の先進七カ国は近く、財務相・中央銀行総裁会議(G7)を開いて、対応策を協議する。市場に疑心暗鬼が渦巻いて、増資資金はおろか短期資金の出し手も消えた中、政府が何をすべきか、何ができるのか、考え方を整理し共通理解を深めるべきだ。
日本や中国が保有する巨額の外貨準備を活用すべきではないかという議論もある。外貨準備も国民の資産なので、外資救済には異論もあるに違いない。
打撃が少ない日本などアジアの国が知恵を絞る余地はあるだろう。危機をよそ事ととらえず、危機克服に前向きな議論を展開していかねばならない。
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