不登校のこどもたちと診察室でお会いしていると,彼(彼女)たちの回復力には本当に驚かされます。
小学生も中学生も高校生も,家庭以外での生活の大半を占めるのは学校生活。
その学校生活が思うように送れない,うまくいかない,となると,かなり毎日しんどいことだろうと思います。
たとえばいじめなど,学校から遠ざかってでも自分の身を守ることを優先しないといけないほど大変な事情がある場合を除けば,基本的には元の学校へ復活することを目標に診療を進めていくことが多いですが(もちろん,こどもさん本人と親御さんの希望がそこにあれば,の話です),初診の頃「どこを治療の目標とするか?」みたいな話をしているときには,本人もご家族も「また通えるようになりたいのは山々だけど,学校に戻れるところなんて今は到底イメージできない」という雰囲気で座っていらっしゃって。
それが,何かの拍子にコロコロと物事がいい方向に進み出すのです。
本当に,何かの拍子に,という感じ。
そして,ひとたび状況が進展し始めると,そのなかでこどもたちは着実に自信を取り戻していって。
日常の何気ないことで自信を取り戻す機会が繰り返されるうちに,なぜか学校のことまでがんばってみようと思えてきて,あれよあれよという間に学校の話題がタブーじゃなくなり,行ってみようかななんて展開になる,…
そんなケースに本当にたくさん出会えるのです。
私の尊敬する精神科医が,「雪だるま効果」なんていうことばを遺してくれています。
ひとたび小さな変化が起きると,雪玉が転がりながらだんだん大きくなっていくように変化は拡大していくものだ,と。
私が診察室でするべきことは,最初の小さな雪玉をそっと坂道に乗せて転がすだけ。
あとは,小石や枝に引っ掛からないように気をつけてあげてさえいれば,どんどん雪玉は大きく育っていくはず。
その雪玉の成長っぷりをこどもさんやご家族と喜びながら,しばらく見守る。
がちゃがちゃ手を出しすぎずに,自然に起こるべくして起こる変化をそっと始めさせるだけ。
よいきっかけさえ与えることができたら,あとは患者さんやご家族が自分たちで回復の方向へ自然に向かっていくもの。
この「雪だるま効果」の教えが私は大好きです。
雪玉を坂道にうまく落とせるように。
雪玉を患者さんたちと楽しみながら見守れるように。
そういう姿勢をこれからも大切にしていきたいな,と思っています。
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