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事故米の不正転用問題が国会の論戦でも取り上げられている。
その責任は、事故米と承知で食用に販売した業者にある。そのうえで、業者につけ込む余地を与え、不正を見逃した農政にも、構造的な問題があったと考えざるを得ない。輸入米の現状を調べるとそれが浮かんでくる。
日本は国産米を保護するため、コメの輸入に800%近い高関税をかけている。これを国際的に認めてもらう条件として、毎年一定量を輸入する義務を負った。これが「ミニマムアクセス(最低輸入義務量)」である。
現在の輸入義務量は、国内のコメ生産量の9%程度にあたる年間77万トン。制度が始まった95年度以来、累計で約900万トンを輸入した。
政府は、コメの輸入が国内の相場を押し下げ、あるいは生産調整(減反)を増やすことのないようにする、と閣議で決めた。だから、できるだけ主食用には売らず、みそやせんべいの原料用として売ったり、最貧国への食糧援助に使ったりしている。
とはいえ、原料用、援助用の需要は年間40万〜50万トンくらいしかない。売れずに在庫が129万トンもたまった。倉庫での保管費用が毎年100億円以上もかかるため、農林水産省は在庫減らしを進めてきた。それが不正業者への安易な販売と、甘い検査につながったのではないか。
この夏に大詰めで決裂した世界的な貿易交渉(ドーハ・ラウンド)でも政府は、コメ関税の大幅引き下げを避けるためなら、さらに輸入義務量を増やすのもやむなし、との方針で臨んできた。しかし、原料用の用途拡大に努めたとしても、輸入米をこれ以上利用できるあてはないのだ。
輸出立国の日本は、国際的な貿易ルールを守らなければ生きていけない。一方で、コメの輸入を増やすのは難しいし、国内の農業も守りたい。
このジレンマを解くには、やはり農業の競争力を高める以外になかろう。農政はずっと米作の保護に重点を置いてきたが、それだけでは農業の足腰を弱めジリ貧に陥ってしまう。
コメの国際相場が高騰し、幸い内外価格差はずいぶん縮小している。世界的な食糧不足は今後とも続きそうだ。ここは農政を抜本的に組み直すチャンスではないだろうか。
早ければ来年にも再開される貿易交渉では、コメの関税をできるだけ引き下げて輸入義務量を抑える方針に転換する。同時に、それに見合って生産コストが下がるよう、強い農業へ向けた政策を集中させる。米作を主業とする農家へは所得補償制度を拡充して支援する。そんな戦略である。
事故米問題をきっかけに、与野党は総選挙へ向けて、そうした農業再生の構想を競ってほしい。
政府系の金融機関が今月から大幅に組み替えられ、政府が全額出資する株式会社「日本政策金融公庫」1社にまとめられた。あとは民間会社として数年がかりで独立させる。
この改革は、郵便貯金の民営化と表裏一体の関係にある。郵貯は政府が国民から資金を借りる入り口。それを民営化したのに合わせて、政府が各種の事業へ貸し出す資金の出口である政府系金融機関も整理縮小し、一部を民営化することになった。
これから改革の成果をあげるため、全力で取り組んでほしい。
統合で誕生した日本政策金融公庫は貸出残高が23.8兆円。まだまだスリム化が必要だ。当面は、国民生活金融公庫などの旧3公庫と1銀行の流れをくむ4事業本部制をとり、旧来と同じ役所の縦割りルートで仕事をすることになっている。
これを改善し、各部門を連携・融合させたい。たとえば、農産物を中小企業が加工販売している場合には、公庫の農業部門と商工部門が連携すれば、融資先にとって便利だし効果も高まる。それを一歩進めて、利用者本位のやり方を開拓し、省庁側に政策金融の方法を変えさせていくくらいの気概がほしいところだ。
新公庫が相変わらず天下りの受け皿となったのは容認できない。総裁は民間から迎えたが、副総裁など首脳陣には官僚OBがならんだ。これでは役所の縦割りが持ち込まれたままとなり、顧客本位へ転じる障害になる。天下りは段階的に撤廃すべきだ。
一方、日本政策投資銀行と商工組合中央金庫は株式会社となった。5〜7年後には政府保有株を売却し、完全に民営化する計画だ。
政投銀は、投融資一体型ビジネスに活路を見いだす。政府の信用をバックにした長期融資は時代遅れとなったため、株式投資やハイリスク・ハイリターンの融資を織り交ぜた新タイプの金融を基盤にすることになった。
日本では低リスク・低リターンの融資と、株式による資本調達は盛んだが、その中間の分野が出遅れている。政投銀が進むのはここしかない。将来性のある企業を見つけ出し、新型の金融で大きく育てていく道だ。
うまくいけば高収益が出るが、リスクも多い。経営が悪化すれば、政府株を売るときに約2兆円の国民の資産が目減りしてしまう。未知の分野なので、規模拡大をただ追うのではなく、心してチャレンジしてほしい。
商工中金は、これまでの債券発行による資金調達に加え、一般からも預金を集められるようになるなど、ふつうの銀行へ一層近づいた。中小企業の基盤強化が課題になっているなかで、身近なパートナーとしてどう支援していくのか、実力が問われる。