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【社会】

信州大が掘削用“最強ゴム”開発 石油の可採年限が倍に

2008年9月30日 朝刊

石油探査時に使用するパイプと信州大などが開発した高性能のゴムシール材(上)=長野市の信州大工学部(共同)

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 信州大工学部の遠藤守信教授らの研究開発グループは29日、微細な筒状の炭素物質カーボンナノチューブ(CNT)を使い、「世界最強のゴム」の開発に成功したと発表した。石油掘削技術に応用すれば、石油の採掘量を大幅に増やすことが可能になるという。近く国際専門学術誌に掲載する。

 遠藤教授と地元企業、米国の石油調査掘削会社シュルンベルジェ社などのグループが、石油掘削用の金属パイプの接ぎ目を密封するゴムを研究。従来の素材であるフッ素ゴムに、CNTを加えて試験したところ、260度の高温、240メガパスカル(海底2万4000メートルに相当)の圧力に耐えた。

 従来品は175度、140メガパスカル(同1万4000メートル)が限界で、これがより深い掘削をするうえで大きな壁だった。このゴムは地中深くの高温、高圧の過酷な条件での掘削が可能で、油田の埋蔵量のうち採取できる率は現在の35%から70%に上昇することも見込める。残り40年といわれる石油の可採年限も、80年に引き延ばすことができるという。

 関連の特許を20数件申請中で、グループは2年後の商品化を目指している。

 遠藤教授は、CNTがゴム内部に細胞壁のような構造を張り巡らし、強度が飛躍的に高まると説明。「ゴムを強くしながら、柔軟性や弾力性のバランスを保つのが難しかった」と振り返った。

 名古屋大理学研究科・篠原久典教授(物質科学)の話 石油掘削に目を付けたCNTの応用は世界初だろう。極限状態でゴムの耐熱性、耐圧性を高めたのは素晴らしい。いろいろなCNTを試みた結果に興味がある。

 

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