日本の政府開発援助(ODA)を一体で実施する機関が動き出した。専門家派遣や技術研修など技術協力を担ってきた国際協力機構(JICA)に、旧国際協力銀行(JBIC)の円借款(有償資金協力)部門、外務省の無償資金協力の半分以上を統合した新JICAで、ODA改革の重要な柱だ。
日本のODA予算は90年代後半から削減され、実績も2000年初頭までの世界一が07年には5位に落ちている。その一方で、国際的には、00年の国連総会でミレニアム開発目標が合意されたように、援助の重要性が再認識されている。
そうした中での、新JICAのスタートである。
政府は5月のアフリカ開発会議(TICAD4)や7月の主要国首脳会議などを通じて、貧困削減や温暖化対策などでODAを増やすことを表明した。厳しい財政状況下ではあるが、政府は国際貢献の観点からも、09年度予算編成でODA予算には十分な配慮を払っていくべきだ。新JICAが国際的にも高い評価の活動を展開できるためには、政府公約の履行が欠かせないのだ。
この前提の下で、新JICAは具体的な成果を出さなければならない。
有償、無償、技術協力の3分野を同一機関で実施することは大きな進歩だ。案件ごとに企画立案段階から関係省庁がかかわることはこれまでと変わらないが、実施機関の発言力は格段に大きくなる。
これまでもプロジェクト形成に際しては、JICAやJBICが協力してきた。ただ、所管官庁による縦割りの弊害もあり、本当に必要性の高い案件が取り上げられるとは限らなかった。これからは、有償、無償、技術協力を網羅するそれぞれの地域担当部が総括的に協力していける。
国際的に援助効果が重視されている中で、円借款で施設やインフラを造るだけでは不十分だ。それが活用され、貧困削減などの効果が表れなければならない。人材育成など技術協力や付随事業などへの無償資金協力は効果を高める上で、有効である。
また、ミレニアム開発目標の達成のため、今後、援助が増えるアフリカに目を向けた時、新組織は前向きの取り組みが期待できる。日本の東南アジア援助は経済発展の基礎を築いたと評価されている。この教訓をアフリカで生かすことができれば、大きな貢献ができる。レアメタル開発など民間事業と開発援助の連携にも、積極的に取り組んでいくべきだ。被援助国経済の底上げが実現できれば、日本企業の活動にも役立つ。
これを機に首相、外相らで構成する海外経済協力会議も役割を認識すべきだ。ODAの司令塔という以上、日本の援助の方向付けなどやることは多い。ODA改革は道半ばなのだ。
毎日新聞 2008年10月7日 東京朝刊