「本当の日本の魅力は地方にある」との発言が印象に残った。今月発足した観光庁の本保芳明初代長官が就任記者会見で語った。
観光庁は国土交通省の外局として設置され、政府が目指す「観光立国」の推進役として、観光振興を図り、諸外国との交渉などにも当たる。日本への外国人旅行者を二〇二〇年に現在の二倍以上の二千万人に増やすのが目標だ。
現状では、外国人旅行者の行き先の七割が三大都市圏だという。これに対し本保長官は「地方の割合を四割以上にしたい」などと語り、地方の観光振興を重視する意向を強調した。
観光に地域振興を委ねる地方は多い。観光庁の発足は歓迎すべきとも思えるが、「国内の観光振興はやめていただきたい」と、政府の地方分権改革推進委員会で西尾勝委員長代理がくぎを刺した。
「余計なことをやってまた仕事を増やすだけ」というのだ。観光振興は県や市町村に任せ、観光庁はビザ発給の条件緩和など国しかできない課題に専念すべきだと主張している。
なるほど、これまでも地方の振興のためだとして国が補助金などで自治体への関与を強めてきた。それが、地方の自主性を奪ったなどと問題視され、地方分権が叫ばれている。いつか来た道に戻らずに振興を図るよう、観光庁の仕事ぶりが問われる。