2008-10-06
秋葉原通り魔事件でトリアージに殺された人がいる
テレビ |
はてなダイアリーでは2008年5月、トリアージを理解しない女子学生を侮蔑する大学講師のブログをきっかけに複数のはてな市民によりトリアージに関する論争が起きた。その一端はここで読める。
一方日本では2008年6月秋葉原路上で7人が殺された事件でトリアージが行われたが、そこではトリアージ自体の危うさがしめされた。即ち、必要もないのトリアージを行ったこと、更にトリアージを行う上で判断ミスにより、本来死ななくてもいい人が、救急隊により殺された可能性がある事がTVにより報道された。
<以下は2008年10月5日フジテレビ「サキヨミ」で放送された内容から>
秋葉原事件では事件発生後、周囲に多くの病院がありながら病院搬送まで長い時間がかったケースがある。息子が死んだXさんは息子(Aさん)が病院につくのになぜ時間がかかったのか疑問の声を上げている。記録によればAさんは実際1時間以上かかっている。番組は事件現場を写したビデオ、専門医、Aさんに現場で付き添った人、この事件でのトリアージ状況に関する救急隊の内部報告書などを紹介し、このケースを調査・報道した。
それによればAさんは負傷し、始め救命隊員により間違って心肺停止と判断され黒タグ(搬送しない)をつけられ、その後赤タグ(急いで搬送)になった。結局病院につくまで1時間以上かかり死亡している。Aさんに付き添った人は負傷直後にはAさんは喋れる状態だった事を述べている。700人の負傷者の出た2005年ロンドンの同時爆弾テロ事件では黒タグは2人だけで、秋葉原の事件では負傷者は17人とずっと少なく、一方受け入れ病院は近辺に30以上と数多くあり、そもそもトリアージの必要はなく、順に搬送すればすむ。であるのにトリアージを行い、かつ最初にタグをつける時に間違いを犯しAさんを死なせた可能性がある。
<番組報道内容から>
- 番組が入手したビデオでは、何人も地面に倒れている人がいる状態で「赤タグいるか?」と救命隊員が大声で探し回っている様子がわかる。
- 倒れたAさんを写すビデオを見て専門医(愛知医科大学高度救命救急センター教授 野口宏氏らしい)がコメント「CPRの人は後と言っている」=CPRとは心肺蘇生の必要でありAさんは心肺停止(CPA)と判断され、搬送は後回しと判断されている。
- 番組がAさんにその場で付き添った人を捜しだし、インタビューするとAさんは最初から返事しており救急隊の黒タグ判断は間違いだった。
- Aさん搬送時の現場写真にはタグの残片がありAさんには搬送時(あるいはその直前まで)黒タグがつけられていたと思われる
- 黒タグをつける基準は歩けない×呼吸停止×脈が取れない、とされている、しかもそれは大災害の場合で周囲に多くの病院がある場合ほとんどつけられる事はない
- 事件発生から時間があまりたっていない場合、まず黒タグはつけないのが世界の常識
- 番組が入手した救急隊内部資料から、この事件では6人が黒タグをつけられ、Aさんは「黒→赤」と記入され、当初黒タグをつけられたが途中で赤タグに変えられたとしている。
- 資料から赤タグ(最も搬送を急がれる)に分類された人でも、実際にはタグがついていないケースが2つあった
- 同じ秋葉原事件の被害者であるBさんは救急車に乗ってからも45分出発しなかったと番組インタビューに答えている。
- 番組は誤ったトリアージで現場が混乱し搬送が遅れたと推測、東京消防庁に質問したが返事はなかった
<伊藤隼也(ジャーナリスト)の番組コメント>
- トリアージは数100人以上の被害者が出るような大規模災害時に行うもので、17人の被害者のこの事件では本来そうすべきものではないのを間違ってやった
- 検証が行われているが内部でやっている、外部の専門家を入れて過ちから学ぶべきだ
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(追記・感想)
トリアージについて漠然と抱いていた疑問が指摘されていて非常に驚いた。黒タグとは搬送しないという処置であり、事実上の死亡宣告であることに大いに疑問を抱く。赤タグ(すぐに搬送)と黄タグ(その次に搬送)の区分だけでもいいのではないのか?今回の事件で問題は3つあると思う。
- こうした規模・条件の事件にもトリアージというのは必要なのか?
- 例えトリアージをするにしても、最も厳粛に考えるべき黒タグの基準が外国に比べ広すぎるのではないか?人の命を救う為ではなく人を殺す(黒タグをつける)ためにトリアージをしているのではないか?
- 現在の基準のトリアージでも、今回実際に判断ミス(診断間違え)、手順ミスが起きている。そんないい加減な状態で、死亡宣告というひどい事をしていいのだろうか?
そしてこうした推測は考えすぎだろうか?
