LSI化で70年代半ばにブーム到来

 1972年に登場したOdysseyは、ヒット商品とまでは至らなかったようだ。米国市場で家庭用テレビ・ゲーム機のブームに火がついたのは、1975年末から1976年にかけてのことである。まず、米Atari社が専用LSIの搭載でコスト・ダウンを図った家庭用「Pong」を1975年のクリスマス商戦で発売し、人気となった。その勢いに乗って1976年には参入メーカが相次ぎ、1976年のSummer CES(Comsumer Electronics Show)では20社以上がテレビ・ゲーム機を出品した。 1976年の米国での出荷台数は 300万台以上に達した。

 こうしたブームを支えたのは当時の半導体技術である。現在は動画庄縮技術などで有名な米General Instrument(GI)社が、1975年末にゲーム専用 LSIの外販を始めた。これをきっかけに、米National Semiconductor社や米Texas Instruments社などが次々と専用 LSIを発売した(表1)。当時の専用 LSIは、画像パターンを発生するカウンタ回路や同期信号発生回路などを集積していた。上下に移動する棒状のラケットで、ボールを打ち合うというテニス・ゲームなどの機能を備えていた。半導体メーカがこぞってゲーム専用LSIを開発したのは、電卓や腕持計に続くLSIの大市場になるという期待があったためである。

 こうしたなかで先行メーカのGI社が大きなシェアを得た。1976年末までに同社の専用 LSIを採用するゲーム機メーカは20社以上にのぼり、GI社の LSI供給能力が車場を決めるとまでいわれた(図3)。

 日本でいちはやくゲーム専用LSIを製品化したのは1976年に発売した沖電気工業のようである。1977年には三菱電機やNECが続いた。三菱電機のLSIを採用したのは任天堂、NECはエポック社に供給した。

表1 テレビ・ゲーム専用LSIの製品例(1975年〜1977年)(画像クリックで拡大)

図3 テレビ・ゲームの機能を1チップに収める
 米General Instrument(GI)社のゲーム専用LSI「AY-3-8500-1」を利用したテレビ・ゲーム機のブロック図。写真(a)はこのチップを搭載した米Lloyd's Electronics International社の「TV Sports 812」の外観。外形寸法は幅280mm×奥行き205mm×高さ75mm。日本の電卓メーカであるシステックが製造していた。(b)は「TV Sports 812」本体の内部(画像クリックで拡大)