「若い人が集まらない。誰でもできる仕事じゃないし…」。先日、深刻な人手不足にあえぐ介護事業者の悩みを聞いた。知人の大学職員も言う。「うちも介護福祉の受験生が減って困ってるんです」
介護関係の人手不足は今や全国的な傾向で、離職者が相次ぐため、運営を断念する施設も出ている。人材を育てる大学、専門学校は定員割れが続いたり、学科閉鎖の計画を耳にする。
十年近く前に取材したころは予想できなかった。当時は高齢者を社会全体で支え、家族の負担を軽減するという介護保険制度への期待が大きかった。ケア技術の研究も盛んで、千人規模の研修会が若者でいっぱいだった。
本紙「くらし面」でも伝えてきたが、若者離れの理由は、主に重労働と低賃金だ。
人材は条件の良い他業種に流れがち。人手が足りない職場で頑張りすぎ、“燃え尽き症候群”に陥る人が少なくないという。ある施設経営者は、厚生労働省が三年ごとに改定する介護報酬が過去二回引き下げられ、「これでは経営は圧迫される一方」と、悲痛な表情を浮かべていた。
そうはいっても少子高齢化が進めば、需要はさらに高まる。
どの程度の賃金なら人材が確保でき、国や自治体は何を削れば支援が可能か、私たちは保険料増額をどこまで受け入れられるのか。外国人研修生に頼るだけでなく、夢を持てる職場づくりこそが、緊急の課題だと思う。
(文化家庭部・赤井康浩)