秋葉原通り魔事件では7人が死亡したが内6人には黒タグがついている。それは刺されたから死んだのではなく、黒タグをつけられたから死んだのはないのか?
通り魔事件のように、犯人に特定個人への恨みがない曖昧な殺人動機の場合は、殺傷現場の凄惨さに犯人自身が驚き、犯行が鈍ることをよく聞く。今回秋葉原事件で7人もの多くの死者が出たのは実は犯人の凶悪さにより多くの死者が出たのではなく、浅い傷にも関わらずトリアージの乱用と現場の混乱により、病院に搬送するのを最初から拒否されたことにより死者が増えたのではないのか?
今後他のメディアからの取材によりより詳しく事情が明らかにされ、真相の究明と、トリアージに関する実施の改善を望みたい。
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(追加情報)
私の見方が間違っているのかも?と思い少しネットを調べてみましたが、週刊文春で記事が出ていますね。そして消防庁は黒タグと赤タグのつける基準を明らかにしていないという。やはり今回の事件の開かれたきちんとした検証が必要だと思いました。
- ある内科医のブログから「タグをつける基準は救急隊員の直感なのか?」(http://intmed.exblog.jp/7548242/)
『わたしが、地域の訓練で見たトリアージシステム(タグをつける基準)は、救急隊員の直感によりなされているものであったのだ。隊員のお偉いさんに、「どのようなトリアージ方法を用いてるのですか?方法論を教えてください」と聞いたのだが、小馬鹿にした態度で − 結局、triage tag systemの具体的方法論は聞けなかった。(中略)
東京消防庁は−肝心のタグ基準が明記されてない。どのような場合で、黒なのか、赤なのかなどの判断基準である。METTAGやSTART・・・などがあるわけだが、公表しない理由というのは何なのだろうか?・・・知らしむべからずは・・・批判されても仕方がない。』
内容を記したブログ(http://www.zassi.net/navigator_issue_list.php?id=71)
『現場の救急体制について、メディアではおおむね評価が高かったとされているが、記事によると現場の状況はかなり違っていたようだ。亡くなられた武藤舞さんは、肝臓まで達するほどの深い傷を負いながら、外見上は派手な出血が見られず、意識があったためトリアージにより黄色のタグ(非緊急治療群)が着けられた。現場に遭遇した医師の指示で赤色(最優先治療群)に付け替えられたが、結局残念な結果となってしまったという。(中略)
現場の統制が取れていなかったことやトリアージという選択が正しかったのか、またトリアージ自体の抱える課題などが浮き彫りになった。テレビ等では知ることのできない、もうひとつの現場の姿が伝えられている記事。』
内容を記したブログ(http://www.tsukuru.co.jp/shukanshi_blog/2008/07/post-101.html)
『第二弾の7月31日号は「『秋葉原通り魔』遺族の慟哭『ウチの子はなぜ70分も路上に放置されたのか』」というさらにショッキングな見出しだ。トリアージによって黒タグ(すでに死亡もしくは救命不能)を付けられた藤野和倫さんの母親の話を紹介したものだ。
秋葉原周辺は「病院銀座」と呼ばれるほど病院が多い地域で、適切な救急活動が行われていれば、もっと助かった人がいたのではないか。記事はそう指摘して、今回の事態を「救急崩壊」と呼んでいる。
医学的知識が乏しい私には、この記事の妥当性を判断するのは難しいのだが、少なくともこういう検証がなされるべきだということはわかる。同誌の取材に対して東京消防庁は「現在、事後検証を行っている。結果を公表するか未定」と答えたそうだが、同誌によると「今まで事後検証の結果が公表された事はない」という。』
- 藤野和倫さんに関する記述 ブログ(http://fujiyamama.exblog.jp/9415128/)
『テレビの映像では、「グーパー、グーパー」するのが見えたそうだ。家族は「それが助かるサインだとは思いませんが、この時点で和倫は生きていた。何故黒タグうを付ける必要があったのでしょうか?」と、犯人に対する憤りと共に、やり切れない思いに苦しみ、消防庁に説明を求めた。消防庁の答えは、「規定通りです。」という冷酷な答えのみで、まるでクレイマーのように扱われたそうだ。』
そこまで医療関係者が憎いのでしょうか。
患者が15人以上いればトリアージの基準に該当します。
実際には、先着する救急隊は通常1隊なので、患者が5人でもトリアージせざるを得ません。
救急車が3隊以上来て、さらに指揮隊や支援隊が到着して初めて10人以上のトリアージが可能になる程です。
また、こういった事例は必ず地域メディカルコントロール委員会主催の検証会議にかけられます。そこでは、直接処置に携わっていない専門医も交えて、医学的見地からも詳細な検証がなされます。
・検証が行われているが内部でやっている、外部の専門家を入れて過ちから学ぶべきだ
と言うのも、全く的外れな批判ですね。
それとも、外部の専門家というのは「マスコミ」の事を指すのでしょうか。
現場ではマスコミの人間はゴミのように邪魔者扱いされますからね。
彼らマスコミが現場の人間を逆恨みするのもそんなことが原因かもしれませんね。
近くに病院が30あったと言うのも、どの病院を指して言っているのでしょうか。
個人開業の「〜医院」まで含めているのは明らかです。眼科や耳鼻科や動物病院まで入っているかもしれませんね。
例えば目の前に病院があったとしても、救急に対応できるスタッフと設備がなければ救急隊は搬送できません。
救急隊の仕事は、患者の処置だけでなく、患者の状態にマッチする医療機関の選定というコーディネートが大きなウェイトを占めます。
これだけ沢山の傷病者がいるのに闇雲に近くの病院に運ぶと、医療機関に着いてから処置不能になるケースが出るのは必定。余計な時間がかかってしまいます。
あなたは、倒れて今にも命が危ないときに、眼科でもいいから一番近くの医者に連れて行って欲しいと思いますか?
まあ「トリアージに殺された」という言い方は感心しませんけどね。誰も試行錯誤しながらあれこれいい方法を探してるわけで、こんな言われ方をされては「検証ではなくバッシング」と感じられるかもしれません。後付けであれこれ言うのは楽と弁えた上で検証を行っていくべきでしょう。
大体、トリアージが数百人規模の災害の時に有効なんて誰が言っているのでしょうか?少なくとも専門家は言っていませんよ。つまり、素人の戯言な訳です。これが事実といえるでしょうか?
結果的にそう言われても仕方ないですね。
サキヨミという番組では、現場からごくわずかの圏内に「救急」病院が30数カ所あったとして、各病院の場所を地図上にプロットしてましたよ。
東京のど真ん中ですからね。あれは、嘘ではないと思いますよ。
けが人がたった17人なら、何故、片端から各「救急」病院に運ばなかったのか理解できません。
「救急」病院というのは急患に対応できるから「救急」病院なのだと思いますが。
まさか、一刻も早い治療が必要なときに、たっぷり時間をかけて最適な病院を探そうなんて間抜けなことをしていたわけじゃないでしょうね。
救急車は10数台も現場にすぐに来ていたんです。
救急車の台数が問題じゃなく、何故、救急車ですぐにけが人を救急病院に運ばなかったのかというのが論点ですよ。
道路や止まったままの救急車内に長時間けが人を放置していたのは何故かという問題です。
周りの「救急」病院に医者がいなかったのか?
いても忙しくて救急車を断っていたのか?
だったら、各救急病院の医者のタイムスケジュールを検証する必要があるでしょうね。
12:30〜15:00の間どのような仕事をしていたのか?
手術中とかだったらわかりますけど。
あなたのご意見だと、トリアージの問題ではなく、搬送システム(主に受入側マンパワー不足)の問題ではないでしょうか。おっしゃるとおり救急病院の状態の情報も提示せず「そもそもトリアージの必要はなく、順に搬送すればすむ。であるのにトリアージを行い、かつ最初にタグをつける時に間違いを犯しAさんを死なせた可能性がある」というイメージを植え付ける報道姿勢は疑問です。東京都内でさえ救急体制は崩壊中です。ググればどんな状況下にあるのか、なぜそのような状況になっているのか情報の一端はつかめるでしょう。
ところで、一般的な話しとしてですが、トリアージは患者の容態だけではなく、その時に受け入れらる病院・救急搬送能力によっても判断が変わります。受け入れ可能施設の能力・数が限られていれば、搬送・受入病院が充実した環境であれば赤タグを付けるような容態でも黒タグを付けざるを得ない場合があります。そしてそれは経時的に変化するものです。後出しじゃんけんで誤っていたと言うことは簡単です。あとからこのような非難を受けることを承知で現場で一体誰が付けたくて黒タグを付けるでしょう。
「殺した」のは加藤容疑者ですよ。他に誰がいるんですか。
大混乱の中で色々と齟齬かあったのは事実かもしれません。遺族にしてみればそれは無念でしょう。
しかし、現場に駆けつけた救急隊員や医師がベストを尽くそうとしたことは疑いようがありません。
こうやって、大事故や大事件があるたびに、後知恵で当事者たちを非難する風潮が定着すれば、いずれ通りすがりに人助けする人も「後の非難」を恐れて見て見ぬふりをするようになるでしょう。
事実の検証は必要です。問題点があったなら次に発生する事態に備えて改善が必要でしょう。しかし、「殺した」などと故意を伴う言葉を軽々に使って
犯人でもない当事者の責任追及をすることが有益とは思えません。
ブログ主さんは救急隊員や医師たちを殺人罪で告訴すべきとお考えなのでしょうか?